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気づかされた私のプロローグ?

はい、そんなわけで『異世界生まれの父とヤクザの母、子供の私は小説家?』第一話目です。子どもの頃のサキさんと風変わり? な両親の話です。タイトルにあるような感じですね。よろしくお願いします。

 私の家族は風変わりだと思う。

「ただいまぁ……」

 父の帰宅は血だらけで庭から帰ってくるし、

「あらあら? とりあえずシャワーねぇ」

 母はその様子を見ても普通にしている。

 私はというと子どもの頃は父が怪我して帰ってきたとばかりで大騒ぎだったが心配性だったとは思う……

「父、痛い?」

 子どもの頃の私は帰ってくる度に父に近づくが、手が届く範囲にはいかない。濃い鉄のような匂いがしているので父も接触させないようにしているから。

「大丈夫だ、問題は……ちょっと汚れてるだけだから」

 血まみれの身体ではあるものの、傷は少ないことに気づいたのはもっと大きくなってから。銀髪の父は普段は後ろで縛っているがお風呂にいる時は解いている。綺麗な銀髪は我が家では普通だ。

 庭にあるシャワーを浴びながら、時々淡い光が漏れているけど気にせずタオルを持って待機するのが日課だった。

「サキ~、荷物をー」

「え、これ? 重いので無理」

 父のバックは円柱型の大きな背負い袋だ。子どもが持ち運ぶのには無理がある。

「そっかー。無理かー。ならちょっと転がしてくれる?」

「頑張ってみる……」

 頭にタオルを乗せて大きな円柱型の背負い袋を引きずろうとする。ボンサックと呼ばれているものらしい。びくともしない。

「……あっ」

 横倒しにして転がしてみる。うまくいって転がっていくが泥だらけになっていく。中には何か入っているのか、時々何か転がる音がする。

「父~」

「お、できたか。えらいえらい」

 不思議な光と共に手だけシャワールームから出してきて濡れた手で頭を撫でる。この光も部屋で見るような光ではない気もする。

一通り満足したのかシャワー室にバックを入れる。

「これも洗っておかないと……母は怒ると怖いからね」

「母はにこにこしながらだから……」

そうは怖くないよーというと父は「あー……」と声を上げる。

「サキよ。母の怒りはあと二段階あるぞ」

 父はだからいい子でいているんだと念押しする。声が震えている。そういう怒るようなことをしたのかなと首を傾げる。

「父ぃ~? そういえばだけど」

「なんだい? 何の仕事をしているのかかい? 自営業だよ自営業」

「……違うよー」

 いつも聞くのはそれだけど、今回は違う。それよりも気になったのはバッグから聞こえた音のほうだ。

 ちなみに父はいつも仕事を自営業といって誤魔化すが、玄関からではなく庭から帰るのは何故か、とか、庭の先、山が近いが立入禁止の場所側にあるわけだし、危険なことをしているとしか思えないので。

「さっきの、中に何入ってるの? 転がる音してたし」

「あー、宝石だよ宝石」

「宝石!?」

 父が困った顔をしている。これは触ったら怒られるものだと子どもながらに理解する。

「母に見るだけと相談しておきなさい。触ってはいけないし、質問もなし。いい子にしておけるかい?」

「あい」

 手を上げて返事する。善は急げと言いながら駆けだそうとして。

「父ぃ~」

「んー?」

「ありがと」

「うむ」

 取っ手にタオルを挟んで駆け出していく。母は多分台所にいるはず。



……台所にはいなかった。

中庭にある殿舎の前で手を合わせていた。家は前後左右中庭に出られるようになっていてここだけ何か特別な意味合いがあるのかもしれないが、当時はよく知らなかった……

 綺麗な黒髪の、着物を着た後ろ姿を見つける。母だ。

後ろから抱き着こうとして

「!?」

 回避された。くるっと立ち位置を変えるように

「サキ? 何してるの? そんなことでは母に抱き着くなんてできませんよ?」

「なんで避けるの!!」

 ふくれっ面で文句を言う。母は不意打ちで抱き着こうとすると必ず回避する。

「いいことを教えましょう。大事な教訓ですよ?」

 人差し指を立てながら母は告げる。

大事な教訓は母が何かを教える時の枕詞のようなものだ。それが本当に教訓になる時もあるしそうじゃない時もあるのだが……

「当たらなければどうということもない!!」

 まるで後ろに某赤い人を彷彿させるかのようないい声で言うのである。

「それと避けたのにいんがかんけいは?」

「難しい言葉を知っているのね」

 いい子いい子と頭を撫でてくる。

見上げながらさらに聞く。

「かんけーは?」

「ないわ。母は不意打ちが嫌いなだけです」

 きっぱりといいきってにんまり笑顔で抱きしめた。

「それとね? ここではお尻を向けっぱなしは駄目よ? 神様は尻ではなく顔を見たがるのだから、ね? 大事な教訓ですよ?」

――しかし何の神様が祀られているかとか、ずーっと知らないままだった。




 父の話す話にしても、母の話す話にしても、興味と好奇心を掻き立たされ生きてきた。

 父曰くこことは違う異世界な、ファンタジーな世界の話――

 母曰くちょっと不思議な、神話や伝承に加えてちょっと裏社会めいた話――

 それらを聞いて育った私は小説家を目指した。

 そういう物語を書いていきたい、そう願った。

……でも、父の話も母の話も『実話に基づいた話』だと知ったのは私が小説家になった後だった……

 父曰く――若干の後ろめたさのある顔で

「伝えてなかったが、父は異世界の生まれでね?」

 母曰く――いつもの笑みと頭大丈夫? と心配気な目で

「え? 伝えてない? 駄目よ? この歳で痴呆になっちゃ……ええ。実際ある話だし、実際、貴方も『見てきた』でしょう?」

というのである。

――つまり?

「異世界生まれの父」

 と震える指で父を指差し

「ヤクザの母」

 と震える指で母を指差し、瞬間的に母に指を掴まれねじられ悶絶する。

人を指さしちゃいけませんとあれほどと母の説教を聞きながら

「……子供の私は小説家、になると?」

 知られざる秘密を聞いて頭を抱えた……

お読み下さりありがとうございます。

誤字等ありましたらごめんなさい。許してくださいTT

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