【ホラー】海沿いの小学校の七不思議「雨漏り女」
「夏のホラー2025」参加作品です。テーマは「水」。
オリジナルのホラー小説です。
【登場人物】
私(C) :語り手。
A :霊感があるといわれている友人。
B :雨漏り女と目が合ってしまった友人。
雨漏り女 :学校の七不思議に一つ。校内のいつも雨漏りしている場所にいて、目が合うと呪われると言われている。
私の通っていた海辺の小学校の七不思議に「雨漏り女」というのがあった。
校内にいつも雨漏りしている場所があり、そこに女の幽霊がいて、目が合うと呪われると言われていた。
昔、目が合ってしまった子がいて、その日からその子の周りで何ヵ所も雨漏りするようになったそうだ。
梅雨の時期でほぼ毎日雨が降っており、雨漏りする場所には雨漏り女が現れ、その子をジッと見ているので、その子は段々おかしくなっていった。
家の雨漏りもどんどん酷くなり、大型台風が通り過ぎた時に家は倒壊し、その子は亡くなってしまったのだという。
怖がっている子もいれば、信じていない子もいたが、雨漏りのせいでカビが生えて黒ずんでいる壁は、みんな気味悪がっていた。
私も後者の方で、黒ずんでいる所が人の形に見えるのだろうと、壁を見る度に思っていた。
ある日、午後からひどい雨が降り出した。
Bと一緒に教室を出て、話しながら廊下を歩いていると、例の雨漏り女の壁の前でBが何故か立ち止まった。
カビだらけの黒ずんだ壁を見ているBの顔が、どんどん青ざめていくのが分かる。そしてBは叫びながらその場から逃げ出した。
私も後を追い、下駄箱でやっと捕まえたBに、何があったのかと尋ねると、Bはガタガタと震えながらこう言った。
「雨漏り女と目が合った……」
黒ずんだ壁から生えるように、長いボサボサの髪で、汚れた黒っぽい服を着て、髪の先や服の端からポタポタと水が垂れているびしょ濡れの女が突き出ており、Bの方をジッと見ていたらしい。
私は信じられなかったが、万が一にでもBが死んでしまうと思ったら怖くなった。
そんなところに霊感があると言われていたAが、様子のおかしい私たちを心配して追いかけて来た。
事情を話すと、Aは何事もなかったように、呪われていないから大丈夫だよ、と言った。
でも目が合ったんだとBが言うと、AはBを宥めながら、幽霊の目は白く濁っていなかったか、と聞いてきた。
Bが濁っていたと答えると、Aはほらね、と言った後、濁った目では何も見えないから目が合う事はないんだよ、と教えてくれたのである。
そして七不思議の話は偶然が重なっただけで呪いのせいではないのだとAがキッパリと言ってくれたので、Bは安心する事ができ、私もホッとした。
しかしBが帰った後、私はAに確認したくなった。
幽霊の目が見えていないと言ったのはBを不安にさせない為で、本当は見えているのではないかと質問すると、Aは笑ってこう言った。
「そんな事を言ったら、C君(私の名前)なんて、あの壁を見る度に雨漏り女と目が合っているよ。」
その日から、私はその壁を見るのを止めた。
海辺の小学校のその壁は、今も雨漏りのせいで、カビが生えて黒ずんでいるらしい。
おしまい。
お読み頂きありがとうございます!
Aの言葉に寒気を感じて頂けましたら幸いです。