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あ、忘れていたわ。確か母も姉も領地にいるはずよね。賑やかな人達が居なくなれば寂しいと感じてしまうかもしれないわね。
「ふふっ。気が向けば邸に寄らせていただきますね。これからは姉も甥っ子も邸に戻ってくるでしょうし」
私の言葉にルーカス様は少し眉尻を下げている。どういう心境の変化があったのかしら。
「それが、グリシーヌは息子だけを王都に送るように侍女に指示し、自分は別邸から出たくないらしくてね。困っているんだ」
「そうでしたか。甥っ子と乳母だけ来る訳にはいかないでしょうから待つしかないでしょうね」
私が口を出すことはない。ここは父となったルーカス様や父が頑張っていかないといけないところよね。
「そういえばお父様、ここに来た理由は領地の薬草を数株カイロニア王宮へ送って貰いたいのです」
「送るのはいいが、向こうで栽培をはじめ、我が家が今まで輸出していた薬草の取引が減るのではないか?」
「実はカイロニアからもここでは入手困難な薬草を分けて貰ったのです。今、王宮の薬草園に植えていて株をある程度増やしてからガーランド領で栽培をしていただきたいのです。入手した大衆薬の原料なので国内での販売が大幅に見込まれる予定です。
今よりも領地は潤うとマード公爵からお墨付きをいただいていますわ。陛下の印が付いているこの書類に詳細が書いてあるそうです」
サッと私は書類を父に差し出すと父は困惑しながらも領地が潤うことを聞き、嫌悪感はなくなったようだ。
ルーカス様も一緒に目を通している。
「詳しい話は私には分かりかねるのでマード公爵から後日連絡があります。その時にお聞き下さい」
「トレニア、ありがとう。前向きに検討する。薬草の方はしっかりとカイロニアへ送っておくから心配は要らない」
私は用事も済んだのでさっさと邸を出ることにした。父もルーカス様も「もう行くのか? もう少しゆっくりしていきなさい」と寂しげな表情でそう話していたけれど、私の家はもうここではないもの。
でも、あの頃に比べて父達は私を受け入れてくれていると思うと少し心が温かくなった。
私はローサと侯爵家の馬車で寮まで送ってもらい早々に帰ってきた。いつのまにかローサの手には新しいレシピが書かれた紙があったわ。料理長が私のために用意してくれていたらしい。
感謝しかないわよね!
もちろんローサはこっそり料理長にお酒を渡していたみたいだけど。
ふふっ。新しい料理も早く食べたいわ。




