実食!
「かんぱーい!!!」
「「「「「「「かんぱーい!!!!!」」」」」」」
此処はオンリーの屋敷。
今はいつもの静かさはなく、屋敷史上一番の騒がしさがあった。
「クラム君。」
「どうした?オンリー?全然盛り上がっていないな。」
皆が笑顔でいる中、オンリーだけはいつも通りの仏頂面だった。クラムには何故、オンリーが盛り上がっていないのか見当もつかなかった。
「確かに私はクラム君との同着優勝を祝うパーティに参加することは言ったけど、なんで私の家なんだい?」
「お前の屋敷が一番広いだろう。ワヤの屋敷は今、全部使えないらしいし。」
元々、ワヤの屋敷でする予定だったのだが、近場にある屋敷は全て使われていてパーティが開かないというまさかの事態に陥ってしまっていた。
しかし、ここでクラムに天啓が降りてきた。
オンリーの屋敷はデカかった。前に部屋が余っている等の話をしていたはずだ。
つまり、パーティが開ける。
「そういうことなら事前に教えてください。帰ってきたらパーティが開かれているなんてある意味ホラーです。」
オンリーは用事が終わってからパーティに参加する事をクラムに伝えていたので、用事が滞りなく終わったので一度屋敷戻って汗を流そうと帰ってきたらさっきの場面である。
「申し訳ありません。ご主人様。アミアが無理矢理入ってきたもので……………」
「そうにゃ。私らは被害者にゃ。」
手にグラスを持ちながら弁明しても意味がないように見えるが、それでも後日、オンリーにお仕置きされるのは嫌なので、弁明はする。
「オンリー。用事ってなんだったんだ?」
これ以上追及されたら、俺のせいにされると思ったクラムは話を変えることにした。
「まぁ、良いです。用事はこれです。」
オンリーは手に持っていたものをクラムに見せて言った。
「魚か?」
「おぉ!!ご主人!毒抜き出来たのかにゃ!!」
元毒魚から毒の匂いが全く無くなっているところからオンリーが毒抜きを成功させた事を理解した。
「これってフグか?」
「クラム?知っているのか?」
ワヤはクラムがこの魚を知っている事が意外で疑いの目を向けていた。
「あぁ、師匠が昔、何かの薬の調合の材料の一つとしてこれを見た事がある。」
確か、猛毒とアンライは言っていたと、クラムは思い返していた。
アンライでも完全な毒抜きは不可能だとも言ったはずだ。それを何でもないように言うオンリーはやっぱりおかしいと改めてクラムは思った。
「早く、実食しましょう。」
グツグツと言っている鍋を用意して切り身にしたフグをぶちこんでいた。
鍋の材料はフグのみであり、それ以外の旨味はゼロである。
「これがフグ。」
「ふっくらとしていますね。」
「上品な味ですね。」
味は概ね好評である。でも、世界一美味い珍味か聞かれると疑問が生まれる。
「ふ、ふ、ふ。フグの本領はここからよ。」
アミアは得意げに皆に言った。
「これが本当のフグが珍味である理由!」
アミアが見せたのはフグの精巣である。
白い精巣は極東の地では白子という名前で知られている。
「こ、これは!」
「口で溶ける。クリーミーさに!甘みが口の中に広がっている!」
「本当に……魚?」
魚では感じた事がない味と食感が皆の口を楽しませていた。
「ご主人様。このゲテモノは此処からが本当のゲテモノです。」
しかし、アンナはフグの毒抜きが出来た場合、実食したい食べ方があった。
「生食でございます。」
「は?」
「いやいやいや。ダメでしょう。生食は………」
様々な地でゲテモノを食してきたアミア達は生食でビビる事はなかったが、他の者は魚を生で食べる文化圏出身の者はいないためフグの切り身を薄切りにしたものを生食しようなんて言うアンナの発言を疑っていた。
「ふむ。鍋の時は違ったコリコリともしている食感。魚を生で食べようなんて斬新ですね。」
何かあっても自分で治せるオンリーは躊躇いもなくフグの薄切りを食べた。
「極東ではこれを刺身と言って一般的に知られている食べられ方らしいです。」
「刺身。今度色んなもので試しても良いかもしれませんね。」
生食にするだけでこれほど食材の印象が変わるのが面白くて、今度は豚肉で試そうかと危険な発想を思い浮かんでいるオンリーだった。
そんな事をして盛り上がっていたパーティに一つ爆音が響き渡ってきた。
「な、なんだ!!」
「はぁ、やっと帰ってきましたか。」
事態を把握できず慌てるクラム派と違って何が起きたのか見当がついていたオンリー派は落ち着いていた。
そうしているとパーティ会場にしていた部屋の扉が開いた。
「よお、ご主人。帰ってきたぜ。」
そこには不良騎士と言う言葉が似合いそうな女性が立っていた。
「我に負ける前に誰かに負けたって嘘だよな!ご主人様よ!!」
女性は怒っていた。
この女性がオンリーの奴隷になると決めたのもオンリーを倒したいが為だった。それが他の者に取られたと聞いて怒りあまり屋敷の門に怒りをぶつけたのである。




