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開式

「いや、本当に前列席(教会関係者席)以外ほとんど空席じゃん!」


 クラム達は聖都で1週間過ごしてオンリーの聖女就任式の当日になった。

 クラム達が教会に来てみると、前列席以外席が埋まっていない事に絶句しながら自分たちの席に座った。


「でも、あそこは席が埋まってますよ。」


「きっとラッカアさんの友人席だな。師匠がいる。」


 少し離れた席に自分たち以外の人達で埋まっていることをカハナが気がついた。

 クラムはその中に自分の師匠のアンライがいるのを発見した。


「おぉ、見事に会話がなさそうだな。」


「丁度半々で会話が盛り上がっている席と会話が皆無な席で別れている。」


「正反対を表しているような席だな。」


 陽の空気と隠の空気が水と油の如く分離した席に苦笑しながらクラム達は見ていた。


「おっ、始まるようだぞ。」


 前列以外ガラガラないつも通りの式典が始まった。


「教会の式典ってもっと人がいると思っていました。」


「いや、此処が異質なだけだろう。」


 聖都をオンリーに案内されながら他の教会を見る機会が何度かあったが、その教会はちゃんとほぼ満席で式典が始まり終わっていた。

 聖女数と信者数で言うとアッハゾルテ教は世界三大宗教に上がるほど多いのだが、異質というか個性的な信者が多い事で有名である。

 上の立場にいるものほど個性的な孤高のぼっちになる人が多いである。ラッカアがアッハゾルテでは異質なのである。


「教皇様、相当お爺ちゃんだね。」


「なんでも教会最年長の100歳超え、最年少で教皇になった神童。教皇歴も最年長だなんて設定盛りすぎな爺さんだそうだ。」


 いま、演説している教皇は前にこの聖都の案内中にオンリーが話していたのでクラムは覚えていた。

 戦乱の混乱期で教皇候補者が皆死んでしまった背景があったとしても自分達と変わらないくらいの歳の時にこのお爺さんは教皇に着いたと言う経歴を持った凄い人と言う話だった。


「それでももう歳らしい。」


 オンリーの予想ではこの二、三年で引退する確率が高いと言っていた。

 因みに教皇クラスになると病気の類は一切恐れることもない為、暗殺されない限りどの宗教でも上の立場の者は長生きなことが多い。


「只今より授与を行う!」


 司会の聖女が教皇の演説が終わると次の項目に移った。

 それと同時にオンリーが教皇に向かって歩いて行った。


「なんか聖女っぽくない。」


「仕方ないだろう。オンリーは中性的でもないんだから。聖女の礼装をそのまま着たら悲惨だぞ。」


 クラムの発言でラッカアや司会の聖女の服をオンリーが無理矢理着ている姿を想像してしまった他のみんなは吐き気を催すこの世の終わりのような姿を見た。


「なんてものを想像させるのよ!」


「俺のせいか?!」


「そこ!静かに!!」


「くふっ。」


 クラム達があまりにも騒がしくしたので司会が強めに注意した。オンリーはいつもと変わらないクラム達に笑いが込み上げていた。


「良い友人持ちましたね。」


「まだですよ。」


 教皇がオンリーに皮肉なしの言葉をかけたが、オンリーはまだ友達になっていない事を正直に伝え、教皇はそれだけでこの者達がどういう関係なのか理解した。


「若いな。」


 もう年老いた自分と比較するように教皇が小さく呟いた。


「オンリーよ。貴殿の教会への多大なる貢献を認め、これより聖女となる事をここに許可する!」


 教皇はそう告げるとオンリーに聖女に贈るピアスを渡した。

 このピアスはアッハゾルテ教特有のものである。他教ではまた別のアクセサリーを聖女の証として贈る。

 そして、オンリーはその場で両耳にそのピアスを付けて拍手喝采で滞りなく式典が終わる筈だった。


「っ!」


「くっ!」


「すぅ………………はっ!」


 パリンっとガラスが割れるような音共にこの協会内にいる皆に強烈な睡魔に襲われ大半の人間が眠ってしまった。


「大丈夫ですか?教皇様。」


「ワシは大丈夫じゃ。」


「クラム君も大丈夫ですか?!」


「あぁ、なんとかな。」


「私も、大丈夫で、す。」


 オンリーは教会内で無事な人間を確かめるように声をかけていった。

 クラム達の中では返事が返ってきたのはクラムとガリーだけだった。

 まだガリーは眠そうにしていた。


「でも、何故俺たちだけ大丈夫だったんだ。」


「僕たちに共通するのは精霊持ちだね。」


「貴方は?」


 クラムがこの状況に疑問を告げると見知らぬ女性が話しかけてきた。


「僕の名はダーイト。ラッカアの友人さ。」


「貴方も精霊持ちなんですか?」


 そうだよと見た目と違って幼くも感じそうにガリーの質問に答えた。


「ですが、教皇様は精霊持ちではないです。」


「確かにワシは違う。」


「つまり、敵の狙いは教皇?」


 この場の例外からこの眠りの犯人の目的を推測した。


「多分ね。教皇を眠らせなかったということは誘拐や暗殺ではない事だけは分かるね。」


 眠らせた方が成功しやすいものは教皇に対して行おうとしていることは犯人の目的は違うと考えれた。


「取り敢えず、此処から離れましょう。」


「そうだね。僕も賛成だよ。」


「そうだな。」


 オンリーは敵と戦闘になった時に眠っている者が邪魔になったり人質になったりすれば困る為、外に出る事を提案した。

 満場一致で賛成だった。


「さぁ、行こう。」


「えぇ、逝ってください。」


「はぁ?!!」


 いきなりオンリーがダーイトを突き刺したことにクラム達は絶句しながら驚いていた。


「これはどう言う事かな。オンリー君。」


「どう言うことも何もダーイトなんて人師匠の友人にいません。そして、この出席者にも貴方に該当する人はいません。」


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