クラム対ワヤ 前半
「さぁ!皆様お待たせしました!武闘会決勝トーナメント!準決勝を始めます!!」
「「「「「おおおおおおお!!!!!!!」」」」」
準決勝にもなると、観客は当然満員御礼であり、闘技場に入らなかった人は学園各地に設置されている映像機器から中継を見ている為、外からも歓声が上がっていた。
「今日勝ったもの達が学園祭最終日に戦う事になっています!」
司会者が選手達の準備が終わるまで尺稼ぎ代わりの説明をしている。
「それでは、この準決勝を戦う者たちの入場です。」
東西南北にある闘技場入場口からそれぞれ一人ずつ入場してきた。
「やや?ワヤ選手?どうかしましたか?」
そこには髪型がショートカットになり焦げ臭い匂いがするボロボロになったワヤの姿があった。
「何でもないです。それを言うならクラムの方が……」
ワヤの言う通り今までにないくらいクラムの姿はボロボロになっていた。
「いえ、クラム選手はこの武闘会からずっとボロボロなので皆慣れているので。」
会場全体が司会者の言葉に頷いていた。
「いや、ツッコめよ。」
クラムの嘆きは大きな闘技場に響く事はなかった。
司会者はそんなクラムを無視して、準決勝を戦う四人の紹介を終えた。
「それでは!対戦する二人以外は闘技場の外に離れていてください!!」
司会者がそう言うとオンリーともう一人の女性が中央から離れて選手待機場所に行った。
「それでは!クラム選手!!ワヤ選手!!準備が出来ましたら始めてください!!!」
司会者の合図に合わせて試合開始を告げる鐘がなった。
「なぁ。」
「何よ。」
クラムは入場前から気になっていた事をワヤに聞いた。
「何で髪切ったんだ?大切にしていたじゃないか?」
ワヤが炎によく似た自分の赤髪を宝物の様に思っていたこと、髪のケアは野外演習などの時にも欠かさなずに行っていたこともこの一年で知っていた。
そんな大切な髪を切った事がクラムには信じられなかった。
「別に元々好きで大切にしていたわけじゃないわよ。」
「そんなわけ無いだろう。あんなに手入れとかしていたじゃないか。」
クラムはそんなワヤの友人なら誰でも知っている事に嘘をつく必要があるのか疑問に思っていた。
「嘘じゃないわよ。必要になるまでずっとダメにならない様に磨いていただけよ。」
「??どう言う事だ?」
ますます、クラムには意味がわからなかった。
「良いわよ。分からなくても今からその身に分らせるんだから。」
ワヤはそう言うと剣を抜いた。それに反射してクラムは精霊を纏った。
「早くなったわね。」
自分が抜く動作を予感してクラムが精霊召喚と霊衣を纏うのを行ったのを素直に感心した。
「あぁ、これくらい出来る様にならないと死ぬ様な事を毎日したらこれくらい勝手にできる様になるさ。」
クラムはなんてことのない様に言っているが、ここまで速度に上げるのには相当の苦労を代償として払っていた。
「まぁ、いいわ。それより見せてあげる、私の新しい力を。」
ワヤはそう言うと炎を剣に纏わせた。
そして、クラムへ切り掛かった。
「?前と変わらない様に見えるが?」
クラムは氷で作った剣でワヤを斬撃を止めた。
「………氷魔法も上手く使えるようになったのね。」
「あぁ、まだ、霊衣時限定だけどな。」
氷魔法は水魔法と風魔法の合成魔法であるため、習得難易度は高い魔法でありガリーの様に複数の合成魔法を使える方が異常なのである。
「でもね………そんな事予想済みなのよ!」
「なっ!?」
さっきまでワヤの炎の剣を止めていたクラムの氷の剣が溶け始めたのである。
通常の氷と炎であれば、何もおかしなことではないが、魔法によって出来たものであれば、話が違う。
氷魔法と火魔法では氷魔法に水魔法が含まれている為、不利になってしまい威力に大きな差がないと壊れる事はあっても溶ける事はないのである。
「アンタが成長に追いつく為に私は髪を神に捧げたのよ!!」
そして、遂にクラムの剣は溶けてワヤの剣がクラムに一撃を入れようとした瞬間。
「簡単には入れさせません。」
霊衣が自動的に風を発生させてワヤの剣を逸らせた。その隙にクラムはワヤと距離をとった。
「助かった。ありがとう。アータ。」
「礼には及びません。クラムの体はアンライによって既に限界です。これ以上ダメージを受けたら確実に気絶します。」
クラムはアンライとの特訓で身体を酷使し続けていた。その為、回復も間に合わずに試合に出ている。
だから、毎回ダメージを受ける訳にはいかなかった。
「精霊の力を増しているわけね。」
「当然です。私とクラムは一心一体ですから。」
正確に言えばアータの力を引き出すクラムの上限が上がっているだけなので精霊自体としての力は然程変わっていなかった。
「でも、分かった。ワヤの炎が前とは明らかに違うこと。」
クラムは自身の剣が解けた瞬間、ワヤの炎を近くで見る事が出来た。
そして、気づいた。ワヤの炎が前とは違う炎が混ざっている事に。
「なんだそのケミカルな色な炎は?」
「………気づいたのね。私の内側の炎に。」
ワヤの剣は純白の炎に包まれていた。
でも、よく見ればその内部の炎は前とは違って赤く燃えていた。
「これはね。神工的な炎よ。」
ワヤの言う通り。その炎はどこか自然ではないけれどどこか神々しいそんな炎だった。




