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ゲテモノ漁

「ねぇ…………」


「何にゃ?」


 此処は海のど真ん中、ゲテモノ探索隊は今日も珍味を求めて釣りをしていた。


「全然釣れないんだけど………」


「そんなものです。釣りは根気といっていたのは貴方でしょう。もう少し粘らないんですか?」


 一時間あたりがなくて、退屈しているアミアが不満を言っていると密かに餌だけ食われている状況にイラついていたアンナが睨んでいた。


「そうにゃ。頑張るにゃ。美味しい魚はもう直ぐにゃ!」


 じっと海を見つめながら涎を垂らすニナニナがアミアを励ましている。


「そうはいっても日差しも強いし、肌に悪いのよね。」


 熱帯近くのこの海では日差しが普段より強く感じた。


「それに今日取りに来たのは魚じゃないわよ。」


「にゃ?!!」


「えっ?そうなのですか?」


 アミアからいつものように事前に聞いていなかった二人だったが、海釣りに来ていたので二人とも魚が今回のゲテモノだと思っていた。


「そんにゃ!!美味しい魚が食べれるんじゃないかにゃ?!!」


 船に乗る前にそうアミアに言われた事を思い出したニナニナは抗議していた。


「それは目的の海産物を釣っていたら、それらも釣れると思って言っただけよ。目的のものは違うわ。」


「なら、何なんですか?」


 アンナは結局自分たちが狙うのは何なのかを教えろとアミアに言った。


「今回の狙う食材は名状し難きもの(ネームレススライム)よ!」


「「??」」


 二人はアミアから聞いた名前をする生物を聞いたことがなかった。


「それにスライムは海水に弱くて生息は出来ない筈ですが?」


 スライムは淡水がある水辺に近い場所に住む生物であり、川や湖の分解者として知られている。

 因みに見た目からよく間違われるが魔物ではない。歴とした生物である。

 分類としては貝の子孫であり、ナメクジあたりと近縁種になっている。その為、塩に弱く海水では住めないのである。


「そうにゃ?あんなのがこんな海のど真ん中にいるわけないにゃ。それに居たとしてもあんなの珍味どころか無味無臭にゃ。」


 スライムの体の大部分は水分で出来ている上に何でも分解してしまう為、栄養もなく匂いがしないのである。


「それがいるらしいのよ。正確にはスライムではないわ。」


「??どういう事ですか?」


 スライムという名前でスライムではない。

 そんなトンチの様な生物が本当に居るのかとアンナには想像できなかった。


「それがタコらしいのよ。」


「タコ?何でタコがスライムになるにゃ?」


 ニナニナはタコもスライムも見たことがあるので、どう見ても見間違えることなんてあり得なかった。


「そこよ。このタコは名前の通り言葉にできないくらいの異形の生物らしいのよ。」


 昔の人がスライムの近縁種だと思ってしまい、その勘違いが二百年近く正されなかった。そんな話があるほどタコとは思えないすがたをしたタコの様だ。


「それに今回は珍味じゃないわ。ちゃんと美味しいって話よ。」


「それは……嬉しいですが、タコなら蛸壺とかの方が良いんじゃない?」


 アンナは港町で読んだ本に書いていたタコの捕まえ方の方がいいのではないのかと思った。


「それが蛸壺で捕まったことがないらしいのよ。」


「よりタコには見えなくなってきたにゃ。」


 ネームレススライムは通常タコとは違って蛸壺の様な狭い場所には入る事はなく、見晴らしのいい場所で獲物を待っているそうだ。


「だから、ベテランの漁師も一年に一回獲れたらラッキーと言われるくらいの珍しいそうよ。」


「そんなが素人の私達に捕まるのですか?」


 そんな激レア生物が捕まえれる気がしないとアンナは思った。


「大丈夫よ。」


「何処からその自信が湧いてくるのにゃ?」


 いつも通りのアミアの自信にニナニナはある意味関心していた。


「私、運いいのよ。だから、これまでもこれからも生きて来れたのよ。」


 その目にはこれまでの経験から来る自信が見えていた。


「それは分かっているにゃ………それより、アミアの竿しなってないかにゃ?」


「え?」


 三人が話に集中していると、いつの間にかアミアの竿に何かが掛かった。


「わ!わぁ!」


 アミアは慌てて竿を握って引き摺り込まれない様に耐えていた。


「これは凄い。引きですね。間違いなく大物です。」


「頑張るにゃ!アミア!今日の美味しい夕食はアミアの腕にかかっているにゃ!」


「そんな事はいいから!手伝いなさい!!」


 周りで騒ぐ二人にアミアはさっさと手伝えと必死に言った。

 そして………


「これが、ネームレススライム?」


「たしかに何とも言えない姿にゃ。」


「何でもタコの擬態能力が最も高い種のせいで元の姿すら忘れてしまったそうよ。」


 その為、水面から揚げられた衝撃でパニックになったタコは様々な姿をとる為、表現できない姿に変化し続けるのである。


「死んでも姿は元に戻らないらしいのよ。」


「なるほど。だから、誰も元の姿を知らなくてタコとすら分かってもらえなかったのね。」


「そう思うと、可哀想なタコにゃ。」


 そんな事を思っていると日が沈んできた。


「そろそろ引き上げるわよ。目的のものも獲れた事だし。」


「そうですね。帰りましょう。」


「まだ!魚を獲ってないにゃ!」


 そう駄々をこねるニナニナをアミアは予想できていた。


「大丈夫よ。港の人達にこのタコを獲れたら魚をタダで譲ってくれることになっているから。」


 船出をする前に漁師と取引をしていたアミアは前もって魚を手に入れる算段はつけていた。


「さすがアミアにゃ!早く帰るにゃ!」


 元気を取り戻したニナニナは急いで帰る準備を嬉々として進めていった。

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