医務室
「う……うん?ここは医務室?」
「そうよ。」
ガリーが目を覚ますとそこにはワヤが隣で座っていた。
「なに?クラムじゃなくてガッカリした?」
ガリーが少し驚いているのを感じたワヤは見舞いに来たのが、クラムではない事にガッカリしていると思った。
「いえ、クラムさんなら今頃試合している時間でしょう。」
クラムが来てない理由がガリーは分かっている為、ガッカリする気持ちはなかった。
「相変わらずの正確な体内時計ね。」
時計を見ずに正確に時間が分かるガリーの特技にワヤは感心していた。
「それでどうだったの?」
同時進行でワヤも試合をしていた。
先にガリー対オンリーが終わったので試合を見ることができていなかった。
「惨敗ですよ。真っ向勝負で圧倒されました。」
試合中を思い出したガリーは悲しそうに言った。
ワヤに試合中何が起こったのか、どういう魔法や技を使ってきて自分を倒したのか伝えれる限りのことを言った。
「最後に受けたダメージが思ったより強かったのかカーラはまだ回復出来ずに会話も出来ない状態にいます。」
精霊はダメージを負う事が少ない代わりに一度ダメージを食らうと回復するのが遅いのが特徴である。
その為、長期戦を想定する場合、精霊持ちは如何にして精霊にダメージを負わせない様に立ち回る事が重要である。
そして、精霊がダメージを負っていると精霊持ちも体調を崩しやすかったりと何処かに不調を及ぼす。
「ガリーは大丈夫なの?」
クラムがそんな状態になった事があるのを見て知っている為、ガリーの体調をワヤは心配した。
「大丈夫ですよ。私はまだそこまで悪くならないので、精々頭痛がする程度です。」
複数の精霊が混ざって生まれたカーラの精霊持ちになっているガリーは精霊持ちが抱えるデメリットをあまり持っていなかった。
「それよりワヤさんは勝ったんですか?」
自分の事よりワヤの結果の方がガリーは気になっていた。
「もちろん勝ったわ。」
そう言うワヤは少し傷や汚れが見られたが、快勝だった事が分かった。
「と言う事は、次の試合は…」
「えぇ、クラムとの試合になるでしょうね。」
今、クラムがまだ戦っているが、十中八九勝ち上がってくる事が分かっている為、ワヤの次の対戦相手はクラムである事を確信していた。
「………ねぇ、ガリー。」
「何ですか?」
神妙な面持ちでワヤがガリーに尋ねた。
「オンリーと戦った貴方だから分かるはずよ。私はオンリーに勝てると思う?」
「…………そこはクラムさんじゃないんですか?」
ガリーは次のクラム戦の事を聞かれると思っていたので、ワヤの質問の意図が分からなかった。
「クラムとは貴方よりずっと前から一緒にいるのよ。あいつとの対戦は想像出来るわ。でも、オンリーの事はわからない。貴方との試合を聞いて余計にそう思ったわ。」
ヨーサ戦では気を、ガリー戦では魔法を使ったオンリーに今までの聖女護身術だけを使っていたオンリーとは圧倒的に対処法が変わってきていた。
「前までならこの一年間のシミュレーションで突破口が分かってきていたけど、私にオンリーが聖女護身術を使うことはないわ。」
ヨーサ戦での格上、最低でも同格にしか聖女護身術を使わないと言う宣言はあの場に居た者全てが知る事になっていた。
もちろん、その事をワヤは知っている。
そして、今の自分自身をオンリーが同格扱いしないこともまた分かっていた。
「だから、純粋に教えてほしいの。貴方が戦ったオンリーに私はどこまで戦えるのかを。」
この質問はヨーサにもしていた。気を使ったオンリーにワヤがどれくらい戦えるのか。
「………分かりました。では、言います。私と同じで全ての策略を完封されて惨敗します。今のままでは確実に負けます。それはクラムさんも分かっていると思います。」
ガリーもワヤもクラムがアンライに会ってから毎日厳しい特訓を積んでいる事は知っていた。
その疲れのせいで、試合は全て苦戦しているが何とか勝利していた。
「私はファンデル家の者として全力で勝つわ。その為に強くならないといけないの。」
そう言うワヤの目には今までにない決意が見て取れた。
「何故、それを私に言うんですか?」
ガリーにはワヤがそれを自分に伝える意味がわからなかった。
「この方法には他人が近くにいないといけない決まりなのよ。」
その訓練法はあまりにも危険である為、死の危険を回避する目的で複数人を見張り役にしないいけないのであった。
「貴方だけじゃなくてヨーサにも頼んでいるわ。お願いできないかしら。」
「……………良いですよ。」
「ありがとう。」
ガリーもこのまま順当にあの二人が戦う事になるのが嫌だった。
「代わりに私たちが手伝うのですから。無様な試合をしたら許しませんからね。」
「もちろんよ。」
ガリーはベットから起き上がるとワヤと一緒に医務室を後にした。




