011 アスリートになりたいんだ。。
駅伝部を作ることになった初日。。
最初の部員になりそうな赤阪くんに…
なぜかみなみが御冠です。。
「ひぃぃ…」
あかん。
赤阪のヤツ…完全に怯えてる。
…大阪でも指折りのガラの悪い地域の鉄板焼き屋の娘。
本気で啖呵を切ったら、生粋の関西人でもビビるやろう。
おとなしい赤阪なら…尚更や。
「…言いすぎやぞみなみ。何が気に入らんねん??」
『すまん。ちょっと…カッとなってもて…。』
「…せやけど赤阪の何が甘えてるって??」
『許せんかったんや…。自分で遅いって認めてるくせに…
自分なりに頑張ってるって言うのが…。』
…赤阪はちょっとだけ落ち着いたようやけど…
なぜ自分が怒られたのかは理解してないみたいや。
とりあえず…まだ小刻みに震えてる…
『赤阪くんやったな…ゴメン。酷いこと言うてしもて…』
「…いや…その…ボク…何か気に障ることを??」
『だってあんたは…頑張れる体があるんやろう。
やのに…自分なりで満足してるんが許せんかったんや。
だってウチは…頑張られへんねんから…』
「えっ…どういうこと??」
…みなみが答えられん様子やったから…
…代わりにワシが答えた。
みなみは…心臓に持病があるんや。
そしてそのせいで…陸上を諦めてるから。。
幼少期に実父を亡くしていたみなみは…
ワシのせいもあって…9歳で母親も亡くし…
義理の父との二人暮らしとなって…
ふさぎ込んだままの生活になってしもうた。。
…けど自分を変えたい気持ちはあったらしく…
中学入学と同時に陸上部に入って…
ワシも誘ってくれて…
みなみ自身も人一倍努力してたのに…
…ある日の練習中に倒れて…
…持病が発覚したんや。。
…走りたくても走れない。
…速くなりたくても努力もできない。。
そんな苛立ちが…爆発したらしい。
「ゴメン…ボクは…知らなかったから…」
『…謝るのはウチの方や。…けどあんたはどうする??
さっきも言うたけど…目標は都大路やで。。』
「やる気はあるけど…できるかな??」
『じゃあ…なんであんたは試合に出たいんや??
できるかでけんかもわからんのに…
何を目指してレースに臨んでるんや??』
「…笑わないで聞いてくれるか…
実はボクは…アスリートになるのが夢なんだ。。」
…アスリートになりたい??
運動部員ではなく市民ランナーでもなく…
競技者として戦える選手になるのが赤阪の望み??
そして赤阪はアスリートになる手段として…
…長距離走を選んだんや。
運動能力も身体能力も低い赤阪にとって…
努力が才能に勝る長距離種目が最善やったらしい。。
…なのに通用せず…腐りかけて…今に至る。。
…なんとも気の毒やけれど…
一部のエリート以外はみんな似たようなもんかも。。
『わかった!ウチが鍛えたる!!』
「えっ??そんなことできるの???」
…みなみがまた無茶を言う。。
コーチの経験もなんもないクセに…
5年も走ってきて20分を切るのが精一杯の男を
どうやって戦えるレベルに引き上げる??
しかもアスリートって…勝算があるのか??
「でも…できるかな??」
『できるかでけんかやない。今度こそ全力でやるんや。
アスリートになりたいんなら甘えてたらアカン!!』
「…そうだけど…」
『ええか…ウチがあんたを都大路で戦える選手にしたる!!
死ぬ気で付いてくる覚悟があるなら入れたるけどな…
今度<自分なりに頑張ってる>なんて甘いことヌカしたら…
南港ニ沈めZ魚の餌にするから…覚悟しぃや!!!』
「ひぃぃ……(;O;)」
あらら…メチャクチャや。。
赤阪のヤツ今夜は悪夢とちゃうか??
まぁけど…やっと入った二人目の部員ってことやけど…
赤阪を戦力に鍛え上げるって…
みなみはどないするつもりなんやろう??
南港に沈める…
普通の関西人は言わないから安心してね。。




