魔衣禁止
「う……うん?……こ、ここは?」
「起きたか?ヨーサ!」
ヨーサはベットから起き上がると側にクラムが座っていた。
「クラム?アタシは……」
「落ち着け、此処は医務室だ。」
混乱しているヨーサにクラムが現状の説明をした。
「そうか………負けたんだな、アタシ。」
「あぁ、でも、オンリーはお前の成長を感心してたぞ。」
落ち込んでいるヨーサをなんとかクラムは励まそうとしていた。
「いや、アイツはアタシのことなんて見ていなかった。」
「どう言う事だ?」
ヨーサの言っている事はクラムにはよく分からなかった。
オンリーは確かにヨーサの事を褒めていた。
「アイツはずっとアタシを通してお前の成長を見ていた。」
「俺の成長?」
オンリーと直接戦ったヨーサは感じる事ができた。
「アタシがクラムと一緒に修行や修羅場を潜り抜けた事を知っている。そこからアタシの成長からお前の成長率を見極めていた。」
「……………………」
クラムはヨーサの発言に何も返す事が出来なくなっていた。
「アイツは強すぎる。アタシが身につけた気もアイツはアタシ以上に身につけていた。切り札の魔法もアイツには何も効かずに一瞬で見極められて渾身の一撃も一切通じなかった…………」
ヨーサはクラムにあの試合の詳細を語った。
「………アイツはアタシなんか………初めから…眼中になかった。ア…アタシはこれでも強くなったと思っていた。でも、そんな事なかった。アタシは一年前と何も……………」
「そんな事ない!!」
涙を流しながら弱音を吐くヨーサをクラムは完全に否定した。
「ヨーサは強くなった!あの時より確実に変わった!技や身体だけじゃない!心が強くなったんだ!だから、最後までオンリーに喰らいつく事が出来た!俺は誰がなんと言おうとヨーサは強くなった!そう断言する!」
「…………クラム…」
クラムの曇りない瞳に、言葉に、ヨーサは勇気づけられていた。
「あの魔法だって凄かったじゃないか。あれをもっと使いこなせばオンリーにだって届く………」
「それはお勧めしない。」
クラムのアドバイスをさっきまで居なかった筈のアンライが遮った。
「うわぁ!師匠。いつから居たんですか?!」
「ついさっき。」
クラムはいきなり現れた師匠に驚いていた。
「それより、あの魔法をお勧めしないってどう言う事ですか?」
話が脱線しそうだったからクラムに変わってヨーサがアンライに聞いた。
「あれは我流だな。」
「それがどうしたのよ。」
オンリーにも指摘された事をアンライにも聞かれたヨーサは肯定した。
「あれではダメ。その内死ぬ。」
「はぁ?!どう言う事だよ!師匠!」
ヨーサが死ぬと聞いて黙って聞く事が出来なかったクラムがアンライにも詰め寄った。
「落ち着け。あれは魔衣と言われる魔法の中でも高等技術に位置する技。未熟者には過ぎたる力。」
アンライに未熟者発言されたヨーサはまた落ち込もうとしていた。
「師匠、もうちょっと言い方はないのか?!」
「本当の事を言っただけ。」
クラムの注意に悪びれもさせずヨーサに追い討ちをするアンライであった。
「あれは霊装を魔法で再現した魔法。あんな使い方したら身体への負荷が上がる一方で出力が伴わない。」
ヨーサの魔衣の欠点を的確にアンライは指摘した。
「そう言えばオンリーもそんな事を言っていた。」
「流石、ラッカアの弟子ですね。ラッカアの言う通りの博識ですね。」
ヨーサは試合での会話を思い出しながら言ったことにアンライは感心していた。
「それなら師匠が教える事は出来ないのか?」
未完成なら完成させれば良いと思ったクラムはアンライに提案した。
「それは無理だ。私はクラム以外を教えるつもりはない。」
アンライはクラム以外に弟子を取るのも嫌ではあったが、それ以上に仲良くない者と長くいる事が嫌だった。
「あっ!師匠!」
これ以上いたらクラムに押し切られてヨーサに魔衣を教える事になりそうだった為、急いで医務室から退出した。
それでも頼もうと思ってクラムはアンライを追いかけようとした。
「良いんだ!クラム!」
そんなクラムをヨーサが止めた。
「だが、ヨーサ。このままじゃ……」
「あぁ、分かってる。魔衣は完成するまで使わない。」
ヨーサは最初からアンライから魔衣を教えてもらうつもりはなかった。
「アタシはアタシのやり方で強くなる。もう負けない為にな。クラム………」
「なんだ。」
明らかに弱りきって強がっているヨーサにクラムは告げた。
「絶対勝てよ。アタシの分までなんて言わない。でも!クラムと、みんなと特訓した時間が無駄ではなかった事を証明してくれ!」
それはオンリーではなくヨーサ自身に証明してほしい。
そんな縋るようにクラムに言った。
「あぁ、任せておけ。俺は負けない。必ずオンリーに勝って認めさ
せてやるよ。仲間の大切さを。」
ただ単に友達が出来ないだけなのに自分で一匹狼でいるとクラムに思われていた。




