世界一の金庫
少し投稿が遅れてしまってすみません。
8月の投稿はは8月5日から投稿します。
後、新たに一作品投稿を始めます。
良かったらそちらも見てください。
「おい、オンリー。」
「何かな?クラム君?」
「どうして俺達は男二人で走っているんだ?」
クラムとオンリーの二人は山を越え、森を抜け、砂漠を走るをしてかれこれ3日は走り続けていた。
「それは流石に私でも全速力で走り続けながら自分と相手を回復させ続けるのは骨が折れますからね。」
二人は誰にも尾行されない様に全速力で走り続けなければいけなかった。
だから、オンリーは今回行く場所にはクラムしか連れて来なかったと言うより連れて来れなかった。
「それに私の速度に常時ついて来れるのはクラム君しかいないですから。」
「それはそうだけどな。」
クラムもそれには肯定するが、そうではなく何で走っていかなければいけないのかと思っていたのである。
「途中まで馬車とか使えばいいじゃないか?」
「前にも言いましたが、あの場所は特殊な方法でしか行けません。」
会員の中には専用方法を確立している人もいるそうだが、オンリーは作っていなかった。
オンリーもそこまで頻繁に使っていない為、作る必要が今までなかったのである。
「それにしてもまだ走るのか?」
「後どれくらいかな?もう着いてもおかしくないんだけどね。」
オンリーにも後どれくらいかは分かっていなかった。毎回着く時間にバラツキがあり、その誤差は最大で2日である。
「?霧が……」
「運が良いですね。クラム君。到着です。」
さっきまで雲ひとつない快晴で周りの見通しが最高だった砂漠が一瞬にして霧が二人を包んでいった。
その次に異変が起きたのは足の感触だった。
砂漠の砂を蹴っていた感触から硬い石でも蹴っている様なしっかりした足場に変わっている事に気がついた。
「さぁ、ようこそ。クラム君。世界の金庫へ。」
「こ、これが世界の金庫。」
霧が晴れたクラムの目の前には巨大な金庫の扉が見えた。
いや、それしか見えなかった。
霧が晴れたのはその部分だけで、まるで扉の部分の霧だけをくり抜いた様に綺麗にそこだけの霧がなくなっていた。
「お久しぶりです。オンリー様。」
金庫の扉が勝手に開いたかと思うと中からオンリーの名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「久しぶりです。」
オンリーは姿が見えないその人が誰なのか知っている様で声を返した。
「そちらの人は初めてですね。オンリー様の紹介ですか?」
「そうです。こちらはクラム君です。」
扉の向こうにいる人をクラムには見えていなかった。
正確に言えば見えてはいるが、姿がハッキリと見えないのである。
まるで記憶に霧が掛かっているようだ。
「クラム様ですね。了解致しました。登録完了です。」
「え?もう?」
何も手続きをしていないのに登録出来た事にクラムは驚いていた。
セキュリティが世界一の安全な金庫と聞いて長い手続きや身分証明書などが必要だと思っていた。
「此処は世界から色々な人が集まるからね。中には身分を明かせない人もいるのですよ。だから、向こうは何も聞いてきません。ただ金庫として保管場所を貸し出すだけです。」
「そんなので防犯は大丈夫なのか?」
悪意のある人物が盗みに来たりしないのかと不安がっていた。
「此処にはここへ悪意がある人は誰も辿り着けないようになっています。なので、盗賊がここに辿り着く事も紹介されてくる事もありません。」
「それに金庫は預けた人か、その人の担当者しか開ける事が出来ないのです。それにクラム君もこの人を覚える事が出来ないでしょう。」
「あぁ、なんか霧が掛かった様に一瞬も思い出せない。」
オンリーは自分の担当者の言葉に補足して説明し出した。
そして、その担当者は姿を見る事ができないと言うより、記憶に残す事ができない。
これこそこの金庫に登録する唯一の関門であった。
「純粋に借りに来た人には自動的に契約の魔法が掛かるようになっているのです。それを受け入れたら正式に登録完了ですよ。クラム君。」
今のクラムの状態は仮登録である。
今から借りる金庫を見てから本当に借りるかを決めたら、この契約を履行すると思えば自動的に完了と管理が始まるのである。
「さぁ、お入りに下さい。」
担当者に促されてクラム達は金庫の中に入って行った。
「これは家?街?」
「いえ、金庫です。クラム様。」
金庫の扉の先は青空が広がる街並みが広がっていた。
ただ一つ違うのは一切活気がなかった。
人の気配も、声も、姿さえも見えず、まるで街のジオラマを見ている様だった。
「この全てが金庫であります。」
「これが全てが金庫?」
クラムは担当者の許可を貰うと近くの家を触ったり、叩いたりしてみた。
すると返ってきた感触は通常の家からは感じられない頑丈さと不動感だった。
確かに見た目は家だが、中身は金庫と言って遜色ない強度だった。
「お分かりになりましたか?ここに並ぶ金庫達はありとあらゆるものを保管できる様になっております。」
担当者はクラムに分かりやすいように空き家を一つ開けて見せる事にした。
「これは………停止している?」
金庫の中身はまるで今から朝食が始まる様な状態で整っていた。
まるで時間が止まっていると感じている様な感覚にクラムは陥った。
「この金庫の中はその一つ、一つが保存に最適な環境になる様に調整されています。」
ここに置いてある朝食は保管されてから腐りも埃もかかる事なく、ずっと置かれていた。
それはこの中がこの朝食を保管するのに最適になっているからである。
「例えば、此処に炎と氷を隣り合わせに置いてみます。」
どこから取り出したのか担当者がこの金庫の中に炎と氷を通常なら溶ける距離に置いた。
すると、氷は溶ける事なくそのままの形と冷たさを維持し出した。
「あれ?この炎は普通の炎ですか?」
「はい。至って普通の炎です。」
クラムが疑問に思ったのは燃えている炎から煙も焦げている匂いも何もしないのに、炎からは確かに自然な熱さが感じられた。
「これが全ての金庫に備わっている最適な環境にする機能です。」
「すげぇ。」
この不思議な金庫がある事にクラムは素直に感心していた。




