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ベルッセンの鬼(仮)  作者: あかいひと
プロローグ
4/33

本家へ

月のない夜に、ラドヴィラ家一行の馬車はベルッセンの中心部へ向かっていた。

3台ある馬車の中の一番しっかりとしたつくりの馬車の中に俺は白目をむきながら口を半開きにして座っていた。


(あ゛あ゛あ゛あ゛…きつかった。しぬほどきつかった)


俺はパパンの前にもかかわらず、取り繕う余裕すらなかった。


(やっとアリダから解放されたよ。ママン)


うつろな目で、真っ白になっている俺にパパンは何も言わずにそっとしておいてくれた。

というより、初めて会った日に連れていた若い女性を隣に座らせていちゃいちゃしている。

だけど、俺にはそれを突っ込む余裕も気力もまったくなかった。

結局、彼女について聞けたのは馬車で移動の2日目のことであった。









「お父様。少しよろしいでしょうか?」


さすがに2日目になると精神力的なものも回復してきて、にゃんにゃんしているパパンに我慢できなくなってきていた。


「どうした?」


俺に話しかけられると、パパンは居住まいをただす。この切り替えの早さはすごいと思う。


「その、隣にいる女性についてですが」

「ああ、リーティスのことか。そういえばまだちゃんと紹介してなかったな。2年前に使徒になった子だ。よろしくしてやってくれ」

「リーティス・シナスです。ルーベンス様に拾っていただいた上に使徒にしていただきました。ロアン様、どうぞよろしくお願いします」


(んー2年前か…まぁアリダの話だと以前のロアン君はほとんど自閉症の子供よろしく3年くらい誰ともろくに話をしてなかったって言うしなぁ。パパンは紹介できなかったのだろうな…それより使徒ってなんだ?吸血鬼伝説だと、血を吸われたことによって生まれた吸血鬼は、吸血者に忠誠を誓って使徒になるとかなんとかって話はあったけど)


「こちらこそよろしくお願いします、リーティスさん。あと、『使徒』について詳しく知りたいのですがいいですか?」


聞く方が早いだろうと思って、聞いてみた。常識的に知っているものかもしれないけど、そうだったときはそうで。


「そうだな、ロアンもそろそろ知っておいてもいいだろう。『使徒』は血の契約をもってなる。」


こういう時のパパンは、やたらと雰囲気がある。

イケメンだけど、軽薄な雰囲気は皆無で、男の渋さがにじみ出ている。


「使徒との契約の方法だが、簡単に言ってしまえば血液を交換することだ。私とリーティスの場合、私がまずリーティスの血を吸い、そのあとでリーティスに私の血を吸わせた。これにより血の契約はなる。」

「意外と、あっさりとした契約なのですね」


初めて、パパンとちゃんとした会話をしている気がする。

あってから1週間近くたって初めてって…きっ嫌われているわけじゃないんだかんね!アリダがいうにはだけど!


「そう、だが契約自体がそれで終わりというわけではない。定期的に使徒には体液を与えなければならない。よって、契約は死ぬまで続く。体液をもらえない使徒は、次第に自我が崩壊し死食鬼(グール )といわれるものになる」


そういうと一息ついたパパンは少し表情を厳しくして続けた。


「己の使徒が、死食鬼(グール)となるのは鬼族の恥と知りなさい。そして、使徒を作るのならば、使徒を常に手元においておく義務がある。使徒の行いの責任はすべて主である鬼族にある、たとえグールとなってもだ。代わりに彼らは我々のよき手足となって動いてくれるのだ。」

「はい、お父様」


パパンの気迫に気おされて、素直な返事になる。そこには、アドヴィラ家の家長として一家をまとめる鬼の本当の姿があった。


「それで、グールとなったものは、どうなるのですか?」

「グールか。グールはな、常に主に飢え探している。だが彼らは、自我が崩壊し認識能力がなくなっているため主などみつけられない。そのために、誰彼かまわず血をすすってまわるのだ。われらが『吸血鬼』などと呼ばれる訳がここにあるのだな。」


パパンは、自嘲的につぶやくとふっと遠い目をする。


(やっばい。なんか超かっこいい。いまなら抱かれてもいい気がしてくるわー。俺はのんけだけどな!なんかリーティスさんも隣でぽわーってなっているけど、超きもちわかるわー)


「そうすると逆を言えば、使徒は主を裏切れないということですか」

「そうだ。強制力はないが、その関係は隷属にちかい」


(えー、いやいや。体液をもらわないと、自我がなくなるっていう時点でほぼ強制じゃないか)


不満そうな俺の表情をみて、パパンはふっとわらってつづけた。


「そういう顔をするな。昔、主をとらえて地下に監禁し、生かさず殺さずで血液タンクとして生きていた使徒の話があったくらいだ。抜け道はある。たとえ主従の関係であろうと、そこに相手を敬う気持ちがなければ関係は長続きしない。強制された関係を一生続けるなど不可能だ」


パパンの話に難しい顔をしているとリーディアさんがフォローを入れてくれた。


「大丈夫ですよ、ロアン様。使徒になるものは、主である鬼族と同じように寿命というものがなくなり、身体能力も鬼族並みに強化されます。割と多くのものが、使徒になりたがっていますよ。ルーベン様のような立派な方は特に人気で使徒になりたがるものは後を絶ちません。」

「そういうのはよさないか」


 パパンは少し顔を赤らめて、リーディアさんにいう。そのまま二人はまた、いちゃいちゃしはじめる。あきれた俺は、ため息ひとつとともに窓の外に目線を投げた。


(やっぱりこのおっさん爆発しねっかなー)








馬車の旅は2日目が終わりそうになる頃、朝日が顔を出すころに本家についた。

鬼族は日光が苦手なので、この旅では夜間に移動している。

本家は、ラドヴィラ家の館より倍くらいの規模なうえに、館の前には広大な庭が広がっていた。


(す…これはすごい。ラドヴィラの家も相当だったけど、本家はすごすぎる。どこの宮殿だよって感じだな)


庭の前には一人の男性がたっていた。

燕尾服をきっちりと着込み、背筋をぴんと伸ばした姿は見るからに執事という人だった。


「おまちしておりました、ルーベン様、ロアン様。ロアン様につかれましては、このたび三立の儀、誠におめでとうございます。わたくしが、この家の家令であるウィリアムと申します」

「ラドヴィラ家のルーベンだ。これから4日ほど世話になる。よろしく頼む」


俺は、挨拶をパパンに任せて隣で神妙な顔をしていた。


「それでは、どうぞ中へ。中でツェザーリ様がお待ちです」


ウィリアムは、俺たちについてきたラドヴィラの使用人に指示を出してから、俺たちを中に案内してくれた。

うんざりするほど広い庭を抜けて屋敷に入ると、そこには豪華絢爛という言葉がぴったりなくらい派手に飾り付けられていた。


(うわー。ちょっとこういうの受け付けないわ。ラドヴィラ家の品のあるほうがいいな)


俺が若干引いていると、玄関ホール抜けて応接間に案内された。

応接間には、一目で親子とわかる三人組がいた。

なぜなら、全員銀髪金眼だったうえに、よく似ていたからだ。

30に手が届くかどうかといった感じの青年の隣に、7~8歳程度の女の子がおり、女の子にしがみつくように5歳程度の男の子が不安そうな顔で立っていた。


「ツェザーリ様。ラドヴィラ卿をお連れしました」


ウィリアムは簡単に報告するとツェザーリの後ろにさっさと控えて立っている。これいじょうはなにもいうきは内容だ。


「お久しぶりです、ツェザーリ様。こちらが、わが息子のロアンダールになります」

「ご紹介に上がりました。ロアンダールと申します。このたびは三立の儀における終の儀式のための場所をおかしいただき誠にありがとうございます。」


俺は、アリダの特別礼儀作法強化コースのおかげで完璧に挨拶することができる。

でもなんかむなしい、ちくしょう。


「ほう。話に聞いていたと、ずいぶん違うな。元気そうだな、ロアン君。よかったな、ルーベン卿」


ツェザーリさんは、短い銀髪を撫でつけており、切れ目で冷たい印象の顔は中性的な感じであった。女装していたら男と気づかないだろう。


「ええ、三立の儀を受けるにあたって、鬼族としての自覚も出てきたことでしょう」


(なんだろうねこの二人、笑顔なのにどっちも目が笑ってない…こわいわ!)


イケメンのタヌキおやじが二人、腹の内を見せ合わずに世間話をしていると、女の子にしがみついた男の子が何かを言いたそうにもじもじしていた。


(な…なにこの子たち、ちょうかわいい。これが萌えってやつか…)


俺は、男の子に萌えながら声は出さずに口だけで『なに?』ときいてみた。


「あ…あの…」


男の子は顔を真っ赤にして女の子の後ろに隠れてしまった。女の子は少し困り顔で微笑んでいた。


(やっばい、超面白いこの子。いいわー、うちの弟なんてただの憎たらしい餓鬼だったのにな)


そう、地球での3つ下の弟のことが思い出される。

まったく、兄を兄と思わない性格で、俺のことも慶一とよびすてにしていた弟。

両親に甘やかされて育ち、結果として意気地(いくじ)がない。


「おっと、そういえばうちの娘と息子の紹介がまだだったな。こちらが3女のエマ、そして後ろにいるのが4男のヴラドだ」


ツェザーリさんが俺たちに気づいたように、二人を紹介してくれた。ざっと計算すると最低でも7人姉弟らしい。


エマと呼ばれた子は、腰まである豊かな銀髪を何も縛らず遊ばせており、父親とは違って大きなぱっちりとした意志の強そうな目はきれいというよりかわいらしいという印象だった。

おかっぱの男の子は、もうワンコのようなかわいさだ。


「よろしくね、エマちゃん。ヴラドくん」


俺は目線を二人に合わせて挨拶をする。


「よ、よろしくお願いします。ロアンさん」

「あ…あの、よ…よろしく…」


少しぎこちなく挨拶してくれる姉に対して、顔真っ赤で挨拶する弟君に俺はツボにはまってしょうがなかった。撫で繰り回したい。わしゃわしゃしたい。

そんな俺たちに、親たちは何か微笑ましいものをみているように顔をほころばせた。

挨拶をしていると、ドアが控えめにノックされて、使用人がはいってきた。


「旦那様、お食事の用意が整いました」


外は日もあけて、食事にはちょうどいい時間であった。


「そうか、なら続きは食堂に移ってからにしよう。三立の儀は明日だ、ロアン君には、今日はゆっくりと休んで明日に備えてもらいたい」


なれないもので、説明ばっかで話が進みません。ぐだぐだですが、付き合ってもらえるとありがたいです。※あらすじを少し書き換えました

エマ・ヴラドの年齢調整をしました。13→8歳 10→5歳

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