孤独
「なぁ、オンリー。」
「なんですか?師匠。」
オンリーとラッカアはオンリーの屋敷に向かって歩いていた。
「お主、話によればワシの聖女護身術を雑魚処理に使っているらしいな。」
ラッカアはクラムから聞いた話の真相をオンリーに問い詰めた。
「確かに使っていますが、別に雑魚処理には使ってません。」
ラッカアに誤解されていると感じたオンリーは間違って伝わっている部分を訂正した。
「じゃあ、何に使っているじゃ。」
「手加減する為です。」
「お主なら聖女護身術じゃなくても手加減くらいできるだろう?」
ラッカアからしたらオンリーの才覚で手加減が聖女護身術以外でできない訳がなかった。
「確かに出来ますが、効率が悪いんです。教会を出てから学んだ技は全て攻撃的なものばかりでした。」
「まぁ、聖女護身術は護身術じゃからな。攻撃的ではないな。」
ラッカアはオンリーの説明を聞いて理解はしたが納得はしなかった。
「オンリー、そうだとしてもお主の才能ならそれくらい問題なく操れているはずじゃ。」
「………………」
ラッカアの見立てでは殺傷能力が高い技も安全に使える実力がオンリーにはあると考えている。
「お主の考えは分かる。どうせ、このまま強くなるのが怖いのだろう。」
「……………」
オンリーはラッカアが言ったことが図星だった。
「お主の才能はワシの弟子の中でもピカイチじゃ。それは間違いない。そして、誰よりも努力してきた。その結果、お主の成長速度は常軌を逸していた。」
ラッカアはオンリーとの思い出を思い起こしながら言った。
「クラムに言ったが、あの中で化け物になる覚悟がないのはお主じゃ。オンリー、お主は昔から孤独じゃったな。」
オンリーの過去は孤独といつも一緒に過ごして、今も孤独は付き纏っていた。
「ワシは昔、お主に言ったな。今のお主はひとりぼっちじゃ。そんなのお主には相応しくない。お主なら孤高と呼ばれる存在になれる。そしたら、類が友を呼んでくれる。そう言ったな。」
「えぇ、覚えています。」
オンリーにとって孤独で悲しんでいた幼少期を救ってくれた言葉であり未来への希望だった。
「そんなお主はやっと同格になれる存在に出会った。」
オンリーが学園に来た時歓喜した。
目線の先にはクラムが居た。
師匠が言った類が呼んだ友がやっと来たのだと一目で確信した。
「だが、クラムは発展途上すぎた。あれの潜在能力は先も言った通り高い。お主と同等だろう。」
オンリーも一瞬がっかりした。
やっと会えた友はまだ自分と友になる資格を持っていなかった。
「お主はクラムの成長する起爆剤になるにはレベルが開きすぎていた。そう思ったのだろう。」
ラッカアの言った通り、オンリーはそう考えた。
「だから、お主は停滞を選んだ。クラムが自身のライバルに、友になるレベルになるまで待つ選択をした。」
もう孤独は嫌だった。
「そんなのぼっちの考えじゃ。孤高の考えではない。」
ラッカアはそんな情けない弟子の思考をバッサリ切った。
「いいか。よく聞け、オンリー。お主は目指すのは孤高じゃ。そんな考えは捨てろ。もし、クラムがお主に追いつけず沈むようなら諦めて進み続けろ。止まる事はワシが許さぬ。」
「師匠………」
オンリーの声はいつに無く弱々しかった。
「………身体は大きくなっても、相変わらずじゃのう。」
聖女らしい慈愛の目でラッカアはオンリーを見ていた。
「強くなれオンリー。化け物になることを恐れるな。」
「………………」
オンリーは怖かった、これ以上孤独になるのは。
孤独が友になるのは嫌だった。
「より強くなれ。それに心配するな。あのアンライの弟子じゃ。お主を一人にすることはない。ワシを信じろ。」
「師匠。私は……………」
「武闘会が終わるまでワシがいる。今のお主を全てぶつけろ。今の弱気のお主を壊し、強くなれ。」
ラッカアはこのまま弟子が潰れるのが嫌だった。
「化け物になれ。ワシに追いつけ。そして追い越せ。お主ならできる。全て上手くいく。ワシが嘘ついた事あるか。」
「ありません。」
オンリーは覚悟が決まった。
「師匠、私はこの武闘会でクラムを全力で叩き潰します。」
「そのいきじゃ。それでこそワシの弟子じゃ!」
そこにはもう弱気のオンリーはいなかった。




