知らない方がいい事もある
此処はとある森の中、 オンリーはある依頼の為来ていてた。
「あのー、本当に他に人は要らなかったのですか?」
「必要ない。魔物の姿を知る君以外邪魔なだけだ。」
「邪魔って………」
都市からの依頼である。未確認の魔物の姿を知らないオンリーは学者でありその魔物を目撃している青年オッシュのみ連れてきていた。
オッシュは依頼に同行しようとした人達はその都市の冒険者ギルドでも指折りの実力者達なのだが、それを邪魔扱いするオンリーに唖然としていた。
「それで此処らへん?」
「はい、目撃したのは此処辺りです。」
未確認の魔物は既に何人かの冒険者に対して死傷者を出している。その中にはゴールドランクの中堅上位も含まれている為、冒険者ギルドは用心を兼ねてオンリーに依頼を出したのである。
「大きさとしてラララビット程度ですが、速さが異常です。目撃した瞬間に倒されたとも聞いています。」
ラララビットとはこの森では一般的な魔物であり、中型のウサギであり、警戒心が強く危機察知が高い特徴を持っている。
このウサギは肉も毛皮も最高級品である為、昔は乱獲されて絶滅危惧種になった事もある。今は法律による規制や地元民達の尽力により数を戻す事が出来たが、今でも法律を守らない密猟者が多い事で有名である。
なので………
「ラララビットの変種か進化種の可能性が高いな。」
「はい、ギルドでもその可能性が高いという結論になりました。」
魔物の一番恐ろしいのは適応能力である。
例えば、森林に住んでいる魔物を砂漠に放つと、その魔物は砂漠に適応して姿を変える。普通の生物では何十世代も重ねて適応を一世代で適応する。
そして、今回は外敵による進化であり、この場合は外敵、今回は人間に対して有効になる攻撃方法と攻撃的になる進化する事が多い。
どれくらい強くなったか分からないが、今回の情報からしてよっぽどの敵に適応して強くなったのだろう。
「い、いました。っ!」
オッシュが件の魔物を見つけた瞬間、魔物はオッシュ目掛けて一瞬に近づいて攻撃してきた。
オッシュは次の瞬間自分は死ぬと思ったが、それはオンリーによって阻止された。
オンリーはオッシュに物凄い速さで近づくウサギを手づかみしたのである。
「これが例の魔物か?」
「は、はい。間違いありません。毛が茶色のラララビットにはないまだら模様の毛並みに穏やかさとは程遠い目つき。私や冒険者が目撃した姿をと一致します。」
たしかに一致するウサギだ。ラララビットにも似ている。後は捕まえるだけだなと考えるオンリー。
「気をつけてください!話によれば無数の細い斬撃を飛ばしてくるようです!」
オッシュがそう言った瞬間、ウサギはオンリーの拘束を解こうと、斬撃を自分を掴んでいるオンリーの手に向かってゼロ距離で飛ばした。
「この程度の斬撃、大丈夫ですよ。」
「きゅ!」
「えっ?」
ゼロ距離で放たれた斬撃はオンリーの手をズタズタに切り裂く筈だったが、オンリーの手は無傷であった。その様子にオッシュだけではなく、捕まっているウサギも驚いていた。
「が、頑丈なんですね。本当に人間ですか?」
オッシュはその姿からオンリーは獣人並みに頑丈なんだと考えた。
「人間ですよ。それに頑丈さは人並みです。」
「では?なんで今も無傷なんですか?」
オンリーとオッシュが話している間もウサギはオンリーの手だけではなく腕や脚などあらゆるところに斬撃を飛ばしていた。
ウサギがオンリーに夢中になっているのとウサギの斬撃コントロールが良い為、オッシュには一切斬撃は来ていなかった。
「簡単ですよ。こちらも斬撃で相殺しています。」
「ですが、オンリーさんは何もしていませんよ?」
動物の挙動には敏感に感じ取れる自信のあるオッシュは何の挙動も魔力操作も行なっている様子のないオンリーに対して疑問を投げかけた。
「してますよ。私の修めた聖女護身術にある聖断という技を使っています。」
「聖断?」
「この技は何もなくても何もしなくても斬撃を放つ事ができます。」
聖女護身術免許皆伝のオンリーは一切の動作なく聖断を自在に放つ事が出来る。
そもそも、聖女護身術とは剣がなくても敵を斬り、拳をなくても敵を殴る事を技にしている。
「なので、ゼロ距離だろうと関係なく相殺は可能です。」
オンリーはそう言うとウサギの首を絞めて気絶させた。
「聖女護身術、聖縛さぁ、帰りましょう」
オンリーは自分の髪を2本取るとウサギの前脚と後脚をそれぞれ髪で括った。
そうすると、括ったウサギを持って来た道を引き返した。
「はい。?」
オッシュはオンリーに返事してオンリーの後を追うが、ウサギの括っている髪とオンリーの髪を見比べていた。明らかに髪の長さが違う。
自分はウサギを括っている様子を一切目を離さずに見ていた。その時、特殊な行動をしていないのに自然と元々この長さだと勘違いしてしまいそうにスムーズに括っていた。
「?」
オッシュは何かに見られたような気がして振り向いたが、そこには誰もいなかった。
「早く来てください。」
「は、はい。分かりました。」
オンリーに早く来るように言われたオッシュは慌てて返事して少し距離が離れたオンリーを追いつく為に小走りで追いかけた。
「…………………………」