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風船アニマル

作者: 藤乃花

小さい頃はスーパー等で着ぐるみを頻繁に見かけました。

今のスーパーでは、見かけなくなりましたね。

放課後、マローリアはスクールの帰り道に見たことの無いモールを見付けた。

こんな場所にモールなんて在っただろうか、と思いつつそこから流れてくる楽しげなメロディに心が弾み、つられて入って行った。


モールの中へと一歩入ると、沢山の従業員やお客たちが楽しそうに行き来している。

「わあ……っ!

まるで、夢の世界‼

こんな素敵な場所、なんで今まで知らなかったんだろう……!」


二階まであるモールには色んなショップが賑わいを見せており、お客たちもそれは楽しそうに買い物を満喫している。

(インテリアのお店にスイーツのお店に……雑貨屋さんもある!)

ショッピングが好きなマローリアの気分は盛り上がり、軽い足取りでモールの奥へと進んでいく。


「ドリームモールへようこそ!

はあい、お一つどうぞ!」

モールのイベント広場では、色んな種類のアニマルの着ぐるみが風船を配っている。

(あ……風船、私も貰おう!)

マローリアはイベント広場へと駆け寄り、好きなコアラの着ぐるみの前まで行った。

「一つ下さい」

「はい、青い風船だね。

どうぞ!」


コアラの着ぐるみはマローリアの好きな色を言い当て、その風船を彼女に渡した。

(私が青色を好きなの、どうして知ってるんだろう?)

「それはね、ここが夢の世界だからだよ!

夢の世界でなら、僕らはみんなの心が分かるんだ」

「夢の世界……そうか、それなら心が分かっても不思議な事は無いわね」


青い風船を受け取ったマローリアの気持ちはフワフワと浮かぶ風船のように弾んで、モールでの楽しい時間を過ごす事が出来た。

(楽しい放課後を過ごせて良かったわ。

明日は皆を誘って、また遊びに来よう!)

マローリアが持つ青い風船に小さな風景が浮かび、楽しい時間を映していた。


(帰ったら専門スクールの課題を全部片付けて、明日にはレポートを提出しないと……疲れる……。

でも、またモールに行けば夢の時間を楽しめる!)

モールのお客は全員帰宅し、従業員や着ぐるみたちに静かな時間がやって来た。

「今日のお客さんたちも、明日になればドリームモールの存在、忘れてるんだろうね……」

「まあ、夢は忘れるものだよ。

ここは疲れてしまった大人が子供に戻れる世界だからね」

「皆に配った風船みたいに、モールの記憶もしぼんでしまうし、ここにたどり着けるかどうか分からないさ」

ドリームモールの世界の住人たちは、寂しそうな表情を浮かべている。 

「だけど、また他にも疲れてしまっている大人たちは沢山いるから僕らはその人たちに夢を与えていくんだ、これからも」 


夢の世界から現実へと戻る途中で、マローリアの心から何かが小さくしぼんでいく。

(あれ?

この風船……なんだろう?

何かを忘れているような……)

楽しい夢の世界は、風船のようにいつかしぼんでいくもの。

けれど何故だか、マローリアは風船をしっかり手にし離したくない気持ちだった。

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