弟子失格
「さぁ、みんなで話し合いましょう。」
皆がリリスの部屋に入って取り敢えず座って話をする体勢になった事を見てオンリーは話し始めた。
そんな中、リリスはこの場から逃走しようとした為、オンリーによって聖縛で縛りあげられ床に転がされていた。
無駄だと分かっていてもどうにか踠こうとしたが、ピクリとも動かなかった。
「離せ!このっ!」
「無駄ですよ。私の聖縛が貴方程度に破れるわけがありません。」
リリスの抵抗を嘲笑う様にオンリーは微笑んでいた。少なくともリリスにはそう見えていた。
クラムはそんな一触即発の現場を見て震えていた。
なんでいるんだろう、とクラムは呆然としていた。
「あのー、オンリー先輩。」
「なんですか?マーゴさん。」
「そろそろリリスちゃんを離しては貰えないでしょうか?リリスちゃんももう逃げないと思うので……」
マーゴは友人であるリリスが服が乱れている状態で拘束された事により半裸の様な格好で床に転がっている状態が気の毒になっていた。
「そうですね。もう逃げないと約束するなら外しましょう。」
マーゴの訴えもあってオンリーは条件を出して聖縛を解除する事にした。
リリスは観念して逃げない事を約束した。
「はぁ……酷い目にあったわ…」
リリスは乱れた服装を直しながらオンリーを睨んでいた。
クラムにほぼ裸を見られたのも、友人の前で恥をかかされたのも全部オンリーのせいだとリリスは睨んでいるのである。
そんな睨まれているオンリーは自業自得だと微笑んでいた。
「そもそも、こんな事になった原因は責任からも、己の血からも逃げている貴方が招いたせいでしょう。私を睨んでも何も前進しませんよ。」
「少なくともそこの変態に裸を見られた責任は私にはないわ。」
「いや!誰が変態だ!」
クラムの抗議の声は黙れ!変態!とリリスに一蹴されてしまった。
「それも貴方が部屋での服装をきちっとしていなかったのが原因です。私に責任はありません。」
これに懲りたら自室でもちゃんと服を着るのですねとオンリーは助言したつもりだったのだが、リリスからしたら煽られている様にしか聞こえていなかった。
「ねぇ、そろそろ本題に入らない?」
このままだと明日になっても話が進まないと思ったカナイが話を戻す事にした。
リリスとしてはこのまま話を有耶無耶にして全員を追い返したらまた引き篭もるつもりだったので、その目論見が潰れてカナイを睨んで始めた。
「そうイラつかない。友達を無くしますよ。」
「友達ゼロの!ぼっちに言われたくない!」
オンリーには言われる筋合いがない台詞を言われてリリスは大声で噛みついた。
「はいはい、また脱線している。」
「ねぇ、リリスちゃん。私、本当に気にしてないよ………」
マーゴの話を聞いたリリスは体が強張りながらマーゴの方を振り向いた。
余程、マーゴにした事を悔やんでいる様だ。
「………マーゴが許しても、私が…許せないのよ…」
リリスは視線をマーゴから外しながら話した。
その顔には友人を襲った悲しみが見て取れた。
「情けないですね。リリス。」
「っ!貴方に!何がわかるっていうのよ!」
「何も分かりませんよ。ただただ今の貴方は情けない。それだけは分かります。」
「お、おい……オンリー…流石に言い過ぎだろう。」
本当に不甲斐ない者を見る目でリリスを見るオンリーは残念そうに言った。
リリスは怒りに任せてオンリーに噛みついていた。
このままでは部屋どころか寮ごと潰す勢いの喧嘩が始まるのではと思ったクラムが止めようとしていた。
「クラム君、聞き分けのない根性なしには現実を教えるのが一番なんですよ。」
「根性なしですって!!!」
リリスの怒りのボルテージは増すばかりだった。
「貴方の血なら私も師匠から聞いて知ってますよ。それに怯えて忌み嫌っている事もです。だからこそ言います。貴方はラッカアの弟子としての自覚が足りない。」
いつにも無く真剣な顔で言うオンリーにリリスは気圧されそうになっていた。
それでも敬愛しているラッカアの弟子として誇りのあるリリスは弟子失格の様な事を言われて怒りが爆発した。
「貴方がそれを言いますか!この前まで聖女なれるのにも関わらずにならず!のうのうと生きてきた貴方に!」
オンリーが外で自由に鍛え、冒険し、力を蓄え行く一方で、リリスは協会内でラッカアに近づく為に言葉通り血の滲む努力をしてきた自負があった。
それを否定する行為は許せなかったのである。
「それでその程度なら弟子を辞めた方がいいですよ。」
「このっ!」
もう怒りに任せてオンリーを殴ろうとしたリリスより先にオンリーにビンタする者がいた。
「リリスちゃんの努力を馬鹿にしないで!」
マーゴであった。
リリスがどれだけ努力してきたのかをこの学園で誰よりも近くで見てきたマーゴはそれを知らないオンリーに友の努力を馬鹿にすることだけは許せなかった。
「無駄ですよ。貴方では私に触れることはできない。」
その通りであった。
マーゴではオンリーに触れることはもちろん近づくことすら出来ていなかった。
ビンタをしようとした瞬間、自動的に発動した聖縛に縛られていたのである。
その事を知覚できなかったマーゴの身体は無理矢理オンリーに近づこうとした為、身体中が悲鳴を上げる結果になる筈だった。
それをオンリーは瞬時に治してまるでマーゴが動いていないかの様に見せていた。
「それなら私ならどうですか?」
カナイはなんと聖縛を解いてオンリーに触れたのである。
「こう見えて私も怒っているのですよ。」
このまま攻撃を仕掛けようとしたカナイだったが、いきなりの衝撃で後ろに吹き飛ばされていた。
「カナイ!」
「安心してください。痛みはありません。ただ身体が強烈な痛みを受けたと錯覚して気絶しているだけです。」
「ちょっとやり過ぎじゃないか?」
クラムも年下の後輩にやりすぎではとこれ以上はと思って止めに入った。
「そうですね。弱い者いじめは虚しいだけですね。リリス、貴方が師匠の弟子と言うなら証明する事です。」
オンリーはそう言うと部屋を後にした。




