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オンリー対クラム 失望と期待

 先週は体調崩して投稿が遅くなったり、出来なかったりしましたが、今週からまた定期投稿を再開します。

 

「霊衣………やっぱりオンリーも出来るか………」


「当然です。クラム君に出来ることが私に出来ないとでも思いましたか?」


 ラシアを纏ったオンリーが心外だと言いたそうに言った。


「それにしても無茶しますね。」


 クラムの重ね着した姿は正に不格好であった。無理矢理合わせた感がありありとしている。

 ドレスと鎧が合うわけがないのである。


「お前に、勝てればそれで良い!!」


 風と炎を合わせたブースターによって推進力はファイ単体を纏った時に比ではなかった。


「単純すぎます。」


「なっ!ぐばっ!」


 難なく躱されたクラムは下から来るオンリーの蹴りを避けることができなかった。


「出力は圧倒的に上がりましたが、クラム君がそれに振り回されていたら宝の持ち腐れ。意味はありません。」


 単体で戦った時の方が脅威だったとオンリーは言っていた。

 クラムも自分が今の力に慣れていない事は分かっていた。元々、この重ね着のアイデアもアンライが机上の空論として書いた論文を元にクラムが即興で考えたものである。

 つまり、試作機の試作機のマシーンで完成品のマシーンに挑んでいる様なものである。


「それでも………これでなきゃお前に勝てない!一矢報いるだけではダメなんだ!!俺が目指すのは勝利への道だけだ!!!」


「今度は煙幕ですか。」


 霧を使った視覚封じの応用で火、水、風により短期間で結界全体を包むだけの煙を蔓延させた。


「同じ手は喰らいませんよ。」


「あぶなっ!くっ!」


 オンリーの指から発射される光線は的確にクラムをへと放たれていた。

 クラムはそれを辛うじて避けるが、避ける力が強すぎて態勢を保つのも一苦労していた。


「クラム君の精霊達も霊衣を維持するのが精一杯でサポートが出来ていない様ですね。」


 今の攻撃はアータ単体の時だったらアータが晒したり防いだりするのが容易な威力の速いだけの光線だった。それなのにクラムは避けた。

 その行動でオンリーはクラムの精霊2体は霊衣をどうにか維持するのがやっとだと言う事に気がついた。


「くそっ!当たりさえすれば!」


「………………クラム君。貴方は何か勘違いしている様だ。」


「なにっ!」


 次から次へと来るクラムの猛攻を難なく避けるオンリーに悪態を付くクラムだったが、オンリーはそれを聞いて避けるのをやめてクラムの攻撃を真正面から受けた。

 そして、ダメージはほぼ無かった。


「当たったとしてもこんな出力だけ上げた攻撃を受け流すなんて訳ありません。」


 技術も何もないただの蹴りが通じる程オンリーは甘くなかった。


「今の私は貴方と同じように霊衣を纏っている。それもクラム君より完成度は上です。当然生身より防御力も上に決まっているでしょう。」


 聞き分けのない子供に言い聞かせる様にオンリーはクラムに言った。


「あまり私を失望させないでください!」


「っ!がっ!」


 オンリーの蹴りはクラムの防御を簡単に弾きクラムの鳩尾に突き刺さった。


「当然、力も増しています。」


 オンリーは泣きそうな顔で言っている。

 クラムに対してのの失望の悲しさからオンリーは何年、十何年ぶりに泣きそうになっていた。


「おい、何泣きそうになっているんだ………」


 そんなオンリーを見てクラムは驚愕している。

 オンリーのクラムへの期待はクラムが思っているより大きく重かった。

 クラムは驚愕と共に怒りが蹴られた腹の底から湧き上がっていた。


「何!もう勝った気でいるんだ!何!勝手に期待して失望してるんだ!期待したなら!そのまま期待してろ!俺はそんなお前の想像を超えてやる!!!」


「!」


 この時、初めてオンリーはクラムへの期待という仮初を取り払われた。

 そして、人の可能性は死に直面すると覚醒することを知った。


「混ざっている。」


 さっきまで無理矢理ドレスと鎧を着込んでいる様だった格好が変わってきている。


「お前らっ!喧嘩するなっ!今は!今だけは!俺の為にっ!仲良くなれ!!これは!命令だ!!!」


 互いに本能と言ってもいいくらいに反発している2体を力づくでねじ伏せている。

 それにより、徐々に混ざってきているのだ。


「お人好しかと思っていたけど意外と暴君なんだね。クラム君。」


「はっ!それもお前が勝手に想像した俺だろう!俺は元々自分勝手さ。でも、そうだな。お前に勝てるなら暴君だろうが!外道だろうが!なってやるよ!」


 クラムが誰より負けないところは負けず嫌いなところだった。

 勝つ。それがクラムにとってのこの世で最も楽しく生きる希望だった。


「これが俺の全力だ!!!」


 クラムの装いは鎧がドレスに混ざり合った姿になった。

 その姿はまるで…………


「姫騎士ですね。」


「俺は男だ。姫なんて言うな。せめて王騎士とでも言え!」


「それは語呂が悪いでしょう。」


 足元のブースターで推進力を上げたクラムがオンリーに突撃してきた。


「また、単純な攻撃ですか?」


「そんなわけ無いだろう!!」


 最初と同じ様な展開になっていたクラムだったが、今度はオンリーの蹴りを避けて追撃してきた。


「今度はどうですか?」


「聞くかっ!こんなの!」


 オンリーの光線も難なく対処していた。

 どうやらアータの防御が復活した様だ。


「そうですか。でも…………まだ足りない。」


「なっ!」


 一瞬にして高速で動くクラムに追いついてオンリーは殴った。


「これで霊衣の条件が互角になっただけです。クラム君と私の差が埋まっても超えた訳ではない。さぁ、どうします?」


 霊衣の重ね着をこの瞬間ものにしたクラムはオンリーにこの一時だけはオンリーに追いついた。

 今度は嬉しそうにオンリーはクラムに質問を投げかけた


「なんだ?いきなり上機嫌じゃないか?そんな上から目線で笑うのも今日が最後だ。俺はお前を超える男だ!!っ!」


 更に、力を増幅させるクラムにオンリーはある仕掛けを発動させた。


「聖女捕縛術、聖縛。言ったはずです。格下にはもう使わない。同格から使うと。」


 クラムの成長によってオンリーは聖女捕縛術を解禁した。

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