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家族

「そう、あれは夏の暑い日じゃった…………」


「いや、何勝手に回想しようとしているのですか?」


 オンリー達に説明するため、回想に入ろうとするのをオンリーがストップをかけた。


「そんなとうの昔に枯れ果てた春の話なんていらないんです。」


「枯れ果てた春ですってーー?!!!」


 オンリーの辛辣な発言にショックを受けた教皇は膝から崩れ落ちて落ち込み、夢魔は怒りをヒートアップさせながら今にもオンリーを殺す勢いの剣幕を浮かべていた。


「おい、流石に言い過ぎじゃないか?」


「そうですよ。恋はいつでもみずみずしいものですよ。」


 クラムやガリーもオンリーの発言は流石にどうなのかとフォローしようとしていた。


「それは違いますよ。春には必ず鮮度がある。歳をおいてからでも春は来ますが、昔の春なんて熟しすぎて喰たものではありません。」


 更に辛辣な事を言うオンリーに夢魔は殺すつもりはなかった今回の作戦にオンリーの殺害を作戦に組み込み始めていた。


「それに教皇様が説明しなくてもこの夢魔との出会いなど容易に想像できます。」


 ラッカアを師匠と仰いですぐの事、ラッカアと同等か、それ以上の立場の人がどんな人なのか気になったオンリーは密かに情報を集めていた時期があった。

 その中には教皇の経歴もあった。


「このアッハゾルテ教は異端者の駆け込み寺の側面もあります。宗教によっては差別の対象になるような種族でも実力があれば上に行ける実力主義の宗教。それがアッハゾルテ教です。」


 だから、孤独な孤高の人や血筋が生まれる傾向にある。

 教皇もまた、元々は別の神を信仰する教徒だった。


「神童が現れたと噂された教皇がこのアッハゾルテ教に来たのも詳しくは書いてありませんでしたが、断片的な情報と教皇と共に過ごしてきた人達の話を統合したところ。一つの結論が生まれました。」


 その結論は墓場まで持っていくつもりだったが、こんな事になったのなら話すしかなかった。


「教皇様は生まれ育った教会を追われる行いをした。それが悪魔関係であることまでは突き止めていました。それがこの夢魔なんでしょう。」


「…………なんでオンリーはそんな事を調べていたんだ?」


 話し始めたのは良いが、クラムからしたらなんでそんな個人情報を満載な事をオンリーが調べていたのかが気になっていた。

 もしかしたら、自分も………という恐怖感もあった。


「師匠が何かをやらかした時に揉み消すことが出来るように上の者の弱味は握っておくほうが安心ですよと言う教えがありますから。取り敢えず最高権力者の弱みを握ろうと幼い頃から調査していました。」


 ラッカアは何を教えているのだと教皇はオンリーの教育係を間違えたと後悔していた。


「親しそうなところを見ると魔界に偶々来た貴方が若かりし教皇様に助けられて恋に落ちて、それがバレて教会関係者に殺されたように見せかけて魔界に戻り、教皇を魔界に持ち帰れる機会を待っていたというところでしょうか?」


「………………その通りよ。」


 怒り心頭だった夢魔は計画の目的をズバリ当てられたことによって冷静さを取り戻していた。


「お姉さん。ワシは…………」


「良いのよ。アライシー。貴方がこの数十年、私の死に打ちひしがれていた事は分かっているわ。だから、私を助けられなかった事をもう気にしないで、これからは一緒に時を刻んでいきましょう。」


 教皇に手を差し伸べる夢魔はとても穏やかな表情で教皇を見ていた。

 教皇はその手を躊躇しながら掴もうとした。


「はぁ………そんな事をさせるわけがないでしょう。」


「邪魔しないで!」


「オンリー………」


 そんな両者の間に入ってオンリーは障害として立ちはだかった。


「なんで邪魔するのよ。私たちは幸せになりたいだけよ。」


「おい、オンリー。」


 まだ、状況をあまり飲み込めていないが、もうこの二人の邪魔をしない方がいいのではないのかとクラムは思ったため、二人の邪魔をするオンリーを呼びかけていた。


「クラム君は黙っていてください。教皇様の後釜も引き継ぎも終わっていないのに教皇様を連れて行こうとしないでください。それに教皇様は私の家族です。」


「オンリー………………」


 オンリーは幼い頃から天才と言われて英才教育を受けてきた。勿論その中には同じく神童として教皇まで登り詰めた教皇も教え、孫のように過ごしていた。

 教皇がオンリーを孫と思うように天涯孤独で祖父を知らないオンリーもまた、教皇の事を本当の祖父のように思っていた。

 そして何より、ここまで育ててくれた恩がある。そんな教皇に幸せになってもらいたいと思うと同時に奪われたくないという思いが強かった。


「簡単に手に入るとは思わないで下さい。おじいちゃんを手に入れたいならまずこのオンリーを倒してからにしてください。」


「……………良いよ。分かった。君も本気みたいだね。」


 夢魔もオンリーが意地悪で邪魔していたわけではないと分かって怒りを鎮めまるで一人娘を貰うために父親に挨拶する男のような気持ちでオンリーと対峙していた。


「必ず貴方におばあちゃんと呼ばせますよ。」


「ええ、好きなだけ呼んであげますよ。昔の恋を拗らせたババァさん。」


 やっぱり怒りマックスで倒そうと笑顔で決めた夢魔だった。

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