ゲテモノ旅行1
「ねぇ、もう一回言ってよ!さぁ、お姉ちゃんよ。お、ねぇ、ちゃ、ん!」
「だから、嫌です。あれは何かの間違いです。私は決して貴方を姉などとは思ってません。」
「もう、いい加減にしてくれにゃ…………」
ゲテモノ探検隊は今、更なる珍味を求めて砂漠に来ていた。
屋敷を出発してからずっとアミアはアンナにもう一度お姉ちゃんと呼ばせようと説得していた。
そして、それをここまでずっと拒否するアンナとそのやり取りにもううんざりしているニナニナという構図が出来ていた。
「それで、今回は何を取りに来ているのですか?」
明らかに話を逸らすアンナであった。
「…………そうね。もうそろそろ奴らの巣が目撃された場所ね。」
アミアは渋々目的のゲテモノの話をすることにした。
「今回狙うのは、通称アンアント(激甘)と呼ばれる蟻よ。」
「アンアントって、あの昆虫食のおやつと呼ばれている蟻ですね。」
アンナは前にオンリーが読んでいた本にそんな事が書かれていたのを思い出していた。
「そうよ。中でもアンアント(激甘)と呼ばれる種は甘党もギブアップすると言われているわ。なんと、その甘さは砂糖の3,000倍。その代わり、低カロリーらしいわ。」
「そんなに甘いのに、低カロリーって可笑しいにゃ。」
通常、甘いもの=高カロリーのイメージがある為、ニナニナは不思議に思った。
「なんでも、アンアントの甘さは糖分ではないそうなのよ。甘さを感じる他の物質だから低カロリー見たいね。」
「そういえば、最近の飴にもアンアントのエキスが使われているようですね。」
「マジかにゃ!もう絶対原材料が分からない甘味は食べないにゃ……」
ニナニナはそんな飴は食いたくないようで、アンナにも絶対買うなと言っているが、ニナニナが好んで食べている飴にも使われている事をアンナは知っていた。
「それでアンアント(激甘)の巣は地中じゃなくて、地上にある蟻塚らしくてね。その蟻塚がこの砂漠で見つかったようなのよ。」
「なんでこんな暑い中移動しているのですか?」
こんな暑い中で探さなくても蟻塚なら寒い夜中でもライトで照らせば見つかると思ったアンナはアミアに抗議した。
「私も最初はそのつもりだったんだけど、町の人が言うにはアンアント(激甘)は夜行性で捕獲するなら日中の方がいいらしいのよ。」
アミアは事前に砂漠のオアシスにあった町でアンアント(激甘)の情報を収集していた。
「アミア。」
「何よ。ニナニナ?」
さっきから暑さにやられて口数の少なかったニナニナがアミアを呼んだ。
「その蟻塚って………もしかして、あれかにゃ?」
ニナニナが指差した所には馬鹿高い蟻塚あった。
「なんですか?あれは軽く100メートルは超えてますね。」
いつも余裕の表情をしているアンナもこの大きさの蟻塚には冷や汗をかいていた。
「見える?蟻塚の頂上にある花。」
アミアの視線の先には日光で見えにくくなっているが大きい綺麗な赤い花弁をもう花を見えていた。
「あれはなんですか?」
「あれこそがアンアント(激甘)の甘さの正体よ。アンアント(激甘)達はあの花の蜜を栄養にしているのよ。」
「それなら、高カロリーなんじゃないですか?」
花の蜜で甘くなっているのならアンアントは高カロリーではないのかとアンナは考えた。
「それがね。あの花は春と夏にかけてしか咲かないのよ。だから、秋と冬は働き蟻達が蜜の代わりになるようになっているのよ。」
働き蟻は厳しい秋冬を乗り越えるために己を犠牲にして仲間の為に栄養になるのだが、その栄養は花の蜜と同じ味ではあるが成分は違うため、蟻では問題なく栄養になるが、人間では栄養にならない為、低カロリーなのである。
「へぇーなるほどにゃ。だから、低カロリーなのにゃ。」
「さぁ、捕まえるわよ。ちなみに町の人たちにも依頼としてアンアントの捕獲を頼まれたから。大量に捕まえるわよ。」
「それ、初めて聞いたのですが。」
アミアが勝手に依頼を受けていたことにアンナは苦情を言った。
「いいじゃない。旅費の足しに出来るんだから。」
「そうにゃ……ここまで来るのにもそれなりにかかったにゃ。」
ニナニナはこの砂漠に来るまでの旅費を思い返して憂鬱になった。
「それはアリシア達が一向に帰ろうとしなかったからじゃない。私はイエローとブルーを取ったら帰るつもりだったわよ。」
何故か、アリシア達が帰ろうとしないのかアミアには分からなかった。
前のレッドリークラブエッグでは取ったらさっさと帰ろうとしていたので、今回もそうだとアミアは思っていた。
「それは……………」
「?そんなに怖いの?オンリーの奴隷長って?」
奴隷長は主人の奴隷を統括する役職であり、奴隷の中で最も上の立場の人である。
「貴方達の奴隷長は違うようですね。」
羨ましそうにアミアを見つめるアンナであった。
「そうね。私たちの方は怒ったら一番怖いけどそんなに恐怖する存在ではないわね。」
奴隷長を怒らせた時のことを思い出して苦笑いをするアミアであった。
「私達の方もそんな常時怒っているわけでも特別厳しいわけでもありません。」
「あら?そうなの?」
アミアはオンリーの奴隷長が奴隷達から怖がられているのはマナーに厳しかったりなどで恐れられているのかと思っていた為、それが違うと知って余計に疑問に思った。
「私達の奴隷長はその………」
「一言で言って戦闘狂にゃ。」
言葉を濁そうとするアンナに対してはっきりとアミアに奴隷長の事をニナニナは言った。
「確かに戦闘狂は面倒だけど恐れるほどなの?」
アミアの仲間の中にも戦闘狂はいる為、戦闘狂のウザさは知っている。
でも、恐れるほどかと言われてばそんな事はなかった。
「それだけなら別に恐れる事はありません。」
「そうにゃ。それだけなら別に気の良い姉御肌の奴隷長にゃ。」
「なら何がいけないのよ。」
はっきりとしない二人にアミアは問い詰めた。
「酒癖が悪いのよ。」
「後、特訓馬鹿でそれを周りに強要するにゃ。」
「えぇ、それも圧倒的な善意でやってくるから更に厄介です。」
話によればオンリーの奴隷長は戦闘狂であり特訓馬鹿な為、強さは奴隷長以外の奴隷達が束になってかかっても負けるほどである。
それに加えて、オンリーへの忠誠心も奴隷の中で群を抜いて高い為、オンリーの奴隷が戦闘において弱いのは嫌なようで強制的な訓練が修行の旅から帰ってきたら始まる。
奴隷達はそれが嫌いだから。何かと理由をつけては奴隷長が帰る2日前ぐらいまで屋敷から離れるのであった。




