ゴムボール
私立F高等学校。偏差値はかなり低め、私立は兎に角生徒数が増えなければならない。その為受かり易い。主人公【立花麻衣】も滑り止めで受験し、合格し、本命では叶わなかった。
それから一年。麻衣は二年生になっていた。毎日つまらない日々、友達と退屈を凌ぎ、青春をサボっていた。不良と言うわけではなく、授業はちゃんと受けていた。なぜ、麻衣が腑抜けになったかと言うと、本命の高校は【女子野球部】があったからだ。
そう! 麻衣は野球をやりたかった! だが、この高校ではボウズにしなくてはならない古くからの悪習慣があったのだ。伝統とは良くも悪くも続けられた結果だ。それを考えるとこの高校は偏差値は低くても、伝統を重んじる心があると言えるのかも知れない。
「いっそボウズにしちゃおうかなぁ」
問題はそれだけではない。部員は全員男。着替など性別で【区別、隔てて当たり前のこと】があるため、諦めていたのだ。マネージャーにはなりたく無かった。プレイヤーになりたいのだ。
そんな事を知っている友人の【門真舞子】はなんとかフラストレーションを解決しようと、カラオケに連れて行ったりしたのだが、麻衣の悩みが解決してないのに気づいていた。そこで舞子は百均でゴムボールを買って持ってきていた。
「キャッチボールしない?」
「えっ? 舞子、なんで? えっ?」
「やりたいんでしょ? 野球」
「でも舞子私の球捕れる?」にこーって笑った。
「やってやるわよ!」
舞子は秘密で特訓していた。バッティングセンターでグローブ付けて高速の球を捕球する練習を。麻衣の投げる球……。
160キロ!
バシーン! とてもゴムボールとは思えない音が廊下に響く。まだ教室に残っていた生徒が幾人か廊下を見渡す。「今の何?」「なんかすごい音しなかった?」「ムチでも使ったような……」