神への儀式
クラム戦の前日
ワヤ達はワヤの屋敷に来ていた。
「初めて来るが、ワヤって本当にお嬢様だったんだな。」
ヨーサが友人が貴族だと言う事を一切気にしていなかった。
その為、ワヤの家が屋敷の中でも余裕で大きい部類入る大きさである事を見て初めて実感した。
「そんな事どうでも良いでしょう。それより始めるわよ。」
「ワヤさん?誰もいない様ですが?」
ワヤから危険な修行と聞いていた為、屋敷の使用人や家族などがいると予想していた。
「居ないわよ。誰も。」
「あ?なんでだよ?」
ヨーサもガリーと同じく屋敷から人の気配がしない事が気になっていた。
「全員、強制的に実家に帰したのよ。此処は私が来る前まで別荘扱いだったしね。」
その発言に庶民育ちの二人は驚いていた。
えっ?この屋敷レベルが別荘なの?と呆然していた。
「これからやる事は下手したらこの屋敷が全焼してしまうかもしれないから避難してもらったの。」
「おい、大丈夫なのか?それ?」
危険とは聞いていたがこの屋敷が全焼するくらいな火力の火を使うと聞いてワヤがヨーサ達が死ぬかもしれない修行に自分達を連れてくるわけがないと知っている為、ワヤの身の心配していた。
「大丈夫よ……」
ワヤも自信がない様だが、二人を心配させない様にしていた。
「ワヤさん。修行開始する前に説明をお願いします。」
思っていたより危険であると感じたガリーは詳しい修行の説明をしてもらう事にした。
「そうね。万が一のために二人にも教えておきましょう。」
ワヤの説明によると、これはファンデル家に伝わる伝統的な修行法の中でも危険な部類に入るものではあるが、血族なら誰しもが成人までにやる事ではあると説明した。
そして、これはファンデル家が奉る火の神に自分の中で最も綺麗なものを供物として差し出す儀式だと言う。
「ワヤさんの中で最も綺麗なものって?」
「この髪よ。」
ワヤは二人が見えるように赤い長髪を見せた。
「…………良いのかよ。髪ってワヤが大切にしていた……」
「良いのよ。元々手入れをしていたのはこの儀式のためだもの。」
自身が生まれながら持っている綺麗なものを最高に磨き上げる。
それを捧げる事でより良い効果を得られると言われている。
「だから、磨いてきたのよ。」
「それで強くなれるのですか?」
重要なのはそこだった。この儀式をして修行になるか?なったとしてあの二人に通用する力を得られるのかと疑問に思っていた。
「そこは大丈夫よ…………ねぇ、ヨーサ。」
「なんだよ?」
ワヤに呼ばれたヨーサは返事をした。
「あの時、ラッカアが言ったことを覚えてる?」
あの時とはワヤがラッカアに勝負した時である。
「?」
だが、試合の内容は覚えているヨーサであったが、そこでワヤがラッカアに何を言われたか、ヨーサは覚えていなかった。
「あの時ね。私に言ってきたのよ。綺麗なだけの炎ってね。」
「………………」
ヨーサはワヤが自分の炎が火力不足だと言うことを気にしていることを知っていた。
家を出てこの学園に来たのも火力を上げる方法を見つける為だった。
「でも、ワヤさんの剣術はクラムさんより上じゃないですか。」
ガリーがフォローするように言った。
それにクラムより剣術が上なのは本当だった。家族の中で火力が最も低い事を気にしていたワヤは誰よりも剣術の修行に力を入れていた。
その甲斐もあって、兄達より剣術だけは上になっていた。
「でも、それだけじゃいけないのよ。」
ファンデル家の剣術は炎の力を想定した剣術になっている。
その為、どれだけ剣術を磨いても、ファンデル家の剣では限界が来ていた。
「それにこれをしたらね。火力は上がるのよ。」
この儀式はファンデル家の者の火力を上げるものである。
その為、自然とファンデル家なら誰もが通る道になっていた。
だが…………
「この儀式はね。供物の代わりに神の炎を地上に召喚するものなのよ。」
「それは………」
神の炎というだけでその凄さが伝わってきていた。
そんなものを下界に召喚して大丈夫なのか心配だった。
「大丈夫よ。今まで召喚された炎に地上を火の海にするようなものはなかったわ。」
「それを使役するのですか?」
ガリーは召喚した炎を操る事により火力を上げるのかと思った。それがこの儀式を使った修行なのだと考えた。
「違うわ。混ぜるのよ私の炎に神の炎を。」
「混ぜる?」
ワヤの言葉を理解できなかった二人は疑問に思った。
「そうよ。儀式で発生した炎に入って自分の炎と神の炎を混ぜる事によって炎の眠る潜在能力を目指させる事と神の炎を自分の炎にするのよ。」
ワヤの修行内容は二人が思っていた以上に壮絶なものだった。
「……何分だ?」
ヨーサ達が気になっているのはワヤが炎に入っている時間である。
「さぁね。人によるわ。でも、最低でも一時間は掛かるって聞いているわ。最大で1日を超えるそうよ。」
それを聞いた二人はワヤを止めようと思った。
神の炎がどれくらいの火力か知らないが、ワヤの炎では一時間ももつとは思えなかった。
「心配してくれてありがとう。」
それはワヤにも伝わっていた。
「此処から前もね。これをしようと思って家族に止められたのよ。」
二人が考えた事がワヤの家族が思い付かないわけがなかった。
そして、それは二人の思考が正しい事を示していた。
「でもね。私はこのまま敗者で終わる人生は嫌なのよ。」
ワヤは自分の限界が二年生になってから見えていた。
だから、命懸けの賭けに出る事にした。
「だから、もしもの時はお願いね。」
この修行は途中で終わる事は出来るものではあったが、それを自分からする事はないとワヤ自身が理解していた。
だから、もしもの時は力づくで脱出させてくれというお願いであり、出来る限り出すなというものだった。
「それじゃあ始めるわね。」
ワヤは儀式の為の火を燃やし始めた。




