オンリー対クラム 決意と覚悟
次の投稿は4月4日に投稿します。
4月からは4倍数日に投稿します。
「くっ!油断した!だが、聖女護身術は対策済みだ!!」
相手の聖力を利用する技である聖女護身術はその特性上、相手の聖力が利用出来なければ威力を大幅に下がる弱点ある。
「それがどうしました?私には関係ない。」
「強い!どうして?!」
霊衣の重ね着により力も増している筈のクラムの力でもオンリーの聖縛を破る事は出来なかった。
クラムの聖力はゼロに等しいと言うのに。
「そこら辺の雑魚と同じにしないでください。私は自分一人の力で拘束出来ます。」
確かにオンリーの力なら他の使い手より強力に作り出す事は可能だろう。そこはクラムも納得していたが、この力は一人で出しているにしては出力がおかしかった。
「解せないと思っていますね。確かにただ単に聖力を込めただけならこの強度を出す事は不可能です。でも、クラム君が使っている聖力による常時身体強化は誰のアイデアを元に編み出したと思っているんですか?」
「!」
そこでクラムは思い出した自分が編み出した聖女護身術対策は元々、オンリーの発想を元に作り出した。
そして、オンリーとクラムの決定的な想像の違いは臓器の位置である。
クラムは聖臓と魔臓を肺に見立てて、この方法を編み出した。オンリーは肺ではなくて胃。つまり、クラムが肺から全身に酸素が行き渡るように想像して聖力を身体強化に利用した様にオンリーも似た事が出来るとしたら………
「その通りです。クラム君が考えている通り、私は別の力を消化して別の力に還元する。タンパク質をアミノ酸に変えるように、魔力を聖聖力に、聖力を魔力に還元する事が出来ます。」
オンリーは一人で実質二人分の力の行使が可能なのである。
それなら、この強度も納得がいく。
「ふぅ、すぅ、ふぅ、すぅ、ふん!」
「おっ、あれを破るなんて凄いですね。それにしても面白いことをするね。」
クラムはより力を入れる為、聖力を使った。
元からあったものでは足りない。だから、クラムは空気中の聖力を自分に取り入れた。
聖力自体は通常空気中にはないが、オンリーの聖縛から微量ながら出る聖力を空気に混ぜ込む事で取り入れることに成功した。
「お前達が聖女護身術を使えるなら他人が他人の聖力を使うのは原理的に可能と言う証明。なら、俺がイメージで補完する形で聖力を取り込む事も可能だろう。」
「えぇ、可能です。ただ、それはまだクラム君には過ぎた力です。」
「やっぱりバレてるか………」
クラムは平静を装ってはいたが、体内はズタズタになっていた。
「他者の力を扱うのは非常に難しいのです。私はともかく他の者は相当苦労したと聞きます。その様子を見るに、クラム君は一発成功はできなかった様ですね。」
そんな扱いが難しい力をクラムは体内に入れて身体強化に使った。しかも、細胞一つ一つに入れる形で強化した。
アレルギー反応のように自分の力と他者の力が反発を起こして細胞を壊してしまっているのだ。
「アータが突貫工事のように急いで応急処置しているのだろうが、クラム君の限界も近いでしょう。」
オンリーの言った通り、クラムの身体は一気に限界が迫ってきていた。
「だからって容赦はしません。確実に仕留めていきます。」
「ぐっ、少しは躊躇しろ!」
連続で発動している。聖縛を避けるのに必死でオンリーに近づくこともできていなかった。
次、捕まればオンリーの勝ちが確定してしまう。もうさっきの様な脱出方法を使う事は出来なかった。
「いつまで待ちますかね。」
「速い上に手数もリリスより圧倒的に上。ラッカアに迫る精度なんて反則だろう。」
正真正銘、これがオンリーの本気。
それが己に使われている現状にクラムは喜びすら感じていた。
自分の成長を実感していた。
「でも、それで満足していたら雑魚のまま、負け犬の思考。このオンリーに勝ってこそ、俺は先に進める!」
「?!」
クラムは避ける事をやめた。
聖縛を身に受けながら、聖力を吸収し始めていた。
「オンリー!クラムを止めて!」
「馬鹿!やめろ!クラム!」
クラムの精霊達がクラムの強行を止めようとオンリーにも願って止めようとしている。その精霊の悲痛な叫びが霊衣の下でクラムの身体がどうなっているのかが分かった。
今、クラムがしている事は自殺行為に匹敵するものである。
「だ、だいじょうぶだ。止めんな。あと、あとすこしなんだ。」
目から血涙を流しながら、己の精霊の叫びを強制的に制止した。
「死ぬ気か、クラム君。」
「バカ、死ぬかよ。まだ、お前に勝ってないんだよ。」
「そうか、なら引導を渡す。」
クラムが何をしたいのか理解をしたが、その為の時間を無駄に与えるつもりはなかった。
それが本気で相手すると言う事だった。
オンリーがトドメの聖断をクラムに放って直撃した。
「はっ、容赦ねぇな。でも、間に合った。」
クラムはそれを受けても倒れる事はなかった。
身体がズタズタに斬られても集中を切らせる事はなかった。
「この土壇場で成功させますか。」
「師匠が言っていた。死の淵に立つ瞬間に成長のチャンスは訪れる。そして、掴んだぞ!チャンスをよ!」
クラムは聖縛に使われた全ての聖力を吸収した。
そして、壊れた体を無理矢理修復し出した。
「なるほど、また一歩、人外に近づきましたか。」
オンリーは悲しそうに言った。
オンリーは師匠アンライの言葉を思い出していた。
覚悟が足りないのはお前だと、こちらに来い。恐れるな。必ずお前を置いて行かない存在はお前の目の前に現れる。
「流石、師匠というところですか。なら、私も覚悟を決めましょう。」
オンリーは懐からある本を取り出した。
「それは………竜本?!」
クラムは友人の竜人が持っていた本に似ている本をオンリーが持っていることに驚愕していた。
それは竜人しか持っていないものだったからだ。
「クラム君、あなたが化け物に近づいたなら、私にも近づきましょう。それが………」
オンリーはその後の言葉は言わなかった。




