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温泉街

「着いた。意外と早かったな。」


「直通の道路が開通していたから。ラッキーね。」


 この国は各地で毒ガスが充満する事が平均週二で起きる上、噴火する事も月一で起きる為、道が年単位で使えなくなる事が多々あるのである。

 今回はそんな事なく最短の道が空いていたのである。


「観光都市なのに人が少ないな。」


「この都市は盆地に建てられているからね。毒ガスが発生したら暫く滞留する。一年中毒ガスによって外出を厳しく制限しないとあっという間にゴーストタウンだ。」


 クラムが観光客どころか、人の気配すらしない都市を見て驚いていた。

 この国の家は完全密閉された空間となっておりガラス扉も開けられなくなっている上に何かあっても良いように三重戸となっている。その密閉度は外から中の人の気配も分からないほどであった。

 換気は全て外の空気を浄化する浄空機によって行われている上にそれでも室内酸素量も減って行く為、家の中には多数の植物を育てられている。

 酸素も自給自足しないといけない国。ハッピーサンドである。


「で、アミア達とは何処で落ち合うんだ?」


 クラムはこんな人の住んでいるゴーストタウンでどうやって落ち合うだ?と思っていた。

 オンリーの事だから居場所は知っているだろうが、こんな密閉されまくっている家が建ち並ぶ空間に温泉宿などあるのか?と皆が疑問に思うのであった。


「それは問題ないよ。」


 オンリーはそう言うと丁度宿に着いた。

 クラム達は降りる準備を始めようとしたが、オンリーは一切馬車を止めようとしなかった。

 皆はそれを不思議に思い馬車が扉にぶつかりそうになった。


「ちょっ!止まって!」


「ぶつかる!!」


「そんな慌てないで、落ち着いてください。」


 オンリーが馬車内で慌てる皆を宥めながら低速で扉に近づくと自動的に扉が開いた。

 皆は馬車に乗ったまま、宿に入った。


「うわっ!なに?煙?」


「解毒と今、外に漂っている毒ガスの中和剤です。」


 皆が馬車入店に驚いているといきなり煙が馬車を包んで皆と共に浄化していた。

 煙にしては粘っこくザラザラする触感に違和感を覚えていた。

 ハッピーサンドの宿はまず第一の扉を通ると荷物も、乗り物も、生物も毒を解毒させてから入店する。


「そして、第二の扉を通れば今度は体内検査をして毒が完全に残っていないかを調査します。」


 第二の扉を通ってあった部屋には無人の検査場となっていた。

 そこからは生物、荷物に分かれて検査を開始する。

 二手に分かれた道を通り厳重な検査が始まる。そのまま棒立ちで数分経つと自動で次の扉に行く様になっている。

 因みに完璧に毒が中和できてない者や物があるとそれだけ取り除かれてまた別の部屋に通されるのである。


「私達には関係ない話だけどね。」


 この道中は常にオンリーによって解毒されていた為、体内に毒があるわけがなかった。

 だから、すんなりと通る事が出来た。


「まっ!眩しいな。」


「熱光線による熱消毒ね。」


「これが最後です。」


 最後の部屋は常に光線によって熱消毒された部屋だった。

 明らかに高温そうな光線なのに感じる温度は体温並みに心地いい温度だった。


「ここが……温泉宿?」


 クラム達の目の前にあるのまるで温泉街を彷彿させる室内だった。

 このハッピーサンドでは温泉宿組合があり、そこに所属する温泉宿が密集地帯を作って集合温泉街を形成しているのである。


「大体街一個分と同じくらいの広さがあるって話だけどこれは多分盛ってるね。」


 街相当の室内温泉街と言っているが、じっさいは二回り程の広さである事がなんとなく分かった。


「それでアミア達は何処に泊まっているんだ?」


「この道の一番奥にあるあの宿だよ。」


 オンリーの指差す方を一同が見るとそこには宿と言うより要塞と言って過言ではない建物があった。


「あれは……宿なのか?」


「正真正銘、宿ですよ。この温泉街を取り囲む壁がもし崩壊しても避難できる様に頑強な造りとなっているけどね。」


 確かに遠目でもその頑強は一目で分かるほどの重厚感がその宿にはあった。

 確かにあれがあればここの人達も安心して過ごせるだろうと思わせるだけの価値はあった。


「さぁ、行きますよ。此処からは歩きになりますから。」


「あれ?荷物は?」


 二手に分かれた荷物が見当たらなかったどころか、近くに荷物が出て来そうなところがなかったのである。


「もう既に宿に送られています。此処は完全予約制ですから。検査場の荷物ゾーンはこの温泉街の全温泉宿と繋がっているんですよ。」


 手荷物なく移動できる快適設計になっていた。

 土産なども全て帰る時にまとめて払う仕組みになっているので、本当になにも持たずに移動することができるのである。


「へぇ、便利ね。」


「ここまで快適にしないと温泉の効能や宿の質だけでは誰も来たがりませんからね。」


 此処まで来る危険性と釣り合わせるために温泉宿組合も必死に開発と努力を重ねてきたのである。

 その集大成がこの温泉街である。

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