師事
「アタシを強くしてください!」
「い、いきなりなんね。」
ヨーサは一人でオンリーの屋敷を尋ねていた。
理由は簡単、より強くなるために一度だけ師と仰いだ人に会いに来たのである。
「あぁ?お前は…………誰だっけ?」
「ヨーサね。アタイが一度気の手ほどきをしたね。」
クラムと一緒にオンリーの屋敷に居たのだが、あの時はオンリーとクラム以外目に入っていなかったので、ゼクターは覚えていなかった。
「それでなんでアタイね?」
「アタシの知っている気の使い手で最も上手い人がアルネさんだからです。」
魔衣が使えない今、鍛えるのは気と体術しかなかった。
一人で試行錯誤したり、クラム達と実践訓練したりとがんばってみたが、自分達の中にヨーサと同タイプの人はいないため、技術面で教えてもらう人がいなかった。
学園もそもそも魔法を学ぶ場所であって、体術面は門外漢だった。
「だから、アルネさんしかいないんです。」
「アタシのご主人はダメなのか?」
黙って聞いていたゼクターがヨーサの話で一つ疑問に思った事を言った。
アルネよりオンリーの方が格上である上にオンリーは教えるのも上手い事は自分自身で体験したので知っていた。
「確かにゼクターのご主人は化け物ね。あんな滑らかに気を流している人は自国にも少なかったね。勿論、あの歳に限定したら存在しなかったね。」
多くの気の使い手を見て、戦ってきたアルネでもオンリーの規格外さは驚愕に値した。
その道を極めようとしても凡人では届くか分からない境地に他の分野と並行して至っている事も知った時は仲間達と絶句していた。
「オンリーは頼らない。アタシはアイツに勝ちたいんです。」
「無理。」
ゼクターはヨーサの発言を一刀両断した。
今のヨーサには微塵も可能性を感じなかった。
そして、アルネと肩を並べれるクラスになっても不可能だと言う事はゼクターが何よりも知っていた。
「アタイも無理だと思うね。一矢報いるならアタイでも出来そうかもしれないね。でも、勝つのは無理ね。」
負けず嫌いで最初から負けると思って戦ったことのないアルネでもオンリーには敗北しか思い浮かばかなかった。
一矢報いるのも奥の手をふんだんに使ってやっとだと考えていた。
「それでも、今の状態のままでいるよりマシです。」
それはヨーサも分かっていた。
仲間の中で停滞しているのは自分だけに感じていた。
「分かったね。でも、条件があるね。」
「条件ですか?」
受けてもらえて嬉しかったヨーサだったが、条件と言われて何を言われるのかと不思議でいた。
「ゼクターにも師事してもらう事。」
「はぁ?!なんでアタイがこんなガキを教えないといけないんだ!!」
ゼクターからは唐突に巻き込まれてびっくりしていた。
ゼクターには何も得がない上に、ゼクターは自分がオンリーに勝ちたいのである。
久しぶりに再開したオンリーは何処か前とは違っていた。それのせいか自分の予想を遥かに超える成長を遂げていた。
だから、ゼクターもより成長するために自分自身のメニューを変えようと試行錯誤しているのである。
つまり、他人を気にかける余裕なんてゼクターにはなかった。
「そうしたら、教えてくれるのですか?」
「嘘つかないね。ゼクターはヨーサの成長に必要な要素を持っているね。」
「おい!無理するな!」
勝手に話を進める二人にゼクターはキレかけていた。
「お願いします!」
速攻でゼクターに師事を乞おうとしたヨーサは誠心誠意頭を下げてお願いした。
「するか!ボケ!アタイは教えるのが苦手なんだ!」
「そこをなんとかお願いします!!私は強くなりたいんです!」
ゼクターの暴言に怯まず、ヨーサは頭を下げ続けた。
ヨーサは強くなるためにどんな攻めくにも耐える覚悟である。
「はぁ、分かった。」
「では!」
ゼクターが折れたと思って顔を上げたヨーサだった。
「お前がアタイと対等に戦えるほどになったら手ほどきしてやる。アタイが出来るのは実戦訓練だけだ。」
つまり、雑魚とは戦う意味がないとゼクターは考えていた。
「それで大丈夫です。必ずアタイは強くなります。」
「そうか、せいぜい頑張れ。」
ゼクターはそう言うと部屋から出て行った。
「まぁ、良かったね。ゼクターに断られたらヨーサを鍛えるにはすぐ限界が来ていたね。」
気は魔法以上に感覚が大事であるために他人が教えるには限界があった。
そこからは自分で進まないといけない。
その相手はゼクターが最適だとアルネは考えたのである。




