運命
「おい!ナギリィ!あんな奴がいるなんて聞いてないぞ!」
乱暴に教会の扉が開かれるとまた夢魔とは別の女の悪魔が入ってきた。
「ラクラが来たって事は本当に結界が破られたのね。」
「あぁ!そうだよ!あの憎たらしい小娘が!今度会ったら速攻潰してやる!」
どうやら、ガリーにいっぱい食わされた様でラクラと言われた悪魔は怒りながら肯定していた。
「それで!お前は目的は果たせたのかよ!?……」
ラクラはナギリィに目的の達成状況を確認しようとしたが、それはオンリーを見た瞬間に黙り出した。
「どうしたのよ?ラクラ?」
いつも騒がしいラクラの見たことの無いダンマリにナギリィは困惑していた。
ただでさえ目的達成不可能が濃厚な状況になっているのにこれ以上負担を増やさないでほしいと思っていた。
「見つけた。」
「!オンリー!」
「いただきまーす!」
ラクラは小さく呟くと身体が一瞬にして暗い霧になったとクラムが知覚した瞬間、いつの間にか、オンリーの背後に立って鋭い牙を首元に立てようとしていた。
「ねぇ、なに、人の弟子に手を出そうとしているんだ?蝙蝠風情が?」
「ちっ!」
「?師匠?起きたのですか?」
ラクラの魔の手はオンリーの師匠であるラッカアによって幅舞われた。
ラッカアに殴り飛ばされたラクラは間一髪防御が間に合いはしたが、塞いだ両腕は激しい激痛が走っていた。
「さっきね。他の奴もすぐ起きるわ。」
ラッカアの言う通り、他の客も起き出していた。
こんな状況になっているのに呑気にあくびをしたり、中には二度寝を決め込もうとしている人までいた。
化け物からしたらこんな状況も日常茶飯事なのだろう。
「…………時間切れね。」
そんな状況を見て、もう目的達成は不可能と断じたナギリィは撤退を決定した。
「あぁ?俺はまだ、諦めねぇぞ。」
そんな中、ラクラは撤退を拒んだ。
「貴方元々、今回の作戦に乗り気じゃなかったじゃない。」
ラクラは戦闘狂な面もある為、今回の教皇誘拐は乗り気じゃなかった。
正面から堂々と誘拐するならともかく、今回の搦手な作戦はラクラの性格的に好きではなかった。それでも参加したのはナギリィの教皇への思いと友情からくるものだった。
さっさと終わらして魔界で酒でも飲みたいとでも思っているだろうと思っていたナギリィからしたらラクラの発言は驚くには十分なものだった。
「あれと戦いならやめた方がいいわよ。」
少なくても相手の有利な土地で戦うにはラクラの実力ではラッカアに勝つのは100%とは言わないが限りなく不可能に近いと判断していた。
「そうじゃない。」
「違うの?」
戦闘狂の血がラッカアという強者によって刺激されたのだと考えたナギリィからしたらラクラの発言はびっくり仰天と言っていいほどだった。
「お前があの爺が欲しいように、俺にも欲しい者が出来た。」
舌舐めずりするラクラの顔は女の顔になって発情していた。
ナギリィはこの世のものを見ているとは思えない表情で驚いていた。
「アイツの血は美味い。絶対美味い。そして、俺の人生で一番美味い血になると俺の魂が!舌が!身体が!叫んでいるんだよ!」
ラクラは魂の叫びをあげると、オンリーに飛びかかった。
「はぁ、面倒な人はクラム君が担当しているんですけどね。」
「こんなもので俺は止められねぇ!!」
オンリーはため息を吐きながら聖縛で縛り上げようとしたが、ラクラは無理矢理引きちぎって拘束を解いた。
「聖縛を無理矢理引きちぎるって脳筋にも程があると思うんですが?」
「さっさと俺のものになりやがれ!」
「だから、人の弟子に手を出すんじゃ無いわよ!」
また、飛びかかったラクラをオンリーの前に出たラッカアがまたしても殴り飛ばそうとした。
「同じ手が効くか!!」
「馬鹿が脳筋に負けるほど馬鹿じゃ無いのよ。」
「ガバっ!」
カウンターを狙ったラクラ行動を読んでいたラッカアはそれに合わせて逆にカウンターを繰り出して殴り飛ばした。
壁にまで吹っ飛ばされたが、ラクラの身体には目立った傷はなかった。
「ちっ!傷がねぇのに、妙に痛い。あぁ、ウゼェ!」
ラクラは身体中に響く痛みに不快感を示していた。
それを気合いで吹き飛ばした。
「うわぁ、ヤク並みの脳筋ね。」
聖撃の痛みを気合いで吹き飛ばしたラクラを見て、ラッカアは友人の脳筋と同等と感じて呆れていた。
「ねぇ、まだ続けていたの?」
「サー、目的は諦めるわ。撤退よ。」
いつの間にか教会内にいた悪魔がナギリィに話しかけてきた。
「貴方も負けたの?」
「負けてない。殺し損ねただけ。」
結界を任していた友人が集まっていることにオンリーの用意していた伏兵が思っていたより手だれであったことに感心していた。
そんなナギリィを見て無表情ながら不機嫌さを感じさせながらサーは反論した。
「それより諦めるの?」
何十年も初恋を引きずっていた面倒くさい夢魔であるナギリィを知るサーはナギリィがあっさり引こうとしていることが意外だった。
「良いのよ。チャンスはまだあるわ。」
「おい!俺はまだ……」
「うるさい。私ももう帰りたいの。」
まだ諦め切れないラクラはまた反論しようとしたが、何かしらの術でサーに眠らされて強制的に黙らされた。
「あれ?もうお帰りになるのですか?」
「えぇ、今日は帰るけどまたご挨拶に来るわ。今度は結婚の挨拶にね。」
「はい。その時を楽しみに磨いていますよ。」
バチバチに火花を飛ばしながら、まるで嫁姑のような険悪な雰囲気を醸し出しながら教皇誘拐未遂事件は幕を閉じた。




