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オンリー対クラム 母子

「さぁ!始まりました!!皆様お待ちかねの武闘会決勝戦の開幕です!!!」


「「「「わぁァァァァァァァァ!!!!!!」」」」


 会場は今までにないくらいヒートアップしていた。


「それでは選手の入場です!!!」


 司会の掛け声に合わせてクラムとオンリーがそれぞれの入場ゲートから出てきた。


「さぁ!今!試合開始の鐘が鳴った!!!」


 いつも通り選手無視の試合合図(仮)の鐘が鳴った。


「さぁ、始めよう。オンリー。お前も俺と話す事は無いだろう。」


 クラムはオンリーに今の力を試したくてウズウズしていた。


「そうですね。では、さっさと始めましょう。」


 オンリーとしては会話をしたかったのだが、相手が望んでいないのにするほどオンリーは会話が好きと言うわけではなかった。


「ちょっと待って!」


 そんな二人にストップが掛かった。


「アータ、どうした?」


 戦うために召喚したクラムの精霊のアータが慌ててクラムを止めた。


「ごめんね。クラム。すぐ終わらすから。」


 どうやらアータはオンリーに話があるようだ。


「どうしたんですか?クラムの精霊さん?」


 オンリーとしてはアータとはそんな関わりがないため何を話されるのかよく分からなかった。


「オンリー、アンタ準決勝で精霊を召喚したらしいじゃない。」


「そうですが?何か?」


 オンリーは準決勝で精霊を召喚して戦った。

 オンリーが精霊持ちと言う事を知らない人も多いので会場はそれはそれは驚きに満ちていたらしい。

 クラムはその間、医務室で寝ていたので直接見ていないのだが、ガリー達が見ていたので感想を聞いていた。


「オンリー、精霊を出しなさい。」


「なぜ?」


 オンリーは別に今回のクラム戦で己の精霊を出すつもりはなかった。準決勝もたまたま己の精霊が機嫌が良すぎて頭の中をうるさく叫ぶ為、外に出しただけである。


「…………もしかして知り合いですか?」


「そうなのか?アータ?」


 そこでオンリーはある仮説を立てた。

 オンリーの精霊がアータの知り合いである。そして、様子が変である可能性があるから。知りたいと言うものである。

 クラムもオンリーに言われてそうなんでは無いのかと思った。


「分からない。でも、ガリーが言っていた特徴がそっくりなのよ。」


 精霊達はこちらに実態はない。

 本体は精霊界と言う異世界にありこちらからの干渉は不可能である。

 精霊持ちはたまたま自分と相性が良い精霊と交信と力の交換が出来る者の事である。だから、通常の精霊持ちは交信して精霊が精霊界と繋げてくれないと召喚できない。


「まぁ、いいですよ。来なさい。ラシア。」


「っ!」


 オンリーが交信すると、圧倒的な霊力の奔流がオンリーを中心に渦巻いた。


「なんだ?これは?」


 普通の精霊だとこんな霊力垂れ流しな演習をしながら娼館されない。明らかに異常事態だある。


「ヒック!ア〜オンリ〜くん?!どうしたの〜最近よく召喚するね〜」


 そこに居たのは酔っ払った精霊だった。いっえ〜いと言いながらオンリーに抱きついている。

 クラムはその事を驚きはしなかった。準決勝でも酔っていたようだ聞いていたからだ。

 でも、直で見て気付いた。自身の精霊より高位精霊だと言う事に。


「あっ!もしかして〜そこにいるのは〜…………アータちゃん?!なんで人間界にいるの???!!」


 酔っ払った精霊は予想通りアータの知り合いだった。そして、こんなだらしない姿を見せたくなかったのか。明らかに酔いが一気に覚めてきているのが見てとれた。


「お母様。どうしてそんな姿に………………………」


 アータもショックが大きいらしく動揺していた。

 それより………


「えっ!お母さん!」 


「これは珍しいですね。」


 クラムはアータの言葉に驚愕していた。

 精霊にも親がいる事は知っていたが、人間界で会ったなんて事例を聞いた事はなかった。


「どうしたんですか!!?その姿は?!いつもの凛としたお母様はどうしたんですか??!」


「そ、それは………」


 娘にここまで言われてオンリーの精霊もなんで言ったらいいか?戸惑っていた。


「……………ゴクゴク!プッハッ!」


 そして、娘への説明を逃げて酒に頼ってしまった。


「お、お母様??????」


 そんな母親の姿にアータは困惑していた。自分が見てきた母の姿はそこに無かった。


「仕方ないでしょう。私だって疲れるのよ。毎日毎日、仕事、仕事で雁字搦めたまの息抜きもない!そんな時にオンリー君に呼ばれたのよ。」


 精霊界でも仕事があるようで疲れたサラリーマンのような事を言っている。

 精霊界では精霊持ちに呼ばれた時はそっちが優先になるので簡単に言えば休めるのである。


「凄いのよ〜オンリ〜くんの魔力は〜最高級のワインのような味わいにビールの様な喉越しの良さ。様々な酒の長所をかき集めたような最高な魔力なのよ〜!!」


 酔いが回ってきたのか段々と間延びした話し方になっていた。


「直接!魔力を飲んだの!!お母様!」


 精霊にとって魔力はアルコール70%以上の酒と変わらない。

 人間界に滞在と己の成長に最適な力でもあるが、取り過ぎるのは身体に悪いのである。だから、通常は精霊界にある水と薄めて飲むのである。


「危険です!今すぐ辞めてください!」


 精霊としての本能が言っていたあの魔力は危険だと、アンコール100%に限りなく近い超危ない代物だ。


「大丈夫よ。そんな事分かっているわ。私を誰だと思っているの。」


「お母様?」


 さっきの酔い方と明らかに様子がおかしかった。


「わたしは女王よ。この程度で身体がダメになるわけないでしょう!!」


「避けろ!アータ!」


 ラシアから放たれた閃光のような攻撃をアータとクラムはギリギリ避けた。


「危ねぇ。いきなり何するんだ!」


 クラムはアータもギリギリ避けた事を確認したらラシアに抗議した。


「だって〜私の楽しい楽しいお酒の時間を邪魔する者は誰だって許さない!即!処刑!」


「っ!」


 また、閃光のような攻撃が飛んできた。それも今度は複数。


「これは避けられねぇ!」


 回避不能だと判断するとクラムは防御しようとした。


「はぁ、だから貴方を呼び出したくないんですよ。」


 その攻撃をオンリーが消した。


「は?」


 クラムにはオンリーが何をしたのか分からなかった。

 自分達に当たりそうな攻撃が突然消えたようにしか見えなかった。


「ちょっと〜何するのよ〜オンリ〜君〜」


 そんなオンリーの行動にラシアは抗議していた。


「少しは主人の言う事を聞いてください。不意打ちで倒しても楽しくない。」


「………分かったわよ。」


 オンリーが不機嫌でありこれ以上やったら本気でブチギレそうな事を察知したラシアは素直に言う事を聞いた。


「大丈夫か?アータ。………アータ?」


「お母様…………どうして………」


 ラシアの本気の殺意のある攻撃にアータは相当のショックだったようだ。


「しっかりしろ!アータ!今は試合中だぞ!」


「クラム。」


 クラムの喝にアータがやっと反応した。


「今は試合に集中してくれ。話ならその後にしたらいいだろう。それに今の様子じゃ話も無理そうだ。」


 ラシアの酔い具合からして冷静な話は不可能だと判断したクラムはアータにその事を伝えて説得した。


「………分かったわよ。クラム。」


 アータはそう言うと霊衣に変化して戦闘に集中することを選んだ。これもある意味現実逃避である。


「ありがとう、アータ。」


 その事をクラムは素直に感謝した。


「さぁ、オンリー始めようか。」


「えぇ、ようやくですね。」

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