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ベルッセンの鬼(仮)  作者: あかいひと
プロローグ
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プロローグ

周囲には血と鉄のすえたにおいが充満していた。

地面にはちらほらと死体が転がっている。

まだ、死んで間もないのだろう、動物に荒らされた後も腐臭も放ってはいない。

死体をかたづけようにも、いまだにここは戦場だ。

鉄が肉を打つ激しい音、魔法が飛び交う空間は圧倒的熱量をはらんでいた。

その光景を尻目に俺は敵前線後方の森にひっそりと隠れていた。そう潜入というやつだ。

潜入し、敵の不意(ふい)をついて敵前線を混乱に陥らせることができる反面、敵に見つかれば袋叩きは免れない。即死亡につながってしまう。

このために、敵にばれないように細心の注意を図っている。俺は知らず知らず、手に汗を握っていた。


俺は見つからないように注意深く隠れながら敵を物色していく、もちろん注意力散漫な新兵をだ。

強いやつを狙うようなどマゾな趣味は持ち合わせていない。強い奴は強いやつに任せる。

強い奴とやりあったっていいことはない、数で囲めばいいだけだ。

1対1より1対多数の方が断然有利なのだ。弱い奴から殺して行ってこっちの有利な状況をつくればいい。

そんなことを考えているうちに目標を見定める。


相手に気づかれないように気配を殺しながらすばやく距離を詰めていく。

心は焦りながらも、敵に気づかれないように息を殺してゆっくりと近づいていく。

敵は前面の味方に集中しているようだ。

緊張でのどが渇いていくのがわかる。

あと一息の距離までつめているがまだ誰にも気づかれていない。

あと一歩の距離へと近づいたため目標への距離を一気に殺し、必殺の一撃を敵の急所に叩き込む。


ザシュッ


気持ちのいい音とともに敵が断末魔をあげて倒れていく。


「ふっ。ざまぁww」


そのとき他の敵もこちらに気づき、味方の陣形を荒らす俺を許すまじと狙いを定めたようだ。

だが残念ながらそこら辺の片道特攻とちがって帰還ルートも把握済みだ。相手の攻撃を先読みして、軽くステップでよけながら味方のほうへさくさくとかえっていく。


「ふぅ。じゃねー、おいしくいただきました。ふひょひょひょひょ」


意味の分からない笑い声をあげながら俺は逃げていく。

このまま逃げられそうだなと思った瞬間ふと背中に悪寒が走る。後方を見ると魔法使いが何かを放った後だった。やばいと思う暇もなく、魔法が体に直撃。

凍結の魔法により移動不能にされてしまった。

そこへ戦士が無言にも大鎌をふりかぶって叩きつけよけようとしてきた。


(危ない!)


だが相手の行動が読めているために俺はいまだ自由な両手を頼りに片方の短剣で相手の鎌の攻撃を受け流し、もう片方の短剣で鎌を叩き落とすことに成功した。

そうしているうちに凍結の拘束力も弱まり、移動不能が解除されたため、戦士への追撃をせずにさっさとにげることにした。


「危なかったー。まぁ無傷で帰還できたし、これだから不意打ちはやめられねーな」


無事に逃げ切った俺は、そういいながら再び潜入するためやや離れた戦場に向かうのであった。


―チューン


 再び潜入し、新しい獲物を血祭りにあげていると効果音がなり戦争が終了した。

残念ながらわが軍は敗北らしい。

まあ、途中から負けるってことはわかっていたけど。俺みたいなゴミプレイヤーがいるしな。


「ふぅー。やっぱり不意打ちって最高だな!これで今日は気持ちよく眠れるじぇい」


 こうしておれは、プレイしていたオンラインゲームをやめて寝る準備をして、快眠をむさぼるはずだったのだけどなぁ・・・ 







―パシャリ


頭に冷水をぶっかけられて目が覚めた。

だけど何かかがおかしい。

すこし整理をしよう。俺は黒柳 慶一、大学に入学して中だるみといわれる3年生だったはずだ。

まぁ大学生が暇だなんて嘘だ。泣きたくなるほど忙しい。

ストレス発散にネトゲでNOOBってやつを狩っている毎日を過ごしていた。

頭に水をぶっ掛けられるようなことに心当たりはない。

やさしくも乱暴にも起こしてくれるような女の子の友達はいないし、男友達だったら寝ている俺を起こさずに勝手に入ってきてゲームをやっているはずだ。

俺は、家に鍵をかけない派だ。寝ている間に友人が入り込んでいるなんて日常茶飯事だ。

昨日(?) のことを思い出してみると、ネトゲをやって気持ちよく布団に入ったのまでは覚えている。

それがいま頭に水ぶっ掛けられて起こされたようだ。


ベッドで寝ていたはずなのに、いま自分いるのは湖の中であり、しかも中腰のかっこうで座っている。なにこれ誘拐!?周りを見回してみると白いローブをきた人が一人目の前に立っている。フードを深くかぶっているために顔はわからないが手が水をすくった形をしているから俺に水をぶっ掛けたのはこいつで間違いないはずだ。


「は?なにこれ?へ?」


(ちょい、何こいつ!なにしてくれてんのさ)


いやそうな顔で前の人を見たら、めちゃめちゃきれている雰囲気が漂ってきたのであわてて口をつぐんだ。


(しかもなにいきなりきれてんの?この人。こわいわー)


「これで三立の儀・洗礼を終える。アリダ、後は頼んだ。」


フード男からは予想以上に若い声が聞こえる。


(声の感じからして若い?20代くらい?30代?まぁ声で年齢が当てられるような特殊スキルは持ち合わせていないけどね)


「かしこまりました。ルーベン様」


 湖のほとりにたたずんで見守っていたアリダと呼ばれた女性が丁寧にフード男に対してお辞儀をしながら見送っていた。


 俺は当然のようにわけもわからず置いてきぼりをくらってボーっとしていた・・・


(なんなんすかねーこれ、おうち帰れるのかなー?)


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