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慈愛

「う、うん?」


 ワヤは見たことがあるようなないようなベッドから起き上がった。


「おっ!起きたか?!」


「うわっ!っいた!」


 ヨーサがいきなり視界に入ってきたのに身体をのけ反ろうとしたら、全身に痛みが入った。


「安静にしてください。ワヤさん、まだ傷が完全には癒えてないですから。」


「ガリー?ヨーサ?………そうか、負けたのね。わたし。」


 医務室に二人がいる事に疑問に思ったが、試合での記憶を呼び起こすと自分がクラムに負けたことを思い出した。


「あぁ、だが!良い試合だった!」


「そうです!あのクラムさんをあそこまで追い込んだんです!」


 二人が負けたことに落ち込むワヤを励まそうしていた。


「でも、負けは負けよ。結局は大番狂せは起きなかったわ。」


 ワヤは悔しくて涙を堪えて言った。


「勝てたのよ。あいつに!クラムに!あともう少しで勝てたのよ!でも!届かなかった!最後の最後で私は倒しきれなかったのよ!!」


 思考が万全に戻っている今なら理解できた。

 自分がどれだけクラムを追い込むことが出来ていたのか、どうすれば勝つことが出来たのか、よく理解することが出来ていた。

 別に特別な能力が必要ではない。あと少し総合的な力があれば勝ていたのだ。


「今度こそ勝つわ!来年こそあいつに必ず勝つわ!」


「アタシたちのことも忘れるなよ。」


「そうです。あの二人を勝ちたい気持ちは私達も同じです。」


「二人とも………」


 三人は改めて決意した。

 化け物に近づきつつあるクラムとオンリーに必ず勝ってみせる。

 そう心に刻んだ。


「おぉ、若い者同士。熱いね。」


「「「っ!」」」


 いつからそこに居たのか分からないが、窓側に座っているラッカアの姿がそこにあった。


「いつから居たのよ。」


「?さっきから居たが?」


 不思議なことを聞く子供に話しかけるようにラッカアは言った。


「全然気づかなかった。」


「カーラ気がついてた?」


「いや、全く。逆に今も見づらい。」


 ガリーは生き物の気配に敏感な精霊であるカーラに聞いても、カーラも気づいていないどころか、敏感が故に今も気配を感じれずにラッカアの姿が風景に溶け込んで分かりづらくなっていた。


「なんでいるの?」


「おいおい、冷たいじゃないか?見舞いに来てやったんだからもう少し歓迎してほしいね。」


 邪険に扱われるのは想定していたのかワヤ達の態度になんとも思っていない感じだった。

 見舞いと言うのは本当のようで手に果物が入ったカゴがあった。


「これ、見舞い品な。弟子が言うには美味しいらしい。」


「わざわざどうもありがとう。それでなんですか?」


 余計にラッカアが来た理由が分からなくなったワヤ達は率直にラッカアに聞いた。


「見舞いと言うのは本当だ。まぁ、それだけじゃないっても本当だけどね。」


 ラッカアは面白いものを見るようにワヤを見ていた。


「なんですか?人の顔をジロジロと。」


「いや、ファンデル家の炎は十人十色で見てて飽きないが、お前はその中でも特に飽きないなと思ってな。」


「はぁ…そうですか。」


 自分の炎を褒められたのは嬉しいが、素直に喜んで良いのかわからない内容だった為、反応に困っていた。


「いやいや、もっと喜べ。お前は強くなる素質はある。後はそれを燃やせるかどうかだ。」


「……………なんで弟子でもない私にそんな事を?」


 ラッカアがワヤにわざわざアドバイスに来る理由がワヤには思いつかなかった。


「その弟子の為さ。」


「あっ?どう言う事だよ?」


 オンリーの為と聞いて余計に分からなくなったので、今度はヨーサがいち早く反応してラッカアに聞いた。


「そのままの意味さ。あの子は化け物になる事に覚悟したように取り繕ってはいるが、次の決勝でクラムが期待外れならまたメッキは剥がれ停滞してしまう。だから、あの子に躊躇わなくても良いように周りが成長してくれないと私が困る。あの子は私が生涯を掛けて育てると決めているからね。」


 そこに居たのはよく見るラッカアではなく、聖女として慈愛に満ちたラッカアであった。

 ある意味、狂気すら感じるその慈愛に見るだけで吐き気を催していた。

 人ならざるものを見た人の反応はそれが良くも悪くも同じである。


「お前達にはクラムがダメだった時の保険であり、今回はダメでも次に向けた布石だ。ちゃんと成長してくれなきゃ困る。それはアンライも思っていることさ。」


 自分の弟子のために最善を尽くすある意味師匠の見本のような事をしているが、巻き込まれる側としては溜まったものではなかった。


「私たちはオンリーとクラムの成長の為の燃料ですか?」


 自分達をそんな風に見られているなら失礼にも程があると三人は感じていた。


「そうなるかはお前達次第さ。あの子達に喰らいつけるか喰われるか好きな方を選べば良いさ。」


 ラッカアはそう言うと医務室を出て行った。


「そんなの決まっているわよ。」


「あぁ、そうだな。」


「そうですね。」


 三人の思いは一緒だった。


「「「私たちが喰らう!」」」


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