ゲテモノ〜いい湯だなぁ〜
「ふぅ………いい湯だなぁ…」
アミア達は目的地に着いてすぐ旅の疲れを癒す為に温泉に入った。
この温泉は旅館が建っている霊山地下深くの源泉から直接汲み上げている湯なのだ。
「ここの温泉の効能は何なのかしら?」
「疲労や肩凝りなど身体を整える効能だと聞きました。」
「誰からにゃ?」
アンナが呟いた言葉を聞き逃すことなく、アミアが答えた。それを横で聞いていたニナニナはかなり秘境の名湯なこの場所をアミアが知っている事に移動中も疑問を思っていたが、さっきの旅館の女将との会話や此処での発言から何処かの常連に話を聞いていたのだと思ったニナニナは少し気になったので尋ねてみた。
「オンリーからだけど?」
「………だから、いつの間に私達のご主人様と話しているのよ。」
アミアの謎のオンリーとの信頼関係を築いていることがアンナには気に食わなかった。
「それにしても修行すると聞いた時は身構えたけど、本当に良い湯ね。」
「此処で修行するんならいいかも知れないわね。」
さっきまでの不満も良い湯の前に溶け出していた。
「あまいにゃ。今舐めている飴より甘いにゃ。」
「温泉に入りながら舐めるものじゃないわよ。」
和んでいる他のみんなを見て、ニナニナの発言にアンナが注意をした。
「それにしても、見事に女しかいないわね。」
温泉で寛いでいた一人のクラム奴隷が呆れた様に呟いた。
「女湯なんだから。当たり前じゃない。」
「そうじゃないよ。今回の旅行メンバーの事を言っているの。」
不思議そうに首を傾げながらカカァが尋ねた。
「全てではなくとも大半の奴隷が参加したのに女しかいないのはご主人様ながらどうなのかと思っただけよ。」
少なくともクラムの奴隷の中で来れなかった者達に男はいなかった。
「貴方達のところの女たらしと違って私達のご主人様にはいますよ。男の方。」
「え?見た事ないけど?」
クーメェが言った言葉に奴隷の中で一番オンリーと関わりがあるアミアが見たことがないと驚いていた。
「それはそうだよ。僕のお父さん。帰ってきても人見知りして隠れている上、オンリー様とお母さんしか分からないもん。」
娘の僕でもたまにしか見つけられないんだよ。と不満そうに呟いていた。
「あれは見つけるの無理。匂いも気配もゼロ。ありとあらゆる感知から逃れるのに見つけられるオンリー様とキリスのお母さんが可笑しい。」
シィは前にキリス父を発見する為、オンリーに聞いて屋敷にいる日に探しまくったが、朝から探したのに夕暮れになっても見つけることができなかった。
本当にいるのかと存在自体を疑い出した頃、そんなシィを見かねてキリス母がシィの背後からキリス父を見つけたのである。
今日一日中、キリス父の技術を知ってもらおうとオンリーの指示でずっと近くで隠れていたのである。
「シィは頑張った方だよ。大半は半日もせずに諦めるもん。」
キリスが今まで父に挑戦した人達を思い出して励ました。
「それでもオンリーも一人しか男の奴隷がいないのね。」
「いますよー。私達も会ったことがないのですが、いるらしいです。」
オンリーの奴隷には誰も見たことのない男奴隷がいると言う噂が奴隷達の間に流れていた。
「ご主人様とゼクターしか会ったことがないそうよ。」
「何しているの?」
オンリーが言うにはまだ所有権は持っているが、とっくの昔に保釈金は支払い済みだと話していた。
ゼクターはその男の話は頑なに話そうとしない。
そんな謎しかない奴隷だと言う。
「何でも世界中を回っているそうよ。」
世界を旅して歩いている。
目的はそれだけ。
世界初の徒歩での世界一周をしようとしているのだそうだ。
「徒歩で?!」
「海はどうするのかしら?」
「いや、流石に船だろう。」
各々が驚いてリアクションをとっていた。
世界一周を達成した人は過去に数人いたが、その人達はドラゴンなど移動が速い魔物や乗り物を作って移動したのである。
徒歩で世界一周なんて思いついても実践しようとする人なんていなかった。
「はぁ、規格外の奴隷もまた規格外ですね。」
「クラムは男の奴隷を買おうとしなかったんですか?」
いつも姦しそうにしているクラムなのだから。男を一人身内に増やそうとしたのではないのかと思った。
「あぁ……それはね。今日来ていない子に重度の男性恐怖症と人見知りを併合している子がいるのよ。だから、私たちの中に男の奴隷はいないのよ。」
その子はその子を助けたクラムにだけは男だけど心を全開にしていた。
「そんな事情があったのね。」
「まぁ、手に入る奴隷や仲良くなる人が何故か女性だけって言うのもあるんだけどね。」
やっぱりクラムはただそう言う星の下に生まれたのだと皆が思った。




