オンリー対クラム 伝説の真実
「竜本なんて出してきてどうするんだ。持ち主ではないお前では宝の持ち腐れだろ。」
竜本は生み出した竜人にしか読む事ができない代物であり、血縁者であっても読む事は不可能である。
よって、オンリーが使えるはずがないのだ。
「勿論、今のままじゃ使えない。でもある事をすれば読める事を発見した。」
「ある事?」
幾多の人間が竜本を解読しようとしたが、未だ誰一人として読む事が出来ていない本をオンリーは読めると言った。
オンリーの実力をよく知るクラムでも半信半疑だった。
「クラム君はさっき死の淵に立つ事によってチャンスが生まれるって言いましたね。」
「あぁ、それがどうした。」
「それは少し間違っています。」
「なに?!」
クラムは自分の聡明な師匠の考えに対して疑った事は一度もなかった。
だか、オンリーはそんな師匠の考えは間違いと言った瞬間、自分の胸を手で刺し心臓を潰した。
「ぐごぼっ!正解は見ようになるが百点満点の答えです。」
「そんな事より!早く治療を!」
オンリーの奇行に流石のクラムもパニック状態に陥っていた。
外野の教師陣や観客も騒然としていた。
「必要ありません。自分で治せます。それより、話の続きをしましょう。」
オンリーは周りの事は気にせずに話し始めた。
その姿はまさに異様。胸から血が…………流れてなかった。
普通なら吹き出す筈の血が一切流れていなかった。
「まず、生者と死者では見えているものが違います。それは自分自身にしても違うのです。死を身近に感じて死の淵を経験する事で人がまるで急激に強くなる現象があります。」
さっきのクラムの事を言っていた。漫画でもよくあるあの展開である。
「生者の視点が50%とすると、死者の視点を経験する事によって残りの50%を見る事ができるのです。」
それによって人は強くなる。
死とは可能性の塊である。生物に等しくチャンスがあるように死があるのだ。
「そして、その視点はこの本を読む視力を手に入れられる。」
竜本の解読方法は死の視点による竜本のセキュリティの回避である。
セキュリティの対象に死者は含まれていなかった。
「これは歴史が証明していた。竜本を読んだ人は伝説上ですが、過去にいました。」
「英雄カエサルことか。」
クラムも男の子。英雄譚は読書があまり好きではないクラムでも読んでいた。
英雄カエサル
竜人と友達になり、共に戦いながら死を乗り越え困難に立ち向かう王道冒険英雄譚である。
「英雄ブッタゴ、第二章で魔竜コロスケとの戦いで死に瀕した二人は相棒竜人であるトガの竜本が目に入った。共に過ごす二人には見慣れた竜本。それが今のブッタゴにはいつもとは違う本に見えた。気絶したトガの隣に置いてある竜本を手に取るとあら不思議読めるではないか。その力を使い、魔竜コロスケを倒す事が出来たと言う伝説。巷ではトガは気絶なんかせず最後まで二人で勝ったのがいつしかブッタゴが一人で倒した事になった為の辻褄合わせだと言われている。」
「でも、もしもそれが本当なら…………」
「そうです。そして、それは検証された。」
オンリーは有名なこの伝説に着目して他のメジャーからマイナーの伝説を精査したところ、大概の伝説では竜本を見たものは瀕死の重体だった。
有名なブッタゴを元にしているなら説明も出来るが、それより昔の伝説や全く土地が違うところの伝説でもこの事が書かれていた。
「私は前々から考えていたこの仮説を立証したいと考えていました。」
「それでお前は長年の仮説を立証したんだな。」
「えぇ、しました。幸運にも奴隷のオークションに出品されていたんです。」
「また、奴隷か。そういえばあいつの親友も人里に降りてきて消息不明になったと言う情報が流れてきたから。探してくれと言っていたけど、まさかな…………」と確信にも近い勘がそう言っていた。
多分違うが、一応、友人である竜人に手紙を出しておくかとクラムは現実逃避をしていた。
「まぁ、一回試し死にした所、読めたので使ったところ近隣の山々が無くなったので人に使う事はないと思っていたのですが、今のクラム君には大丈夫でしょう。」
「殺す気か?!殺す気なんだろう!あぁ!耐えてやるさ!そしてお前のその澄ました顔にこの拳を叩き込んでやる!!」
オンリーは竜本を開き、本を読み上げた。
「いきます。これが竜の力です。竜刀堕姫」
「バカか!お前ええええええええええ!!!!!」
思っていたより強く、大きい力の斬撃がクラムに向かっ一瞬で飛んできた。
強化された動体視力だから認識できたが素の状態では斬られた事もわかっていないまま死んでいただろう事を理解した。
「ぐうううううううううう!!!!おおおおおお!!!!」
その凄まじい刃を真剣白刃取りの応用で掴み耐えていた。
ブースター全開、風の晒しで軌道をずらそうにもびくともしていなかった。
「負けるか!!!!おりゃああああ!!!!!!!!」
「おお、凄いですね。」
なんとか上空に逸らしたクラムは強固な結界が豆腐のように柔く斬られていた。
「天が割れた。」
上空に行った刃は雲を割り空を割った。
「さて、次行きますよ。」
「ふざけんな!!!」
クラムはこれ以上耐えれないと考えたので発動される前にオンリーに飛びかかった。
それを読んでいたオンリーは一歩も動かずにカウンターを当てた。




