110 能勢豊の戦う理由
雨宿りついでに始まった
駅伝部員たちの身の上話…
次はスプリンター.
能勢豊の番です。
「さて…ボクの話はこんなもんでいい?」
「…ワシはええと思うよ。
では、赤阪への質問のある人ぉ??」
「(一同)シーーン。。」
「おぉい。何とか言ってくれよ!!(=゜ω゜)ノ」
…まぁムリもないか。(-_-メ)
この後で自分の身の上話をする立場の者は、
ここで下手な質問をすると
いずれ自分に返ってくることになる。。
ならばここは…次の能勢に頑張ってもらおう。
…と思ったけど。。
「その…順番を変えてくれない??(^^;」
「なんでや能勢。
赤阪の次はお前って決めたやろ。」
「けど俺の話は…赤阪とかなり被るから。。」
「…。。(-_-メ)」
それは…痛いほどわかる。
関西人は話が下手ではアカンから。
笑いが取れんでオチがないなら恥やから。
だから…ネタが付くのを嫌う。。
せやけど順番は一度みんなで決めたこと。
簡単には変えられない。
というわけで…
「被るぞ!!けど…そこはツッコむなよ!!」
「わかったよ。早く始めてくれ。( `o´)ノ」
「被るぞ!!そこはその…(;0;)」
「わかったから!!(=*´Д`)ノ」
というわけで能勢の話は始まったけど…
いきなり被った。。(=゜ω゜)ノ
能勢の競技人生に影響したのは赤阪と同じ。
お祖父ちゃんらしいから。。
まぁ…あえてツッコまへんけど…
「俺の爺ちゃんは昭和一桁の生まれでな。。」
「…ワシらの世代では普通やない??」
「子供の頃に戦時教育をすりこまれたそうだ。
そのせいかずっと…
滅私奉公こそ信条としてきた人なんだ。」
「それも…普通やない??」
「それで俺はただ一人の男の孫で跡取りだから…
その薫陶をずっと受けてきたんだ。」
「それも…まぁ普通の範囲内と思うけどな。。」
まぁ平成では珍しくなったようやけど…
跡取りは厳しい情操教育を受けるモノ。
家長として自覚を持たされるモノ。
少なくとも一昔前はそれが普通やったし…
そんな家長が我儘勝手を取り締まってたことが
家族と社会の規律に繋がっていたんや。
能勢家は…現代もその家風が残ってるらしい。
そんな環境で育った能勢豊は…
自分のためより周りのため。
家族やチームやもっと大きな集団のため。
あくまで組織の一員としてあるため。。
仲間や組織に貢献することを喜びとする
昔気質の少年に育った。(・c・)
…そのせいか意外とモテるんやけど…
「…そんな祖父ちゃんは家族と一緒に
運動会とかはいつも観に来てくれたけど…
あまり褒めてはくれなかった。。」
「でもスプリンターにとって運動会は…」
「…ああ。いつも一等賞だった。(;'v')
けど祖父ちゃんは俺が個人で勝つことには
あまり喜んでくれなくて。。
リレーとか団体競技にばかり注目してた。
そんな期待に応えたいと…」
「…なるほど。。」
「そんな俺の小学校はスポーツが盛んでな。
スポーツ大会には必ず代表チームを作ってて…
俺はいつも立候補してたんだよ。」
「へぇ。能勢がそんな情熱的やったとはな。。」
「自慢じゃないが俺は学年一の俊足だった…
ガキの頃は足が速いヤツは英雄。
どんな競技でも代表にはなれてたんだ。。」
「…願ってもない環境やないか。
お祖父ちゃん喜んでくれたんやないの??」
「…だけどな。。(;´・v・)」
「…そうやったな。。(;´・ω・)」
…そうなんや。
能勢は俊足ゆえにどんな競技でも期待されて
試合にも使ってもらえるんやけど…
どの球技も笑えるほどに下手クソ。(´・ω・)
足以外は使い物にならん選手やから。。
さらに高学年の頃になると…
能勢が球技で通用しないことは知れ渡る。
同時にリトルリーグとかユースクラブとかが
学校の代表に選ばれるようになった。。
つまり団体競技に向いてない。
能勢は足だけで代表になる道を模索。。
そんな時…
「そんな頃やったかな。
祖父ちゃんが言ってきたんよ。。
走りでチームの勝利を目指せって。」
「…走りで??何がきっかけ??」
「…まぁ俺もあれには感動したからな。。
足が遅いと言われていた日本人が…
日本の代表がメダルを取ったんだから。。」
「なるほど…あれか。。」
たしかに衝撃やった。。
当時子供やったワシらにさえわかった。
トラック種目でメダルを取ったことのなかった
日本人男子が北京五輪で…
個人ではなく団体競技であるリレーで
銅メダルを獲得したんやから。
足が遅いと言われることが当たり前やった
日本人の代表が世界で勝ったから。
さらには二大会後のリオでは銀メダル。。
<足の遅い日本人は…>が
枕詞とされていた日本スポーツ…
その常識が根こそぎひっくり返ったから。。
それで能勢は陸上を始めたらしい。
中学では陸上部に入り100mで結果を残し、
三年時には府大会にまで進んだらしい。
…けど満たされない。(;´・ω・)
だって…公立中学の弱小陸上部。
リレーでは負けてばかり。
マイルリレーには出場さえもできない。
高校では陸上強豪校にとは思ったけど…
府大会進出程度では陸上名門校からの
スカウトには至らない。(-_-;
そして…学業成績もヨロシクない。(*_*;
勧められた公立高は陸上レベルが低い。
けど通える範囲で受かる範囲の私学で
陸上が強いとなると。。(/・ω・)/
「…そういや…強かったんやよな。。」
「ああ。ちょっとした名門。(´・ω・)
400mのトラックを備える実力高だ。。」
「…そうやな。一時は都大路を狙える
力もあったんやった。。(・.・;)」
「…そう。少しは知られた古豪。
天下茶屋のチーム名なら俺が背負うに
相応しいと思ったんだ。。」
「…けど入学当初はリレーメンバーに
選ばれなかったんやよな。。」
「…そうだ。。それで400mに専念して
マイルのメンバーに拘った。。
それで俺の競技人生は満たされた。。
なのに…(´;ω:`)」
「…陸上部が…解散。(;'n')」
「…ああ。もう呪ったよ。。(;v;
俺はきっと団体競技の一員として
戦うことのない運命だって…
競技者として滅私奉公できないって。。
だって俺は陸上しかできないのに…
看板を背負えない競技人生は無意味だ。。」
「…能勢…(/;ω;\)」
「…けど思えばそれを含めて全部が…
運命だったのかもな。(´;v;)
400に転向して少し体力がついたのも…
陸上部が解散して駅伝部ができたのも…
こうして…みんなに出会えたのも。。」
「…(´;ω;`)」
「だから…俺は天下茶屋の襷を繋ぐ。
きっとアスリート能勢豊の…
最初で最後の滅私奉公だから。。」
これが…能勢豊という男。。
インターハイにまで行った自分自身の
個人成績には委細構わず。
あくまでチームの看板のため…
団体への貢献にこそ意義を感じる男。
そんな男が得た仲間・看板…襷。。
能勢はきっとその全身全霊を、
チームに捧げて戦ってくれるやろう。。
ならばワシらは何ができるのか??
共に戦う仲間に…何ができるのか??
余談ですが筆者は陸上経験者です。
北京とリオのリレーには泣きました。
看板を背負って勝つこと…
看板の名前で勝利を収めることは
個人の勝利とは意味が異なる。
それは地域の代表も学校の代表も
変わらない誇りだと私は思います。
あと余談ですが先日はじて
大手町で箱根駅伝を見ました。
青学は強い。( ´ ▽ ` )ノ




