師匠と弟子
「お主、精霊持ちだろう。さっさと出しな。それくらいは待ってあげるさ。」
ラッカアはクラムが精霊持ちだと分かっていた為、クラムの全力が知りたいから。クラムの準備が整うのを待つことにした。
「良いのか?聖女護身術者にとって精霊持ちは天敵なんだろう。そんな事を言って。」
「なんだい。そんな事かい。」
クラムが精霊を出すのを躊躇っているのかと思えば、ただの要らぬ気遣いだと分かってラッカアは呆れていた。
「それは未熟者だけだ。ワシを舐めるなよ。」
まだ、躊躇うクラムを言葉だけでラッカアは威圧した。
「なら、遠慮はしないぞ!来い!アータ!」
クラムがそう言うと、クラムを中心とした陣が生成された。
その陣から精霊が現れた。
「ようやくですか、クラム。早く、あの婆さんを倒しましょう。」
「あぁ、そうだな。………婆さん?」
クラムの精霊であるアータはラッカアの事を婆さんがと言った事をクラムは疑問に思った。
「あの聖女は見た目はともかく年齢はもう人間的に婆さんと言っていいくらいです。」
「人の年齢を勝手にバラすんじゃないよ。相変わらず、精霊は目が良すぎていけないね。」
精霊は見た目が変わらない為、見ただけで生物の年齢が分かる事ができる。
なので、見た目は三十代に見えるラッカアの実年齢を特定した。
「………アータ。そんな事は置いといて行くぞ。」
「ええ。いきましょう。」
アータが輝き出すと、クラムの身体に光が纏わりだした。
「霊装を使えるんだね。まぁ、時間がかかり過ぎだね。さっさとかかってきなさい。」
クラム達の霊装をラッカアは酷評する
「あぁ、いくぞ!精霊術、水刃!」
霊装を纏ったクラムがラッカアに水の刃を纏った手刀で攻撃しだした。
だが、ラッカアにはその攻撃は掠りもしていなかった。
「クラム、空気には気をつけてください。」
「分かっている。」
聖女護身術、見えない聖縛の正体は空気を介して使った聖縛だったのだ。
つまり、空気が縄の代わりをするのである。
「自然を媒介にする聖女護身術には空気などが見える精霊の目が厄介と弟子達には教えたけどね。ワシには関係ないのじゃ。」
「っ!」
周囲を警戒しながらラッカアに攻撃していたクラムが捕まった。
「お主、見えないものに警戒しすぎじゃ。その精霊が言っていた通り、ワシも歳でな。特に抜け毛が酷いんじゃ。こんな風にすぐ抜けてしまう。」
ラッカアが髪を手で触ると手には細かい髪があった。
「ほれ、首だけは動くようにした。自分の身体をよく見るんじゃ。」
クラムは自身の上半身を見ると目に見えないくらいの髪が巻き付いていた。
「そもそも、空気を使うのは応用じゃ。本来の聖縛は自身の髪を使って相手を拘束する技じゃ。……うん?」
ラッカアがクラムに懇切丁寧に説明していると………
「すぅぅぅぅ………ふん!」
「ほう。」
クラムはリリス戦で会得した聖魔交換を使った。
「なんだい。お主、オンリーと同じ事できるんじゃな。しかも、供給だけではなく、交換もできる様じゃな。」
ラッカアはクラムに感心していた。
リリス戦時とは違ってクラムは相手に聖力をゼロにして貰わなくても、自身で聖力の肺の中身を魔力で満たす事を出来るようになっていた。
「苦労はしたけどな。やっぱりオンリーも出来るのか。」
「そりゃそうさ。それはワシに勝つ為にオンリーが考えだして完成させた技じゃよ。供給だけな訳ないだろう。」
ラッカアはオンリーの教え方を知っているから。クラムの勘違いを正していた。
「………じゃが、それが出来る程度ではワシに一泡吹かせる事は不可能じゃよ。」
当たり前だが、オンリーの師匠である為、オンリーの技の特徴はよく知っている。そのため、この技の弱点も知っていた。
「そんな事は分かっている。此処からは俺のオリジナルだ。」
クラムはまた、水の刃を纏った手刀、そして、脚刀で攻撃しだした。
「ほう、速度も威力もさっきとは段違いに上がっているな。」
「そう言う割に、余裕で防いでいるじゃないかっ!」
クラムの攻撃は拘束される以前より明らかに強くなっていた。
「これは……聖力を使っているな。………いや、消費していると言った方がいいようじゃな。」
「………そこまで分かるんだな。」
クラムのイメージは呼吸であり、聖力で満ちていた肺にあった聖力は無くなってしまったわけでは無かった。
それが、細胞一つ一つに酸素が運ばれるように細胞に運ばれている事が初めて使った時にわかった。
この方法は開発者のオンリーには発生しない技だった。オンリーのイメージでは聖力は消化されてしまうからである。
「クラム、より出力上がるわよ。」
「あぁ、上げてくれ。」
クラムはラッカアに攻撃が当たり出した事からこのまま霊術でも強化して攻めることにした。
「さすが……」
「なんだ?!」
クラムとラッカアが戦っていると何かが二人の横を過ぎて木にぶち当たった。
「はぁ、流石に強いですね。」
「オンリー!」
「何が吹っ飛んできたかと思えば、ワシの弟子じゃないか。」
森の奥から吹っ飛んできたのはオンリーだった。
「おや、そこにいるのはクラムじゃないか。」
オンリーが吹っ飛んできた方向から女の人が現れた。
「し、師匠?!」




