ダンジョンとは
「ご主人様、こちらが宝箱の成果です。」
「わかった。カナィ、しまっといてくれ。ギルドで鑑定する。」
「了解。主。」
私は今、ダンジョンに潜っている。
学校で免除申請は通ったが、魔法学校での禁書の無断使用がバレていて、それを黙っておく代わりにこのダンジョンの探索清掃を頼まれた。
探索清掃とは、何かしらの原因でダンジョン内の魔物が大量発生する状況になった時に魔物の数を正常に戻す仕事である。
今回は一年生の生徒が入学試験でやり過ぎてしまったのが原因での大量発生である。
ダンジョンの通常の魔物大量発生には定期と原因の二つがあり、定期はダンジョンによって変わるが、ある一定の時期に来ると魔物が通常の数より大幅に多くなるのである。
今回場合は原因であり、実力のある初心者冒険者がよくやってしまうものである。
因みに、これをしてしまうと多額の賠償を払うかギルドへの無償奉仕を最低二ヶ月しないといけない為、ダンジョンの探索にはダンジョンに出現する魔物のランクを軽く倒せる実力が必要なのである。
そもそも、ダンジョン自体が巨大な魔物であり、その土地に寄生する寄生魔物と言われる魔物の一種である。
ダンジョンは、その土地の記憶を読み取りそこに住む魔物を産み出す。稀にその土地には存在しない。もしくは現代には存在しない魔物を産み出すダンジョンもあるが、何故生み出せるのかは分かっていない。
いくつかの説はあるが、立証は出来ないので説止まりである。
ダンジョンは魔物以外にも宝箱を産み出すが、これも何故産み出すかは分かっていない。人間を誘き寄せる為の罠と言う説が昔は定説だったが、今では完全に否定されている。
理由として、ダンジョンの宝箱からは例外なく人間しか欲さない物しか出てこないからである。
人間の生息範囲から近い場所の土地に産まれたダンジョンだけが、この性質を持つのならこの説の信憑性が上がるのだが、この性質は人間が住んでいない秘境のダンジョンにも見られる性質である。
ここから、この宝箱は人間を誘き寄せる為の物では無い事が分かる。
それに、人間を誘き寄せる必要がダンジョンにはないのである。この説が定説だった頃はダンジョンの分類は食人魔物であった。
この分類は人を好んで食す魔物を当てはめるものだったが、ダンジョンしか分類されておらず、ダンジョンがその後の研究で寄生魔物に属する魔物である事が分かってからはこの分類は事実上消滅する事になった。
そして、ダンジョンが寄生魔物とわかった事によってこの説も間違いである事がわかった。
土地に寄生する性質上、その他からの栄養供給は必要ではない上にダンジョンでの死体消失はダンジョンがそのエネルギーを吸収しているのではなく、土地に対してより豊かになる様に死体をより効率的に土地が吸収できるかたちにしているだけである事が分かった。
結果、何故ダンジョン内に宝箱が出現するのかは未だ不明であり、新たな説すら生まれていない。
最も謎多き魔物、それがダンジョンなのである。
「ご主人様、最深部まで到着しました。」
「わかった。」
そして、ダンジョンには階層があり、階層ごとに登るもしくは降る階段がある。
階層には一定の階層ごとに階層主と言われるボス魔物がおり、それを倒さないと、階段に辿りつけないわけではない。
階層主自体は守護者ではなく、どちらかと言うと警備員であり、階層主に見つからない様に隠れて移動出来れば階段にたどり着く事は可能であるが、ギルドはこれをオオスメしていない。
階層主が出た階層の後の魔物レベルが前の階層より格段に上がる為、そこの階層の階層主を倒せない者では次の階層で生き残って帰れる可能性は低い為である。
その為、ギルドでは階層主である階層より下はその階層主を倒さない限り、降りない事を原則にしている。
「呆気ない。」
「仕方ありません。所詮学生レベルが潜るダンジョンです。私たちの相手になるわけがありません。」
最深部の階層主はそのダンジョンのラスボス的位置にいる魔物なのだが、あの子達にはこのダンジョンではそんな事関係なかったようだ。
「主、終わった。」
「そうですか、では帰ります。言わなくても分かっていると思いますが、油断はしないようにお願いしますね。」
「「はい!」」