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ベルッセンの鬼(仮)  作者: あかいひと
見習い騎士編
17/33

持ち物検査

学校に麻雀牌を持って行って怒られた記憶がある

 翌朝、案の定持ち物検査があった。新入団員はすべて寮の廊下に並べられ、教官たちが俺たちの部屋を物色している。昨日のうちに、引っかかりそうなものはすべて処分したから問題ないはずだがやはりこういうのは緊張する。

 隣の部屋から教官たちが出てきた。手には何か持っている。いや、隣だけではなくほとんどの部屋から教官たちが出てきていた。なぜか、俺たちの部屋はいまだにひっくり返されている。

(もう、やめたげてよお)

 と、ほかの部屋の住人には、持ち込んだ不要物を並べられ教官直々による説教が始まっていた。

(おい、ロアン。あれ、薄い本じゃないか?)

 カティが小声で話してくる。こんな状況だっているのに図太い奴だ。

(あっちは、ログホールのワインだな。いいものを持っている)

 なぜか、ヘルマンまで興味津々だ。一人ビビっているのがバカらしくなってきた。

(そうだな…なぜ、ネズミ取りまで持ち込まなければいけない理由がわからんが、というかペットまで持ち込んでいるやつがいるのか)

(うわ、携帯食料もダメ?厳しすぎない?)

(しかし、お客様期間は昨日だけだったみたいだな。ぎりぎりだったな、カティ。)

(へいへい。ありがとうございました。くそう、俺の相棒(ソウルメイト)が…)

(まぁ、それなりに働き出せれば、私物持ち込みも多少は許されるだろ。まだ俺たちは騎士見習いにすぎないからな)

―ガチャリ

 とうとう、後ろから俺たちの部屋の担当の教官がでてきた。教官が手ぶらなことに俺はほっとする。

「貴様ら、この状況でおしゃべりとはいい身分だな。さすがに、入団試験クリア様は格が違いますねえ」

 教官は並んだ俺たちを厭味ったらしく眺めていう。さっきロイター教官だと名乗っていた気がする。

(小物臭全開だな。臭い臭い。)

(なあ、ロアン。この人臭すぎ)

カティが俺の袖をクイクイ引っ張って小声で言ってくる。気持ちはわかるけど今はやめろ!

(憶測に過ぎないが、俺たちの部屋に私物がなかったために八つ当たりで嫌味を言っているのだろう)

ヘルマンさん…冷静に分析しないでください。

「おい、てめえら!余裕だな!俺のことなめてんのか!」

 ロイター教官は高圧的な態度で威圧してくる。

「なめてませーん…がふぉ」「はっ、そのようなことはありません。サー」「我々は、教官を尊敬しているであります」

 いきなり挑発しだしたカティを俺とヘルマンが必死で取り押さえて、俺とヘルマンで取り繕う。

ふんっと俺たちを苦々しげにみたが、なにもされなかった。さすがに部屋から何も出なかった以上あまり表だって制裁を加えられないのだろう。

「まあいい。さっさと配給された服に着替えて食堂に行け」

 そういって、出て行ってしまった。残された俺たちは、ふう…っと気が抜けてしまったが、部屋に戻ってカティの説教タイムが始まったのは言うまでもない。



 俺たちは、配給された服(一般的に神父が着るようなカソック)を着て食堂に向かった。さすがに、食堂はにぎわっていたが、俺たち以外に新入団員の姿は見えなかった。近くの人に食堂の使い方を聞くと、少し驚いた顔をしたが丁寧に教えてくれた。

 さすがに騎士団といわれるだけあって、出る食事は、質はどうかとしても量はかなりのものだった。食堂の隅の机に腰かけて、ほかの新入団員が来るのを待ちながらのんびりと食事をとった。だが、結局食事の時間が終わるまでほかの新入団員の姿を見ることはなかった。

 俺たちが、ほかの新入団員に会えたのは、結局集合場所についてからだった。全員ぼろぼろになりながら肩で息をしている。それを見て、事情を察した俺とヘルマンはあまり目立たないように隅に移動しようとした。

が、そんなことを許してくれるようなカティではなかった。へたばっている連中からモカたち一行を見つけると近寄って行って声をかける。

「お前らなにやってるの?飯の時間終わっちゃってるぜ?」

 止める暇もなかった。むしろ、この状況でこんなこと聞くとは想像もつかなかった。明らかに、今朝の一軒で食事抜きと罰という名のしごきを受けたであろう人たちに対して、腹いっぱいの俺たちが言ったのだ。これ以上ない挑発でしかない。

「も、申し訳ない。こいつも悪意があって行ったわけじゃない。だが、気分を悪くしたと思う。ちゃんと言って聞かせる。この通りだ」

 真っ青になった俺とヘルマンが飛び出して行って、俺がカティの首根っこをつかんで引き寄せるとヘルマンがみんなにそう言って謝った。とりあえず、カティをへばっている集団から離して、みんなの代わりに見た目は痛そうに一発殴っておいた。

「なんだよ、いてーな。俺がなんか悪いことしたのかよ。あいつらが飯食ってなさそうだから心配して教えてやっただけじゃないか」

 ほんとに痛そうにしている。これが演技なら大したものなのだが、多分素でやっているのだろう。ちょっとイラッとしたので、もう一発はたいておいた。これは俺の分だ!

「おい、俺が今朝言ったよな。ちゃんと言動には責任を持てって、無駄にいさかいを起こすような言動は慎めといったよな」

 声のトーンを落として、説教モードに入った。

「い…いったけどさ…おれは、あいつらのことを心配して…」

「何も心配してはいけないとは言っていない。だがな、言っていい時と悪い時がある…」

 俺の説教は、教官が来るまで続いた。



「おい、てめーら。いつまでへたばってんだ!根性ねえ奴は帰ってママのおっぱいでもすすってろ!この玉無しどもが」

 現れたのはロイター教官だった。その罵声に、へたばっていた新入団員はのろのろと起き上って整列する。

「あ、文官の方々はこちらへ。武官かたはロイター教官の方へお願いします」

 そこへ、ふっともう一人の男が現れた。いくらロイター教官の小物臭がきつかったとしても、全くその存在に気付かなかったのは驚きだ。

「ああ、自己紹介が遅れました。わたくしは、新入団員の文官教育を担当しますアベルと申します。そろったようですね。それではこちらへ」

 アベル教官が言っていたのは、騎士団の中では戦いを専門とするものを武官、後方支援を専門とするものを文官というこの分類のことだ。筆記試験で好成績を残したものが文官として採用され、実技試験で好成績を残したものを武官として採用する傾向がある。俺・カティ・ヘルマン・モカ・オルガの5人は武官でレイラだけが文官である。今年の入団比率で言っても40人が武官で10人が文官らしい。アベル教官は数少ない文官を集めてさっさと行ってしまった。

「貴様ら!いつまでちんたらしている!アベル教官が行っちまったじゃないか!文官に負けるほど低能ならやめちまえ!」

(う~ん。これは…新入団員の意識を引き締めるためにわざと厳しくやっているのだよね?きっとそうだと信じたい…)

 俺たち3人は、ロイター教官の罵声を聞きながら、へばっている仲間を助け起こして整列させた。なんとか、全員整列しロイター教官の号令を待っているのだが、なぜか教官は俺たち三人のところにやってきた。

「お前ら、荷物検査をパスしたからっていい気になってるんじゃねえぞ。俺が、お前ら見習いの指導教官になったんだみっちりしごいてやるからな」

 それだけ言って去って行った。

(やだ…私の教官のしょぼすぎ…)

(なんだそれ。なんで、女口調なんだよ)

(いやただ言ってみたかっただけだわ)

(確かに、ロアンの口調は置いておくとしてもあの教官には威厳というものを持ってほしいものだ)

(もうやめて、俺が悪かったから)

「おまえら!いつまでくっちゃべってるんだ行くぞ!」

 


 俺たちが連れて行かれたのは、入団試験で走らされた運動場だった。先日はなかった簡易闘技場が作られており、そこには、数人のカソックを着た神父がまっていた。カソックと一言で言っても改造してあるらしく、本当に礼拝などできているようなカソックを着ている人もいるが、まるで鎧のようなカソックを着ている人もいた。

「お前らー、今から1課のエリートさんたちが模擬演習を見せてくれるっていうから黙ってみていろ。」

 ロイター教官が投げやりな感じで指示する。教官の指示に反応して、それぞれ観戦しやすい位置にばらけていく。

「あれって、1課のエドガーとアルフレッドじゃないですか?」

 オルガが、闘技場中央で向かい合う二人を指さして言う。二人ともカソックを身にまとっており、手にはショートソードほどの長さの木剣をを持っている。

「ん?知り合い?」

「ロアン知らねーの?あの金髪の方が『疾風のエドガー』で、もう一人の茶髪が『断罪のアルフレッド』っていんだ。かっこいいよなーふたつ名って」

「いや…月並みで悪いけど、それ黒歴史ってやつだから。俺だったらそんな名前断固拒否するから!」

「え~いいじゃん。かっこいいって、ヘルマンもそう思うだろ?」

「いや、俺もこれは恥ずかしい」

 どうやらヘルマンもちゃんとしたセンスの持ち主らしい。カティのことは最初からあきらめていたからいいが、ヘルマンがまともで本当に良かったと思う。

「カティの美的センスは壊滅的だからね。一言でいうとダサすぎってやつ」

(モカさん相変わらず容赦ないっすね。ぱねえっす)

 俺たちが無駄話をできていたのもこの時までだった。すぐに、模擬戦が始まり、俺たちだけではなく周りからの一切の会話が途切れた。

 その戦闘は、俺の予想を完全に上回る形で展開されていた。



 二人は向かい合って一礼をすると、すぐに戦闘態勢をとった。遠目に見ても感じるピリピリする感覚。模擬戦とはいえ、木剣を使う以外は本気でやっているようだ。

 ブラリッとエドガーの体がぶれたと思ったら二人の距離が詰まっていた。エドガーは突進の勢いを殺さずにアルフレッドの左胸を狙って平突きを繰り出す。

 アルフレッドはよけるでもなく防ぐでもなく、無手の方で繰り出される木剣の腹をはじいた(・・・・)。はじかれたことにより出来た隙を逃すことなく、袈裟懸けに木剣をふるう。

 エドガーも木剣をはじかれた反動を利用し、体制を変えると袈裟懸けに襲ってくる木剣を受けることもよけることもせずに踏み込んだ。そのまま、左肩を前に体当たりをぶつける。

 己の木剣よりもエドガーの『体当たり』の方が早いと気づいたアルフレッドは、無理に木剣をふるうことはせず『体当たり』を受け流すように右へ1回転し、互いに背中合わせになるようによけた。

 すべて一瞬の攻防だった。よく見なければ、立ち位置が変わっただけにしか見えない。



「ふぉーい。すっげぇ、みた!?みた!?木剣の腹を素手でぱーんてぱーん!」

「な…なんだ、あれ…神殿騎士団(ここ)だと、攻撃をよけちゃいけないって規定でもあるのか?やばくね…」

「化け物だな…」

はしゃぐカティに呆然とする俺とヘルマンだった。ほかの人たちは目で追えなかったらしく何が起こったかわからず疑問符をだしていた。ただ、ニヤニヤしているロイター教官にイラッとするが。

「これどっちが優勢?」

「どちらも、甲乙つけ難いな」

 俺たちが、勝敗予測をしているとカティが怪訝な顔をしてみてくる。

「なにいってるんだ?どう見てもアルフレッドさんの勝ちだろ?エドガーさんの木剣折れてるし」

「えっ?あれ?いつ?」

 言われてやっと気づく。たしかにエドガーの持つ木剣は中腹から斜めに折れていた。

「最初にアルフレッドさんが、木剣をはじいたとき。エドガーさんもおられないように大げさに剣をはじかれてたみたいだけど、無駄だったみたいだねー」

「全部見えたのか?目がいいな」

「え?別に?これくらい普通じゃね?」

 エドガーとアルフレッドの動きは日中であろうと、飛んでくる矢を指でつかめるほどの動体視力を持つ俺ですら目で追うのでやっとだった。新入団員の中で今の戦いがあったとわかっただけでも何人いただろうか。

(カティは半端なく目がいい。もしかしたら、一番化けるのはカティかもしれないな…)


戦闘シーンがうまくかけない病です

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