109 赤阪千早の戦う理由
雨宿りついでに始まった
駅伝部員の身の上話。
一番手は副主将、
赤阪千早です。(^^)/
「…では僭越ながらボクからその…」
「よっ。。待ってました!!赤阪副主将!!」
「能勢さぁ…ボクに期待しても何もでないよ。」
「…いいっていいって。
場を温めてくれたらそれで充分だって。」
「それより…質問はないの??」
「(全員)……」
「能勢…そこは頼むよ。。(;O;)ノ」
自分の二番手が確定している能勢…
必要以上に煽ってる。。
けど…ムリもないかもしれん。。
だって関西人は話を振られた時に、
前の人より低レベルのネタを語るは恥。
そんな意識があるから。。
…能勢は二番手。となると…
赤阪にプレッシャーをかけたいのは当然。
なんや…汚い人間模様や。。(-_-メ)
あんまりキックスには見せたくないかも…
また日本が誤解されるかも…
だからとりあえず赤阪は話し始めたけど、
そりゃ色々とあるわけで。。
「きっかけは…西宮の爺ちゃんなんだ。」
「お祖父ちゃん??(・.・;)」
「そう…爺ちゃんはとにかく…
スポーツ観戦が好きな人だったんだ。。
色んな競技の観戦に連れてってくれたけど、
中でも夏の高校野球が多かった。(*'v')」
「それは…西宮の人やから??」
「…なにせ家が甲子園球場の目の前なんだ。。
だから小学生の頃は夏休みに泊まりに行って、
毎日のように連れて行ってもらってた。。」
…そうか。(´・ω・`)
赤阪の趣味がスポーツ観戦というのは
そのあたりに起源があったんや。。
事実…赤阪はいろいろ球場で生で観たらしい。。
…北海道勢の初優勝とか…
…ハンカチくんとマー王子の再試合とか…
…佐嘉北の満塁本塁打とか…
野球少年やったワシには垂涎モノ。。
まぁそれはともかく…
そんな爺ちゃんに連れまわされた赤阪は、
根っからのスポーツ好きになった。。
今でも暇さえあれば競技に関わらず
観戦に出かけとるとか。。
ではそんな赤阪少年に芽生えた感情。。
それは自分が同じ場所に立つこと。
スポーツ選手として表舞台に立つこと。
なんやけど……
「それで少年野球を始めたんだけどさ…
…向いてなくて。。(/ω^\)
結局は一年ももたなかったんだ。。」
「それでどうなった??」
「…他の競技ならと思ってさ…
サッカースクールとかダンス教室とか
色々やったけど中学に入るころになって
遅ればせながら…気づいたんだ。」
「何を??」
「自分には…才能がない。。(´^ω^)」
「(一同)…(´゜д゜`)」
なるほど。でも…
そんな人はたくさんおるんやろうな。。
…では才能のない人はどうする??
競技者になることを諦める。
大きな目標を諦めて健康運動に徹する。
スポーツそのものをやめてしまう。
下手の横好き。(=゜ω゜)ノ
…大体がそんなところだが赤阪は…
中学に進学する年頃になってもなお
そのいずれも選ばなかった。。
「…だから中学では陸上部を選んだ。。」
「選んだ??…なんで??」
「陸上…特に長距離という競技は、
<才能よりも努力が勝る>と聞いたから…
それならボクにも可能性がと思って。。」
「それで…どうなった??」
「いろんな種目に挑んだけどいずれもダメで…
結局はやっぱり長距離走に落ち着いた。。」
「…消去法やったんやな。。」
「最初のころは長距離選手として頑張って…
それなりに結果も出ていたんだよ。
だけどやがてついていけなくなって…
中二の頃から徐々にサボるようになった。」
「…(´・ω・`)」
「…惨めだったよ。。(;^v^)
みんなの迷惑になってるようにさえ感じて…
それで中学限りで辞めるつもりだったんだけど…」
「…ならばなぜ天下茶屋で陸上を??」
「…そんな時に…
爺ちゃんが急に亡くなったんだ。。」
「それで…気持ちが変わったってこと??」
「…うん。爺ちゃんはずっとボクがアスリートに
なるって信じてたから…
それで陸上を続けることにはしたんだけど…」
「…けど???」
「…とはいえ環境は変えたかった。。
だから高校では一から始める方がいいと思って…
知り合いのいない高校を探したんだ。。」
…なるほどね。。(;´・ω・)
けど実はこういう人は多いんやろうな。。
頑張っても選手としては上手くいかず、
燻って悶々としてる運動部員って。。
…そしてこの後のことはワシも知ってる。
天下茶屋高校でも長距離を始めたけど、
その陸上部の中でもやっぱり遅れをとって…
二年になればと思っていたらその年には
後輩も入ってこなくて…
試合にもほとんど出られなくて。。
それでも陸上部を辞めることだけは
心苦しかったらしい。
それでマネージャー同然に。。
そんな赤阪が陸上部がなくなることを
五月ごろに知った時は哀しみよりむしろ
…ホッとしていたらしいんや。。
ではそんな赤阪にとっての心残りは…
「…そんなボクに…
天保山が救いの声をかけてくれたんだ。。」
「いや。。ワシはそんな大層な…」
「…ずっと出たかったんだ。。
だって…長距離選手の憧れだから。。」
「……(´・ω・`)」
「…諦めていた駅伝を走れるかもと思ったら…
…居ても立ってもいられなくなって…
…無理を言って入れてもらったんだよ。。」
「…そんなわけでは…(´・ω・`)」
「それで爺ちゃんの墓参りに行ったんだ。。
…ボクはまだ頑張るって。。
だから今度こそやるべきとことは全てやる…
その気持ちだけは…果たすって。。」
「…(´・ω・`)」
「でも今度こそボクは…頑張れてるのかな??
やるべきこと…全部できてるかな??」
「……(´:ω;`)ゞ」
みんな…あえて無言で応えたみたい。。
だって赤阪の努力は全員が認めてるから。。
口に出したら安っぽくなるくらい…
やるべきこと…いや、それ以上をこなす
真摯な男というのは明らかやから。。
…ただ問題は赤阪自身が…
そんな自分を認められていないこと。。
この五年で失った自信と自尊心…
それを取り戻すことはまだできていない。
赤阪にとってアスリートたること。
そのプライド…手に入るんやろうか??
ちなみに余談ですが作者は高校野球が好きです。
甲子園では軽く百試合以上は見ています。。
マニア垂涎の名シーンはあまり目にしてませんが、
マニアは分かる印象深いシーンはそれなりに…
('◇')ゞ
ちなみに私にとって一番印象的だったのは
'98年の豊田大谷vs宇部商かな。。
サヨナラの結末はたくさん見ましたが、
最後の瞬間が「おぉ」でも「ワー」でもなく、
「あっ…」(/;ω;\)
だったのはこの試合だけ。
サヨナラボークの瞬間は未だに覚えています。




