強者
学園祭の準備のため、学園の設備が使えないので、クラム達は外に来ていた。
「ここなら誰にも迷惑かけずに戦えます。」
クラム達がいつも特訓に使っている場所だった。
「そういえば、まだ名を名乗ってなかったね。」
女の人はふっと思い出した感じに言った。
「えぇ、そうね。」
「じゃあ、名乗らせてもらうね。アッハゾルテ神教、聖女のラッカア・アッハゾルテだ。」
「聖女……」
クラムは通りで圧倒的な清らかさを感じる事に納得した。
「アッハゾルテ神教の聖女という事は………」
「それにアッハゾルテ………」
アッハゾルテ神教はオンリーが属している神教だった。
聖女になるにはその神教によって変わるが、その中でも特別な聖女には神と同じ名をなる事が許される。
「そう、ワシこそがオンリーの師である聖女護身術師範ラッカアである。」
「通りで強いわけね。」
ワヤの前で余裕の表情を浮かべる化け物に皆が冷や汗をかいていた。
「さぁ、小娘。さっさとかかってきなさい。ワシに実力を示すのだろう。」
「えぇ、でも、名乗られたなら名乗り返すのが私の家の流儀なのよ。私の名は、ワヤ・ファンデル。貴方を倒す名よ。」
ワヤは聖女を前にしても気持ちを保つ事が出来ていた。
「なんだ?小娘、お主ファンデル家の一人娘か?」
「それがどうしたのよ。」
どうやら、ラッカアはワヤの実家を知っているようだ。
「いやはや、騎士の家系として名高いファンデル家の一人娘はじゃじゃ馬だと聞いた事があったのでな。ふむ………」
「な、何よ。」
ラッカアはそう言うと、ワヤをじっくりと眺めていた。
「いやなに、じゃじゃ馬にしては随分と大人しいと思っただけじゃ。」
「えっ?!ワヤさんが大人しい??」
「なーにー、何か文句あるの?カハナ?」
「いえ!何も!」
ラッカアの言い分に疑問があったカハナは素直に口にしてワヤに睨まれたが、心境は他の二人も同じだった。
「まぁ、おしゃべりはここまでにしてさっさとかかってこい。ファンデル家の小娘。」
「えぇ!言われなくてもさっさとやるわよ!」
カハナの発言で機嫌を悪くしたワヤは剣を抜き、魔法で炎纏わせてラッカアに突撃した。
「おお、ファンデル家特有の白炎か。存外、白い炎も綺麗じゃな。」
「なっ!」
ワヤの怒りを乗せた会心の一撃をラッカアは素手で受け止めた。
「だが、それだけじゃ。」
「ぐぇっ!」
ラッカアは剣を掴んだままワヤの腹に一撃蹴りを喰らわせた。
「どうした?小娘?その程度か?」
「ぐぅっっ!がはっ!」
あまりにも強烈な一撃にワヤは悶絶して息をするのすら忘れるほどだった。
「な、舐めんじゃ…ないわよ……」
「?おぉ、立ったか、ワシに実力を示すと言っただけはあるな。常人ならまだ、のたうち回っているところじゃよ。」
かろうじて立つ事の出来たワヤだったが、それ以上に屈辱的な事があった。
「なっ……」
「?」
「なんで、聖女護身術を使わないのよ!」
そうあの攻撃には少しも聖力は使われていなかった。すなわち、ラッカアは全て素の力でワヤを追い込んだのである。
「おかしな事を言う。小娘だな。」
ワヤの物言いにラッカアは疑問しか湧かなかった。
「あれは格上や同格ようじゃ。少なくても格下中の格下の小娘に使う技はない。」
「なっ!くっ。」
ラッカアの言い分は最もだった為、ワヤは黙ることしか出来なかった。
「……その様子を見るにオンリーはお主ら、相手にも使っているようだな。」
「そうよ!それがどうしたのよ!」
明らかに不機嫌になったラッカアに屈辱でいっぱいのワヤは答えた。
「いや、何?こんな格下相手に使う弟子に後でお灸を据えないいけないと思っただけじゃ。」
「何よ!もう私との勝負には勝ったつもり!」
既にワヤにも勝ち筋は見えていなかったが、それでももう勝ったように振る舞うラッカアには怒りしか覚えなかった。
「そうじゃったな。まだ、勝負の最中だったな。では…もう終わらすとしようか。」
「えっ?!」
ラッカアは一瞬でワヤの背後に回ってワヤを気絶させた。
「これでワシの勝ちじゃ。それで……お主らはまだやるか?」
「っ!」
ワヤとの勝負で圧倒的な強者の姿を示したラッカアにヨーサは震えが止まらなかった。
「ア、」
「次は俺だ。」
震えるヨーサの前にクラムが立ちラッカアに言った。
「ほう、ファンデルの小娘とは違って、中々の実力を持っているようじゃな。だが、それでも格下中の格下が格下になった程度だ。」
「そんなのは分かっている。だが、こっちはオンリーに勝つ為に特訓を重ねてきたんだ。師であるアンタに一泡吹かせることも出来なかったら、オンリーに勝つなんて夢もまた夢だ。」
クラムは言葉ではそう言っているが、一泡吹かせるどころか、勝つつもりでラッカアに挑もうとしている。
「良い覚悟だ。よろしいなら、こちらも敬意とさっきの感謝の気持ちとして本当の聖女護身術を見せてやろう。」




