ぼオンリー対クラム 決着
「このっ!」
かなりいいものを腹にを喰らった瞬間、クラムは反撃しようとした。
しかし、その攻撃はオンリーに当たることなく空を切った。
そのまま、クラムはオンリーと距離を取らずに接近戦を選んだ。
距離と時間を少しでも与えたら、さっきの様な攻撃が飛んでくる為、距離を取るのは敗北する事を反射的にクラムは理解した。
「くそ!一歩も動かずに避けるなんて身体能力も上がってやがる。」
伝説の騎士も確かにさっきまで致命傷になっていたドラゴンの攻撃を受けても平気だったり、目で追うことができなかった敵の攻撃を捉える事を出来たなど、高威力の攻撃だけでなく身体能力も竜本を読んだだけで上がっている事が書かれていた事を思い出した。
「このままじゃ。ジリ貧です。クラム。」
「あぁ、さっさと決着をつけないとこの霊衣も脱げてしまう。」
この重ね着に慣れてきた精霊達もクラムを急かしていた。クラムの体の限界も魔力などの力の限界も戦闘に集中するクラムより精霊達の方が理解していた。
「そうは言ってもオンリーはまだあれから一歩も動いていないんだ。」
クラムは精霊達と会話しながらオンリーに攻撃を当てようとブースターで急に攻撃の方向を変えたりと工夫や奇襲を重ねて攻撃をしているが、未だにオンリーに攻撃を当てることもその場から動かす事も出来ていなかった。
「クラム。少し距離を取れ。流石に距離を詰めすぎだ。ラシア母ちゃんを纏ったアイツはいつでも光線を出せるんだ。」
ファイは死角を多く作るとその分光線を受ける危険が増す事を危惧していた。
「そうです。あの凶刃も凄まじいですが、ラシア母様の光線も脅威である事を忘れたらいけません。」
「あぁ、分かっ…………」
クラムも精霊達の注意から自分が思っていたよりさっきの攻撃を警戒と恐怖していた事を自覚してオンリーの全体を見えるように後退しようとした。
その時、違和感を感じた。
何故、オンリーは自分達が気づくより先に光線を死角から当てなかったのか?そもそも、最初のカウンター以降オンリーは一切攻撃してこなかった。
「まさか……」
「お、おい!なんでさっきより近づいているんだよ!」
「そうです!それだけ近づいたら今のクラムでも光線を避けるのは無理です!」
クラムはオンリーから距離を取るどころかさっきより距離を詰めたのだ。
正にゼロ距離手を伸ばさなくてもお互いの身体に触れる事ができるくらいに近かった。
「大丈夫だ。オンリーは今、光線を使えない。そうだろう。オンリー。」
「気がついてしまいましたか。」
オンリーはクラムが自分の状態を予想より早く気がついた事にクラムの成長を感じていた。
前までのクラムなら紙一重に避けるオンリーを見て自分が舐められていると感じて頭に血が昇ってオンリーに攻撃を当てようと躍起になっていただろう。
そして、自分より冷静な精霊のアドバイスを素直に認めて行動に移した事だろう。
「お前は明らかに攻撃するタイミングを逃していた。オンリーが攻撃しなくてもラシアが光線を打ってくる筈だ。それなのにお前達は避けに徹していた。まるで一撃必殺のタイミングを狙っている様にな。」
オンリーが避けたとしても自分のアータによる風の防御のようにラシアが光線を打つ事ができる筈だとクラムは考えた。
そして、自分もアータの風の防御が機能しなかった時があった。
「ラシアは今、お前の延命治療しているんだろう。その潰した心臓の代わりにさ。」
「正解です。瀕死じゃないと使えませんから。」
オンリーは竜本を読めないではなく、使えないと言った。
それがクラムの仮説が当たっている事を証明した。
「やっぱり、使えないんだな。読めないではなく……」
「そうです。もう竜本の解読は済んでいます。」
オンリーは竜本を完読していた。
竜本を取り出したなら竜本を閉じさせたなら竜の力を使う事を出来ないと錯覚させて隙が出来た瞬間に一撃をお見舞いするつもりだった。
「一歩も動かなかったのも………」
「そうだ。動かないではなく動けないが正確だった事だ。」
精霊達もオンリーの状態を理解し、戦慄していた。
半死半生の状態で強化されていたとしても常人には真似することなんて不可能な芸当だった。
「全く、お前の方が化け物に近付いているじゃないか。」
「化け物達ならこんな事しなくても私達ぐらいの芸当出来るでしょう。」
二人ともよく知る化け物の姿と扱かれた記憶を思い出して苦笑していた。
「さあ、これが正真正銘最後の攻撃です。ラシアも限界が近いらしいですからね。」
「あぁ、そうだな。」
二人ともこの先の事なんて考えない全身全霊の力を解放した。
「「さぁ、死ぬなよ!」」
二人の攻撃は一瞬にして闘技場の結界を破壊して観客も巻き込みそうになっていた。
「全く、あの二人の弟子らしいですね。後始末を考えて下さい。」
その衝撃が観客を襲う事はなかった。
そして、徐々に光と煙が消えたのち観客はこの武闘会を目にした。
「しょ!勝者は!!!!」




