ゲテモノ〜思いを一つ添えて〜
「さぁ、奴隷だけの旅行が始まるわよ!」
「何でまた、私達は旅に出ているのにゃ……」
元気いっぱいにアミアが叫ぶとまたかと辟易しながらニナニナは呟いた。
「だって、ご主人様達は聖都に旅行に行っているのに私達だけ、屋敷に御留守番なんて嫌じゃない?」
ちゃんと今回もオンリーにも許可は取ったわよと胸を張りながら言った。
「でも〜楽しみですよね〜今回行く所って〜温泉が有名なんですよ〜」
クーメェはこの旅行が普通の慰安旅行と思っているのか、楽しみそうに言った。
そんなクーメェを同じ獣人として哀れに思いながら夢を見させておこうとニナニナは黙って見ていた。
「おばさんくさい。」
「何か〜言いましたか〜」
シィがボソッと呟いた言葉を聞き逃す事なく、即座に背後に鬼の形相を浮かべながらクーメェは聞き返した。
シィは別にと言って、キリスの方に行った。
「あのチビ竜が〜」
「アハアハ、大変そうですね。」
「何ですか〜?」
シィへの怒りを露わにしているとクーメェは背後から声をかけられた。
振り向いてみると、クラムの奴隷がニコニコ顔で話しかけてきた。
クーメェとしてはクラムの奴隷と仲良くする気はなかった。
「初めまして、そんな嫌な顔をせずに仲良くしましょうよ。同じ草食の獣人じゃないですか?」
「貴方は牛で〜私は羊ですよ〜同じ草食でも全然違いますよ〜」
それを周りで聞こえてきた人達はいや、羊と牛なら共通点多くない?同じじゃない?と思っていた。
「えぇ、同じですよ。羊と牛は家畜ですし、それに同じ奴隷同士じゃないですか?」
「あんな女たらしな主人と私の最高のご主人様を一緒にしないでください〜」
それを言った瞬間、和やかに進んでいた集団に軋みが入った。
ただ、そこから深まる事はなかった。この二人の間以外では。
「いやいや、クラム様は優しい上に私の誕生日に最高のベルを贈ってくれたんですよ。」
クラムの奴隷は奴隷の首輪に付いているカウベルを鳴らしてみせた。
「はぁ〜これだから栄養が胸にしかいかない牛はダメなんです〜私のご主人様は私を買ってくれた時から私のこの髪と羊毛をそれぞれを最高にブラッシング出来るブラシを常備してくれていたんですよ〜」
見てくださいこの艶々かな髪、そして、この最高にモコモコとして羊毛とクーメェは見せびらかしていた。
あと、胸にしか栄養が入っていないのはお前もだろうと離れている小さい竜が内心思っていた。
「貴方も同じく胸にしか栄養が入ってませんよ。」
「………私は胸にも入っているのです。胸か、脳かの二択になっている人達のとは違うのです〜」
クーメェは心外だと言う風に怒りながら抗議していた。
「クーメェさん。その程度にして下さい。そのまま喧嘩するようなら僕が相手になりますよ。」
「貴方もですよ。カカァ。仲良くし始めたご主人様達のために私たちも奴隷同士これからは仲良くしようと話し合ったばかりだろう。」
二人のエルフが集団から孤立してバチバチと火花を散らす二人に話しかけて落ち着かせようとしていた。
「止めないでくれるかな〜フリファ〜それに私に勝てるつもりなのかな〜」
「そうですね。マヤェイ。ですが、喧嘩を売ったのはあちらです。私が叱られる所以はないよ。」
それを一瞬にして怒りを再点火して突っぱねた。
「勝てるつもり?勝てますよ。惰眠と駄肉の羊に負ける僕ではありません。」
「だから、落ち着け。あと、フリファ、お前まで怒ってどうする?!」
こいつ、苦労人だなとマヤェイの事を周りの人達は判断して、ただ、自分も巻き込まれるのは嫌なので遠巻きを更に遠巻きにして傍観しておく事にした。
「取り敢えず三人とも落ち着け。これから私達は慰安旅行で心と身体を癒すのだ。こんな険悪な雰囲気では休まるものも休まらない。」
マヤェイは落ち着かせるとともに説教を始めようとしていた。
「慰安旅行?あぁ言い忘れていましたが、今回の旅行は慰安ではないですよ。」
「「「「「え?」」」」」
話の成り行きを見守っていたアミアはマヤェイが言った事を訂正した。
「今回の旅行の目的は新たな珍味と奴隷同士の交流、そして、いざという時の為の戦闘での連携を図る為のどちらかと言うと社員旅行の方が近いですよ。」
「初めて聞いたんだけど?!」
言ってませんでしたか?とアミアはとぼけながら言った。
ちなみにニナニナやアンナはアミアからの提案の旅行という事からこんな事だろうと予想はついていた。
「ニナニナやアリシアがナイフ磨いていつもの準備をしているから。皆さんも聞いているものだと?」
みんなの視線は一気にニナニナとアンナに向いた。
「いや、だって他人事のように私たちの報告を聞くみんにゃに同じ苦しみを味わって欲しかったのにゃ。」
「私は聞かれなかったので、言う必要はないかと。」
つまり、ニナニナとアンナの思いは一つだった。
地獄を貴方達に。
それに今回の旅行はいつもと比べたらマシであると知っていた。その事も教えるつもりはなかった。




