種族として嫌い
頭痛が酷くて投稿が遅れました。
すみません。
「戻らない。」
「どうしてだ!」
オンリーの屋敷に怒声が響き渡っていた。
怒鳴られているシィは不機嫌そうな顔をしていた。その向かいに立つ竜種の女性も不機嫌というよりキレている感じの顔をしていた。
「里なんて退屈でつまらない。」
「それでも奴隷よりマシな筈だ。」
どうやら、この女性はシィを連れ戻そうとしているようだ。
「それは主人によって違うと思う。少なくてもオンリー様はいい主人。仕える価値がある。」
シィは断固とした決意で言った。
女性は意外そうな顔でシィを見ていた。
この女性はシィが幼い頃から知っている。特別親しかったわけではないが、それでも同じ里に暮らす年齢の比較的近い同性の仲間として接してきた。
そんな彼女でもこんな忠誠に満ちたシィを見た事がなかった。
「それでも決まりは決まりだ。お前はまだ里を出て良い歳ではない。」
「別に良いでしょう。それは身の程知らずの馬鹿が出て死なない為のものでしょう。私には適応しない。」
確かに元々はそういう側面もあった掟ではあるが、そんなもの既に風化して、今では人口が減る里から人を極力出さない為の施策になっていた。
「そんな事、私に関係ない。子供でも出来たら里にやるから。黙ってろって里の爺どもに言ってといて。」
もう聞く耳を持たないのかシィは女性の横を通り抜けようとしていた。
「ちょっと待て!子供でもって!相手でもいるのか?!」
年下のシィに先越されたのではないかと彼氏いない歴=年齢の女性は焦っていた。
「いないけど、主人様に頼めば相手ぐらいしてくれる筈。」
「……………それで良いのか。お前の初めて。」
あまりにも情緒もへったくれもないシィの発言に女性は素でツッコんでしまった。
「行き遅れ。」
「誰が!行き遅れだ!!!」
シィがボソッと呟いた言葉を聞き逃さなかった女性は振り向いてシィに講義しようとしたが、そこには既にシィの姿はなかった。
「くっ!隠れるのがうまくなっている。」
気配で居場所を探ろうとしたが、シィの気配は何処にもなかった。
竜種は特に気配が大きいのに、それを一種にして無くすなんて里に居た頃より腕を相当上げている事に内心、関心していた。
「ど〜かしましたか〜」
どこからか気の抜ける声が聞こえてきた。
女性が声が聞こえた方を向くと雲のようなもので浮いている眠たげな羊の獣人がいた。
「あなたは?」
「私はクーメェ〜この屋敷の奴隷だよ〜」
あまりに奇怪な風貌にそれなりに旅して見地を広げたつもりであった女性でも驚きのあまり反射的に正体を尋ねてしまった。
「そう言う〜あなたは〜?」
「これは申し遅れました。私はヌメメ。此処に泊まらして頂いている冒険者の一人だ。」
「あぁ〜奴隷長〜のお仲間さん〜か〜よろしくね〜」
クーメェ自身ゼクターの事はあまり好きではないが、それを理由に初対面の人に無礼な態度を取るつもりはなかった。
「あぁ、よろしく。」
「ところで〜シィちゃんを見ませんでしたか〜?」
「シィですか?さっきまで此処に居ましたが、もう居なくなりました。」
露骨に落胆した顔に変わったクーメェは雲に顔を沈めて項垂れていた。
「シィに何か用があったのですか?」
「用がなかったら〜私がシィちゃんを探すわけないんですよ〜」
この発言でクーメェがシィの事を嫌いである事をヌメメは察した。
「竜種は〜役立たずしかいないんですか〜?」
「はぁっ?!」
余程、探し回ってイラついていたのか、嫌いなシィと同じ竜種だったからか、クーメェは八つ当たり気味にヌメメを罵倒した。
「愚鈍そうな肥えた羊に言われたくありませんね。」
「あぁっ〜?!」
言われっぱなしのヌメメではなかったすぐに言い返してクーメェに煽り返した。
「脂肪のかけらもない干物女に言われたくありませんね〜竜種は〜男女の区別がつけ難くて仕方ないですね〜」
「無駄乳がっ!ラム肉にして食ってやろうか!」
醜い罵り合いが二人の声を聞きつけて仲間が止めに入るまで屋敷に響き渡った。
そして、クーメェの中に竜種は気が合わない。嫌いという言葉が追加された。
「シィ、そろそろ部屋に戻らなくて良いの?」
「うるさい奴らがまだ居そうだから。まだ居る。」
件のシィはキリスの部屋に避難していた。
「僕が教えた気配消しを無闇に使って欲しくないんだけど?」
「別に良いでしょう。減るわけではないんだから。」
「タネが分かったら相手がかかり難くなるんだけど。」
シィがヌメメから逃走する時に使った技はキリスから興味本位に教えてもらったものだった。
「これだけじゃないんだから。ケチなやつは大人になれないよ。」
「もうシィより胸はあるよ?」
「殺すぞ。チビ!」
自然と煽られて一瞬にして羊の胸を思い出して怒髪天になった。
「怒らないでよ。シィ。」
相変わらず、部屋を占拠されているキリスはため息吐きながら諦めた。




