怒りと悲しみ
次から21時投稿に変更します。
「嘘だよな!!」
不良騎士風女は怒りの形相を浮かべながらオンリーに問い詰めた。
「本当ですよ。私はクラム君に引き分けた。」
「あぁ?クラム?」
不良騎士はオンリーに負かされた相手の名を聞くと少し冷静に周りが見え出したのかオンリーの周りに人がいることに気がついた。
「あっ!確かお前!カオリが気に入っていたガキ!なんでテメェが!此処にいる!」
「え?!」
不良騎士はクラムに見覚えがあるのかクラムの顔を見て叫んでいた。
クラムの方は覚えがないようで自分を見て叫ばれたことに驚いていた。
「そうか。テメェか。アタシの楽しみを奪ったのは!」
「はぁ?!」
不良騎士の怒りは一瞬にしてオンリーからクラムに総てうつり一気に切り掛かった。
すごい言い掛かりされていると感じたクラムはパーティで飲んだ酒の酔いもあり不良騎士からの最短距離での攻撃の反応が少し遅れてしまった。
「落ち着いてください。ゼクター。怒りのあまり軽い攻撃なっていますよ。」
オンリーは隣のクラムへの斬撃を素手で掴んでクラムを守った。オンリーには酒に酔うなんて事はないのだ。
「相変わらずの隙のない強さだ!だがな!アタシが前と同じだと思うなよ!」
「ほう。」
更に力を加えた不良騎士は前とは格段と上がった筋力にオンリーは感心していた。
自分の握力をものともせずにそのまま断ち切ろうとしようとしていた。
「ゼクター。強くなりましたね。でも、まだ弱い。」
「なっ!ぐは!」
オンリーは自分の為に強くなってくれたゼクターの事を嬉しくなったが、まだ、自分と戦うには力不足と言って掴んだ大剣ごとゼクターを投げ飛ばした。
まさか、鎧の中でも重量級のゼクターの鎧に加え男に負けない体格を持つ自分がより鍛え上げた自分を片手で投げ飛ばした事が予想外すぎて驚いていた。
「オンリー。お前………」
まだ、武道会から数日しか経ってないのに明らかに強くなっているオンリーにクラムは戦慄していた。
「クラム君。私はこれでも負けず嫌いなんです。私と引き分けて満足してるような私のライバルにはなれませんよ。」
「上等だ。」
オンリーからの挑発をクラムは素直に受け取り闘志を燃やした。
「アタシを無視するな!ご主人!アタシは!アンタを倒す為に!」
「ゼクター!どこ行ったのよ!」
ゼクターがオンリーへの想いをぶつけようとした。
その時に屋敷の外からゼクターを呼ぶ声が届いた。
「あっ!ここに居たよ!」
「ゼクター。勝手に行かないでよね。」
屋敷の外から二人の女性が現れた。
「あれ?クラム君?」
「カオリさん?!どうして?この街に?」
クラムは屋敷の敷地に入ってきた女性の一人のことを知っているのかこの街に来ていることに疑問を思っていた。
「ゼクターのご主人様がこの街に住んでいるって言ってたから。里帰りついでに私たちも旅行と依頼でこの街に来たの。」
オンリーはクラムの驚きと話の内容からこの人達は冒険者でゼクターの仲間であると共にその中でも定住型と言われる冒険者である事を推理した。
「邪魔すんじゃねぇよ!カオリ!ハナハ!これはアタシ達の問題だ!」
戦いの邪魔をしてきたと確信したゼクターは怒りのままに忠告した。
「こんな街中の屋敷で暴れるんじゃないわよ。ゼクター。」
「そうよ。他の子も宿で待っているんだから。帰るわよ。」
「やめろ!引っ張るな!アタシは!ご主人に話を聞かないといけないんだ!ご主人が負ける筈ねぇ!何かあった筈だ!」
二人に引っ張られながら駄々をこねるゼクターだったが、やっぱりオンリーに投げ飛ばされた時のダメージが思いの外大きかったのか力づくで引っ張られようとしていた。
「待ってください。ゼクターのお仲間達。」
「えっと。誰かしら?」
オンリーはゼクターの仲間を呼び止めた。
ゼクターの仲間からしたら誰だか分からない人に呼ばれて困惑していた。十中八九ゼクターの関係者である事は分かりはした。
「ゼクターの主人です。オンリーと言います。」
「貴方がゼクターのご主人様。へぇ、聞いていた通りの化け物ね。」
カオリと呼ばれた女性はオンリーを見て一発で底の見えない力を感じて戦慄していた。
ゼクターがいつも自慢していたから強いとは考えていたが自分が想像していた以上の怪物に内心ドキドキしていた。
「それでオンリー。私達に何か用かしら。」
「いえ、どうやら日頃私のゼクターがそちらにご迷惑をお掛けしてそうなので、どうでしょう?この街にいる間は私の屋敷に泊まって行きませんか?」
オンリーとしては純粋な想いからの申し出だったが、カオリ達からしたら仲間のゼクターの主人であってもすんなりと信用する事はできなかった。
「私が信用できないのであればここに居るクラムも貴方達が居る間は泊まるというのはどうでしょうか?」
「…………はぁ?!どういう事だよ!オンリー!」
自分は関係ないと傍観を決め込んでいたクラムはいきなり話に巻き込まれて驚いていた。
「いえ、あの方とは知り合いのようなので私が信用できないのであれば信用がおける人物がいれば良いだろうと思っただけですよ。」
「………………分かったわ。貴方の親切を受けましょう。」
「いいの?カオリ?」
リーダーであるカオリが素直に受け取ったのが意外なのかハナハは聞き返していた。
「宿代が意外と高くて悩んでいた事だし。願ったり叶ったりよ。」
それでもオンリーへの警戒を緩める気はなかった。
「それではお仲間を連れてきてください。その間に皆さんの宿泊の準備をしておくので。」




