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ベルッセンの鬼(仮)  作者: あかいひと
見習い騎士編
13/33

面倒事 その1

正直このくだりはいらなかった気がします。下にあらすじを書いておきます

 ラドヴィラへの帰省からだいたい1ヶ月、俺は再び聖パルティア皇国へ舞い戻ってきた。エマとヴラドのことは少し心配だったが、近くにサラさんがいるなら大丈夫だろう。パパンも気にしていてくれているようだし。

 皇都のウルさんの家について、ただいまっと挨拶すると奥からドタドタっと足音と共に男二人に歓迎された。

(なんだろう、このエルフェミアとの違いは…がっかりすぎる。戻ってきてほんとに良かったのか?これ…)

「ロアン!やっと帰ってきてくれたか!相談があるんだ。頼むよ。助けてくれよお」

「ロアンさん、いいところに帰ってきてくださいました。実は折り入って相談があります。ええい、カティは大した用じゃないだろうからちょっと後にしなさい」

いきなり親子げんかしだす、二人に若干頭痛がする。頭を押さえながら言った。

「あー、わかったからとりあえず落ち着いて。順番に話を聞くから、荷物だけでもおろさせてくれ」

 俺の願いは聞き入れられ、旅の格好からラフな格好になって今に行くと、二人が今か今かと待ち構えていた。お茶を出してくれたカティのお母さんにお土産をわたしながらお礼を言ってから話を聞いた。

「それでは、まずウルさんの方から話を伺います」

「おい、ロアン。俺の方はどうでもいいっていうのかよ!そんなのないぞ」

 明らかにテンパっている顔のカティは顔を青くさせて突っかかってくる

「ふむ。カティの用が10分程度で終わるようなら先に聞くが、その場合10分で切り上げるぞ?いやなら後でじっくり聞くけど?」

ウルさんが、何かを言おうと口を開くがその前にいうと、カティは悔しそうに『わかった』と押し黙った。

「それで、ウルさん何かまずいことでも起こりましたか?あの薬のほうで不都合がありましたか?」

ウルさんの用件を優先したのは、今クルール商会に何かあると困るのはウルさんたちだけではないという事情だった。せっかく、都合よく後ろ盾兼諜報機関が手に入るのにここでなくすわけにはいかない。

「いえ、そういうわけではなく。薬の販売もいたって順調です。皇帝陛下につかれましても、神薬と高い評価をくださいまして。この度、めでたく宮廷御用達の商会となることができました。本当にロアンさんには感謝しております。」

 ここで、いったん区切るとウルさんはお茶に手を出した。特に今のところ問題なさそうで、ウルさんが何をこんなに焦っているのかわからない。

「それがですね。クルール商会が締め出しを食らいまして…」

「し…しめだしい?」

あまりのことに素っ頓狂な声を出してしまった。

「そうです。実は、皇都にある商会が集まって資金を出し合い、大規模工業化を行おうという計画があったのです。あ、工業化というのはですね…」

「いや、わかります。説明は結構です。続きをどうぞ」

 話をまとめると、ウルさんたちは資金を出し合い一大プロジェクトとして、都市の工業を一手に発展させようとしていたらしい。プロジェクト自体は順調で、一昨日も会合があり、ウルさんの長男が出席しようとしたとろ、会議場で満場一致でクルール商会には仕事を回さないということで決まったとの話だ。

「なんていうか、乱暴ですね」

「ええ、うちに対して完全にケンカを売っています。不義理とののしられるようなことをしていますが、向こうは皇都のほとんどの商会が参加していますからそう簡単には手を出せません」

「赤信号 みんなでわたれば こわくないってやつですね」

「は?赤信号ですか?」

「いえいえ、こちらの話です。まぁ、数の暴力っていうものですね」

「はい、ですから現状すぐに打てる手はありません。今回の件を画策した商会までわかっているというのに」

ウルさんはすごく悔しそうだ。俺の頼んでおいた情報収集というのをちゃんとやっておいてくれているのだろう。すぐに、敵の首謀者がわかったという。まぁ事がなる前に気づけなければ意味はないのだけど。

「現状では手が出ないのは分かりました。それで、いったい何のご相談なのですか?」

「現状で打てる手はすべて打ちました。しかし、決め手に欠けるのです。これからは、工業の時代です。このままではずるずるとあいつらの手に利益が転がっていき、私どもに未来はありません。なにか…なにかございませんか?」

 再び、俺は頭痛とめまいに襲われた。

「こういうことを言うのもなんですが、僕は便利屋ではありませんよ?ましては、商人ですらありません。大商会の長であるウルさんがやるべきことをすべてやったというのならば、僕にできることはありません」

「そこをなんとか。お願いします。現状を打破できるのは常識に凝り固まった我々では無理です。簡単なアイディアだけでもいいのです」

 すがりつくようなウルさんを相手に俺は考え込む。現状では情報が足りなさすぎて何もできない。クルール商会は、この地で活動するための拠点だ。このまま見捨てるわけにもいかない。

「わかりました。一緒に考えてみましょう。ですが、もう少し詳しいことがわからない分には、どうしようもありません」

「おおお。では、さっそく商会の方で資料を交えて説明します。きてもらえますか?」

 地獄に仏を見たような顔で、ウルさんが見上げてくる。

「いきましょう。ぐずぐずしている暇はなさそうです。カティ悪いけどカティの件は、帰ってきてからでいい?」

「わかった。まってる」

カティもあほの子だが頭が悪いわけではない。さっきの話を横で聞いていて、自分の実家の危機的状況を理解したのだろう。おとなしくしたがってくれた。



 ウルさんの商会について、資料に目を通しながら現状の説明を受けていく中でいくつかのアイディアが浮かんできた。今のクルール商会の置かれている立場を説明するとこんな感じだ。

 皇都における工業―綿織物から始まり街灯などやマッチに至るまで―敵対する商会に抑えられクルール商会は事実上、皇都における産業に関わることさえ不可能になっていた。残されたものは、食糧の売買や原料を売るしかない。今後、産業が莫大な利益を生むことに対して、食糧の売買は変動がない。また、原料の売りといっても彼らの独占状態では買いたたかれるのが落ちだ。もはや皇都における、商売の未来は閉ざされたといってもいい。

 現状を再確認して、ウルさんは青くなっている。隣にいる、ウルさんの長男のストックさんもこの宣告を受けた本人だけあって、恥辱に顔をゆがめている。

「なんだ、たいしたことないじゃないか。ウルさんが青くなっているから相当だと思いましたよ」

 二人が目をむくのがわかる。

「なにをいっている!皇都の産業が奴らに独占されたんだぞ!この状況をわかっているのか!」

 ストックさんが顔を真っ赤にして叫ぶ。だけど、その隣でウルさんがほっと胸をなでおろしている。

(ストックさんの反応は普通だとしても、なんでこんなにウルさんの信頼度MAXなのだ?いつの間にウルさんルートを…やめよう。吐き気がしてきた)

「ええ、わかっています。ほしいというならこの程度上げてしまえばいいのですよ」

「ね…寝言は寝ていえ!皇都を手放すということの意味を分かっているのか!花の皇都だぞ!ここは聖パルティア皇国の市場の4割がここにあるのだぞ!」

「落ち着いてください。もっと大きな視野を持ってください。この国の市場の4割がこの皇都にあるとしても、世界市場に比べれば取るに足りません」

「世界・・・市場?」

ウルさんが呆けた顔でいう。ストックさんにいたっては、何を言われたか理解が追い付かず気合が空回りした感じだ。

「そうです。ウルさん、クルール商会の強みはなんですか?」

「えっあ、皇帝御用達の商人になったことですか?」

「違います。そんなものは、今だけのものです。発展性はありません」

 聞く人が聞いたら不敬罪にでもされそうなことをさらっという。それを聞いて、ストックさんは顔が青くなる。ウルさんは俺への信頼度MAXなので表情さえ変わらない。

「では…鉄道ですか?それともあの薬でしょうか?」

「両方です。あの薬は、医学分野に発展する足掛かりとなります。そして、鉄道は、重工業や輸送業へと発展します。どちらかといえば、地に足がついている鉄道の方が大事ですね。今回の件も、この二つを占有しているうえに皇帝御用達の商会となったクルール商会に恐怖したためにおきたことなのでしょう。ならば、その恐怖が正しかったということを百年単位で思い知らせてあげましょう」

 皇都の商会に対して、にっこりと黒い笑みを浮かべた。



 その後、ウルさんたちと話し合い。いろいろ取り決めをした。

一つ、皇都における市場を一時あきらめること

一つ、皇都ではできないような重工業を行う都市を国主導で建設させること

一つ、工業化に伴い、過疎が見込まれるであろう農畜産業に介入し救済と大規模化を行い、利益と共に国へ恩を売ること

一つ、国と共に鉄道網の整備を引き受けること

一つ、他国への進出

「つまりは、国に金を出させて商会は技術を提供して利益を求めるということですね」

「おおむね、そういうことです。鉄道網の整備は、現在の物流における主要となっている行商人の減少に拍車をかけられるでしょう。これができれば、近い将来、皇都における商会の首根っこをつかめるでしょうし」

「ですが、鉄道はもともと国が乗り気なのでいいのですが、新しい工業都市というのは…」

「ええ、ですから蒸気機関車の製造都市として“造船業が盛んな都市”につくればいいのですよ。そこに鉄道の第2の中心をおくといいですね」

「造船業ですか?またそれはなぜ・・・?」

「なぜって…そんなの蒸気機関っていったら汽車もそうですけど、やっぱり蒸気船でしょう。うん、やっぱりあれかな?外輪式だっけ?外に輪がついている構造だっけ?」

 俺の言葉に二人が真っ青になる。

「なぜ…それを知っているのですか?あれはまだ極秘で建造中なのですが…」

 ストックさんが、喘ぎながら言う。ウルさんも口をパクパクさせているだけだ。

(む?隠していのか。なんか悪いことしたかねえ?でも、この程度のことを隠しておくのは無意味だからいってあげないと…)

「いいですか。この程度の発想はすぐ思いつきます。隠すよりも、この件を国に通して資金を出させた方が得策です。軍艦にも利用できますし、乗り気になるでしょう。どのみち、海運で使い始めればいやでも人目につくものです」



 しばらく、鉄道について話し合いやっと折り合いがついた。

「では鉄道関係のことは、ロアンさんの言うとおりに手配します」

「お願いします。ですが、交渉などは大丈夫ですか?」

「なにをおっしゃいますか。それこそ、われら商人の本分です。なんとかいたしましょう」

 そういうと、ウルさんは手早く指示を出した。さっそく、国へ渡りをつけるらしい。

「それで、クルール商会の他国への進出と農畜産業の大規模化(?)ですか?これはいかがしましょう」

「そうですね…畜産においては、割と楽なのですが…農業は厳しいです。大量の安い奴隷とかいませんよね?」

「そうですね。特に戦争をしているわけではありませんし、伝手はありません。南の方の国では属国から大量の奴隷を入手しているところはありますが、この国では宗教上そういうことができません」

「そうですか…ならば仕方ありませんね。僕も農業について詳しいノウハウがあるわけではありませんし・・・ってどんな顔をしているのですか」

 ウルサンとストックさん親子は、胡散臭いものを見ている顔をしていた。

(この二人は、俺はなんだと思っているんだろう…奴隷は倫理上あまりよくないからあきらめるか…)

「はあ…僕にも知らないことはあります。ですが、畜産業においては、多少は考えがあるので、それを参考にしていただけると助かります」

 そういって、俺が伝えたのは畜産の分業だった。出産・育成などの作業を一つの家で行っていたものを、品種改良・繁殖部門・育成部門と3つに分けさせた。これにより、少ない労働力で多くの家畜を飼えることになるだろう。日本にいたころに食べられたような、うまい肉が食べられるように品種改良部門には期待している。野生の肉は悪くはないが、いまいち臭みが強い。

 その後、この部門の担当を引き受けることになったストックさんへ、現代日本における畜産のノウハウや病気の対策などを伝授していたらあっという間に夜が更けてしまった。

 結局、ストックさんへの講義は朝までかかってしまった。そこへ、一睡もせずに指示を出していたであろうウルさんが戻ってきたので、朝食をとることにした。

「それで、息子の具合はどうでしょう?」

 ウルサンが心配そうにいってくる。ここにも親バカがいたか…いや商会の未来に関することなだけか。

「一通りは伝えました。あとはストックさんしだいです。何かあれば相談に乗れますが基本的にはいろいろ自前で研究していただきたいです」

「わかりました。ロアンさんにはご迷惑をおかけします」

 と、この一晩で信頼度が急上昇したストックさんがいう。

(なんだろう、こういらないフラグばっかり立っているのよね…男色の趣味とかないんだかんね!勘違いしないでよね!)

「そうですか、ではこの件はストックに一任します」

 そういうと、食事中だったストックさんを追い出してしまった。のんびり食べてないでさっさと仕事しろということなのだろう。ウルさんもストックさんも徹夜明けとは思えない動きっぷりだ。

「それで、ロアンさん。他国への商会の進出なのですが…」

 ウルさんが不安げにおずおずといってくる。

「それについてはすみません。昨日は僕も興奮していたのでしょう。クルール商会の他国への進出は、今の資本を考えれば先走りすぎました。今後、じっくりと力を付けてから狙うといいと思います。その時に、一言あればディアリス王国、スプレクス公国、アスキニス国の3国へは推薦状がかけます。あの国には多少顔が利きますので」

 ウルさんが露骨にほっとした顔になる。他国への進出の話は危険が大きすぎると思っていたのだろう。信頼すれども盲信せずといったところか。クルール商会が後ろ盾になったのは大当たりだったようだ。

「なにからなにまでありがとうございます」

 ウルさんが深々と頭を下げる。

「いえいえ、これからウルさんにはお世話になりますから。よろしくお願いしますよ」

 俺たちは、今後のことを考えて楽しそうに笑った。笑った内容は、全く別物だったけど。



 そのあと、ウルさんは忙しそうになったので、商会を出て自宅の方に向かった。だけど、夜どうし走って帰ってきたうえに徹夜明けの体は、日光を浴びてとてつもなくだるかった。そんな体を押しながら家に帰ってみるとそこには首を長くして待っているカティの姿があった。

(やっばい。こいつのことすっかり忘れていた。明日にしてくれないかな…)

 再び襲われためまいと頭痛に、いっそぶっ倒れてしまいたかった。

(無駄に頑丈なこの体が恨めしい…)


皇都にかえってきた

ウルさんにつかまった

面倒事を解決した

つぎはカティにつかまった


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