武闘会開幕
「只今より!学園祭!武闘会を開催します!」
クラムが変態事件を起こして時は流れて一か月待ちに待った。武闘会が始まった。
「まず初めに学園長から挨拶があります。」
「まぁ………全力で戦ってくれ!特に去年はある学年がある生徒一強だった為、正直つまらなかった。今年は皆の健闘を願う。」
学園長の素直な発言に場が凍った。
「えぇ、学園長ありがとうございました。開会式はこれにて終了です。対戦表は学園内のあらゆる所に貼っているので見逃さないように。以上!」
この学園は学園長自身が長ったらしい挨拶や式を嫌う為、式などは短く終わるようにしている。
「クラムさん。この後、どうします?」
「あぁ……とりあえず対戦表見てから決めない?」
「そうね。私はそれに賛成。」
「アタシも。」
クラムは同級生の女子三人と話していた。
「それでクラム。オンリーに勝つ自信はあるの?」
「少なくとも去年のような無様な試合はしない。」
クラムにはまだオンリーに勝てるイメージはなかったが、確実にオンリーに近づいている感覚はあった。
「そう。なら良いわ。私と当たるまで負けないでよね。」
「それはこっちのセリフだ。ワヤこそ負けるなよ。」
ワヤと呼ばれた赤髪の女子は武闘会に出場するようだ。
「良いですね、ワヤさんは綺麗で強い。それに比べてわたしなんて実力的に参加してもダメですから。」
クリーム髪の比較的小柄な女子が二人の関係を見て羨ましがっていた。
「何言ってるんだよ。カハナの対魔術は一級品じゃないか。対人戦がメインじゃないんだから。そんなに落ち込むなよ。」
「クラムさん。」
クラムの励ましを受けて、嬉しかったカハナは露骨にげんきになった。
「そんな事より、さっさと対戦表を見にいこうぜ。」
野生的な女性が話し込んでいるクラム達を急かした。
「分かっているよ、ヨーサ。」
クラム達は対戦表を見に校門前に来ていた。
「私はBブロックね。」
「アタシはEブロックだ。」
「俺はCだ。」
「皆さん別れましたね。」
武闘会からは予選トーナメントを行い、その一位と二位が決勝トーナメントに行ける仕組みになっている。
予選トーナメントは全部で八つある。
「オンリーは………Eブロック。」
「おっ!アタシと同じだな。」
去年の決勝進出者は別々のブロックのシードに配置されるので、去年の一位のオンリーと二位のクラムが予選で当たる事はないのは分かっていた。
その中で、クラムの仲間のヨーサが予選で当たったしかも……
「2回戦目当たっていますね。」
「あぁ!一回勝てばあいつと戦う。去年の雪辱を返すチャンスが早く回ってきたぜ。」
ヨーサはオンリーと戦う気満々であった。
「大丈夫か?」
「あぁ?何心配しているんだよ!去年までのアタシとは違う……もう違うんだよ。クラム。」
ヨーサは去年、オンリーに初戦で当たって負けた。
それも心をへし折るように相手の技も戦略も全てを真っ向から粉々にする形での勝利だった。
オンリーは自分の学年の実力を見るために予選は全てそのような勝ち方をしていた。
そして、当たった人全員が自信喪失を起こした。中には学園を去る者もいたと言う。
「今度こそアタシは勝つ!」
まるで自信のない自分自身に喝を入れている。そんな風にクラムからは見えた。
「うーん、此処は何処だ?」
そんなやり取りをクラム達がしていると、対戦表の隣に貼られている学園の地図と睨めっこしている女の人がいた。
「あのーどうかしましたか?」
困っているようだったので、カハナが話しかけた。
「おお、助けてくれるのか?!童!」
「わ、童……」
独特な話し方と発音に違和感があったが気にせず話を聞く事にした。
「はい、どうかしましたか?」
「それがのー学園長室まで行きたいじゃが。地図に見当たらないんじゃよ。」
「学園長室なら本館最上階にある部屋です。一室だけだから分かりやすいですし、この学園の本館に屋上はないですから。ただ、階段を最後まで上がっていったらわかりますよ。本館は目の前にある校舎ですので。」
カハナが初めて来る人にもわかりやすい説明した。
「おお、助かる。奴め、わしが来るのに、迎えすら寄越さぬから迷ってしまったわ。」
「学園長とは知り合いなんですか?」
「なんじゃ気になるか?ただの旧友の戦友じゃ。」
女の人はそう言うと、本館を目指して歩き出した。
「あぁ、そうじゃ。お主ら。」
「はい、なんですか?」
本館への歩みを止めて女の人はこっちを見て言った。
「今さっき、オンリーに勝つとか言っておったが、お主らの実力では不可能じゃ。諦めた方がいいぞ。」
「えっ?」
女の人は当然の事のように言った。
「あ?もう一辺言ってもみろよ。」
ヨーサがキレて女の人に詰め寄った。
「?あー、すまないね。悪気はないんだよ。」
「ヨーサ、この人は本当に悪気はないよ。」
クラムはこの人から邪悪さどころか清らかさが溢れているように見えていた。その為、本当に善意でさっき発言をしたことが分かった。
「そんな事は!分かっている!分かっているから怒っているんだよ!なんで、何も知らない奴にそんな事を言わなきゃならないんだよ!」
ヨーサはこの武闘会に向けてクラム達と切磋琢磨して頑張ってきた。この一年、死地も渡って強くなったからこそ、見ず知らずの人にそんな事を言われる筋合いはなかった。
「そうかい、まぁ、負けても落ち込むじゃないよ。」
「だれが!落ち込むか!負けて!落ち込むのはオンリーの方だ!」
「威勢は良いけど、実力が伴わないとただの虚言。虚しいだけだよ。」
女の人は今度こそ話す事はないようで本館に向かおうとしていた。
「……………待ちなさいよ!」
「まだないか?」
「私と戦いなさい!」
「?何故ワシがお主と戦わないといけないんだ?」
女の人はさっきまで黙っていたワヤに疑問に思った。
「アンタ、さっきから聞いてたら好き勝手に言いまくって私の友達を侮辱してタダで帰すわけないじゃない。」
「なんじゃ、このか弱い老耄をいじめる気か?」
「何がか弱い老耄よ。アンタ、相当強いでしょ。」
クラム達は初めて見た時からこの女の人が強いことは肌で感じていた。
「アンタ、オンリーの事よく知っているようじゃない。」
「まぁ、あの子をこの世で一番知っていると言っても良いね。」
女の人は嬉しそうに言った?
「じゃあ、直接私の力がオンリーに届く事をアンタに教えてあげるわよ!」
「へぇ……」
女の人の目が明らかに変わった。




