113 佐野泉の戦う理由-2
急旋回した泉の人生。。
どうなるの??
「違和感って…いつ頃???(・.・;)」
『…メグちゃんが中学に上がった頃やから、
ウチが小学三年生くらいかな。。
兄貴らへの憧れ自体は変わらんかったのに…
同じように…なりたないと思い始めた。。』
「…なんで突然??」
『……突然でもないかな。。(-v-;)
多分…もっと前から薄々とは感じてた。
けどウチは姉妹とか女友達がおらなんだから
気付く切欠がなかったんやと思う。。』
「…例えば女装とかママゴトとか??」
『そう。。ウチと同じ立場の人の多くは、
物心つく前にそんな機会があるらしいんや。
けどウチは男兄弟で育ったから。。』
「…自分で試したいと思わんかった??」
『そう思った時にはもう小学三年やったから…
色々と…考えてしまうんよな。。』
「…何を考えたんや???」
『まぁそういう生き方を選んだ場合の
リスクとかデメリットとか…
起きるであろう影響とか迷惑とか。。』
…そりゃ…そうやよな。(・n・;)
これがもう少し幼なければ
将来への影響や周囲の迷惑も考えず、
ありのままに素直にあれるけど…
もし自分の違和感が事実ならば…
普通に生きられないと家族に伝えたら…
まして頭のいい泉なら小三ともなれば
当然ながら周囲を慮れる。。
そりゃ自分の気持ちだけではあかん。
ありのままなんて甘えたことは言えん。
だからどうなったかというと…
『…せめてもの抵抗として…(-ω-)
身体が逞しくなるのを避け始めた。。』
「…筋トレを控えたってこと??
けどラグビーをする以上は体作りは…」
『…けどオトンに…(´・ω・`)
ラグビーをやめたいとは言えん。。』
「…なぜ??違和感はあったんやろ??」
『だって…理由がないから。。
なにせラグビー自体は大好きやったし、
まさか本音は言えんやろう??』
「……やよな。。(._.)」
たしかにどうすればええのか…
ワシには及びもつかん。
正当な理由を以てラグビーをやめる。。
けど泉がその理由を探していた頃…
近しい悩みを持つ男は他にもおったんや。
『…そんな時やったかな。。
中学への進学を控えたノンちゃんが
ウチに相談してきたんや。。』
「…二番目のお兄さんが泉に何を??」
『…ラグビーをやめたいって。
体重が増えて走るのが辛くなったから
中学では相撲に転向したいって。。』
「…それはわかるけど…
なぜそんな大事なことを弟に??」
『…今から思えば…
ノンちゃんは勘付いてたんやないかな。
ウチが悩んでることを薄々とは…』
「…えぇお兄さんやな。(/ω;\)」
『けどまさかその悩みの本質までは。。』
「…やろうな。。(/v・\)」
そういうことで…
希さんが親父さんに申し出て、
相撲に転向することは認められた。
…ただし条件が付いた。(`・ω・´)
男なら一度決めた道は貫くこと。
その頂点を目指すこと。
男が自ら道を選んだのだから、
そこから逃げることは許さないと。。
「…えぇお父さんやな。(・.・;)」
『ああ。…せやからウチも、
自分の道を選ぶことになった。
頂点を目指せる競技を…』
「…競技を選ぶんか??」
『ああ。せやけど条件が多くて…(^^;
男らしくて無差別級で…
筋肉質にはならん競技なんてな。。』
…とは言いながら…
…競技の選択自体は簡単やった。
だって当時の泉は快足ウイング。
細身で小柄で俊足に適性のある競技…
…結果は必然だろう。。
だから小四の時に親父さんに申し出て、
ラグビーをやめて…
地元の陸上クラブに入った。
『…ウチも貫かなあかんかったんや。
男が決めた道やから…
陸上競技で一番になるしかなかった。』
「それで…頑張ったんやな。。」
『ああ。実際に誰よりも練習したし…
小学生の時は負けたことなかった思う。。』
「それで何が不満なんや??」
『だって兄貴らが頂点に立ってしもたから。。
メグちゃんは高一で花園を制したし…
ノンちゃんは中学横綱から角界入りした。』
「……(´゜д゜`)」
泉の兄貴たち…凄すぎ。(´゜n゜)
これに並び立つのは並大抵やない。。
でもだからこそ中学では更に努力して
大阪府の中長距離競技では負け知らずに…
なお中学の中長距離種目というのは、
中一のうちは1500mしかない。
だから中距離向きも長距離向きの選手も
ゴチャ混ぜなんやけど…
『それで中一のうちは大阪の1500mでは
同世代で負けなしやったけどな。。』
「…凄かったんやな。(・_・;)」
『でも中二になると1500mがなくなる。
それで800mでは何とか勝ち続けられたけど
長い距離…3000mでは負けてもうて。。』
「負けたって誰に??」
『…そこにおる…コイツに……(-n-メ)』
「そうなの??(;'∀')
佐野に勝つってそんなご大層なこと??」
…そういうこと。。(-_-;)
大阪で無敵やった泉に初黒星をつけたのは
中学に入学してから陸上を始めて一年。
泉から見れば素人同然の…放出京喬。。
それでも両者はしばらくは互角やった。
だがやがて3000mでは放出が一歩抜け出て…
<白兎>を超えた<黒豹>の異名をとった。。
対して3000mでは放出に勝てないと覚った
泉は得意の800mに特化して…
中距離No.1の北摂の白兎として名を馳せ…
長距離No.1となった泉北の黒豹との
棲み分けを目指してたらしい。
それというのも…
泉はNo.1である必要があったから。。
本音を偽って陸上を選んだ泉には
敗北は許されないから。。
そして…もう一つ。。
急旋回した人生。
それでも残したいアスリートの…
佐野三兄弟の末弟たる爪跡。。
次回で泉の回想録は最後です。
(下書きできました)




