全ての鰭がついた噂
「はい、今回の報酬です。」
「どーも。」
冒険者ギルドの受付嬢から金貨が沢山詰まった袋を手渡された。
「す、すげぇ。」
「やっぱ、ジュエルは違うな。」
「あんだけ貰っていて休みなしで働いてるんだよな。」
「まぁ、俺たち底辺の仕事が無くならないようにギルドもしてくれているが、近場が無ければ遠出するらしい。」
「マジかよ。俺ならあれだけ貰えたら、他の高ランク達のように働かずに自由に活動するのに。」
オンリーが受け取る金貨袋を見た他の冒険者が色々言っている。
「まだ未成年だろう。あんだけ働いてどうするんだ?」
「なんでも、死んだ家族を生き返らせる実験に必要な機材や材料費などに大金が必要らしい。」
「バカ、それは根も葉もない噂だろう。本当は封印が解かれた邪神に殺された友の復讐為に最強兵器開発に必要な金らしい。」
「アホだな〜君達はそれも都市伝説だよ。封印されていた邪神ってなんだよ。そんなの解かれた世界ニュースだよ。本当は大半を自分が育った孤児院に仕送りしているって話だよ。」
「「「「いや、それはねぇな。」」」」
「なんでよ!」
「「「「あんな大金を毎回大半仕送りするってどんな孤児院だよ。」」」」
「いくら孤児院は金かかると言ってもあんな大金あったら一回だけで十数年暮らせるだろう。」
「そうだ。そうだ。あんな大金を使うなんてそれこそ俺たち凡人が考えつかない非凡的な何かに決まってる。」
オンリーが大金を集める理由。
それは、ただ休日過ごす事が無いから。休日を一人で無為に過ごしてぼっちである事がバレたくないから。働き詰めているだけである。
そしたら、大金が山積みになった。
ジュエル級のような高ランクの仕事はそんな頻繁に無いように思われているが、実はそんな事はない。
高ランクの仕事発生率は他の仕事に比べて圧倒的に低いが、仕事を受ける人が少ない為、結構溜まっているのである。他の冒険者が話していた通り、他の高ランク冒険者は趣味や本業に専念する為、あまり受けないのである。
高ランク冒険者にとって冒険者は高収入の副業である。なので、こんなに依頼を受ける人は冒険者ギルドにとって稀有な存在である。
「結局、何に使っているんだ?あの大金?」
「さぁ、誰か聞いてこいよ。」
「それこそ無理だろう。あの子に話しかけて生きて帰ってきた人はいないって話だ。」
「バカだな。そんな事あるわけないだろう。本当はあいつの目を見た瞬間、体が動かなくなって1週間そのままずっとその状態になって衰弱死になりそうになったって聞いた。」
「それこそ嘘だろ。俺はあいつの声を聞いた瞬間、天国が見えて次の瞬間病院のベットで目覚めたって聞いた。」
「アホばかりだな〜僕はその人の周りでいきなり土下座しながら話し出したって聞いた。」
「結局、どういう事だ?」
「知らん!分かるのはあの子と関わった人が奇行を行なっているって事だ。誰か噂の真相のための生贄になって来い!俺はそれを肴に酒を飲みたい!」
「「「「ふざけんなぁ!お前がなって来い!」」」」
何か大声で話していた冒険者達が喧嘩を始めた。
巻き込まれない内にさっさと帰ろう。
こうしてまた、オンリーに話しかけようとした時点で病院送りになると言う根はあるが葉はない噂が生まれた。