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絶望のその先へ

 これはガリー救出時の話である。


「クラム君、魔力が無くなればどうなるか、知っていますか?」


「それくらい知っているし、俺も経験した事があるから。体感で知っている。過度の疲労での気絶だろう。」


 クラムは当然の知識として自分の体感で感じた事を言った。


「なるほど。クラム君も勘違いしている人ですか。」


「勘違い?」


 そう言う人多いんですよ。と言いながらオンリーは笑っていた。


「あれは疲労ではなく空腹ですよ。」


「空腹?どうして空腹で気絶するんだよ。」


 オンリーの言葉を聞いたクラムは疑問に思った。


「通常の空腹では気絶する程の苦しみはありません。ですが、餓死するほどの空腹感だったらどうですか?」


「そんなの文字通り死ぬ程苦しいだろう。俺も貧しい孤児院育ちだから。分かるが、あれは少し違うと思うぞ。」


 昔の経験から魔力枯渇の苦しさはやっぱり空腹は違うと体感で分かっているクラムはオンリーの意見を否定した。


「それは貴方が本当の餓死を経験しかけた経験がある為の齟齬です。私が言っていますのは似ているだけでそのままではありません。」


「なんで、そう思うんだよ。」


 クラムはオンリーの発言からオンリー自身は餓死寸前の空腹を経験した事がないのは明らかなのになんで断言出来るのかクラムには分からなかった。


「私のイメージです。」


「イメージ?」


 クラムはより分からなくなった。


「私は魔力や聖力が入っている器があり、供給する源泉があると考えています。」


「魔力はそれで良いが、聖力は祈りから来る力じゃないんか?」


 クラムも教会孤児院出身である為、聖力の原理を知っていた。


「それは間違った概念です。」


「神父がそんなこと言って良いんか?」


 神父らしからぬ発言にクラムは困惑していた。


「祈りは出力上げる行為であり、聖力の総量や回復量はまた別です。」


「そうなのか?」


 孤児院でそんな話を聞いた事がなかったクラムは半信半疑だった。


「はい。聖力の総量は精神力と比例して回復量は肉体に比例して上がります。なので、聖騎士だけではなく聖女や神父が訓練をするのはそう言うカラクリがある為です。」


「ならなんでその事を言わないんだ?」


「簡単ですよ。わざわざ説明する必要がないそれだけです。」


 オンリーが言うには聖力は通常、聖術を使わない限り必要無いものなので、全てを神の祈りから来るものにした方が神秘的にだからだ。


「なので、私は魔力や聖力の器を胃と同じと考えました。そして回復を食事と同義にしました。それから私は魔力や聖力が枯渇して気絶する事が無くなりました。」


「?どう言う事だ?」


 全然話が分からなかったクラムはオンリーに聞き返した。


「つまり、私は一時的に魔力の器に聖力を、聖力の器に魔力を注ぐ事で空腹を緩和させる事が出来ました。今では一切感じる事がなくなりました。」


「そんな事が出来るのか。」


 クラムはオンリーのその発想は目から鱗だった。


「まぁ、私以外まだ出来た試しはありませんが。」


「はぁ?!どう言う事だよ!」


 また今度試してみようと考えていたクラムはそれが出来ないと知ってオンリーに詰め寄った。


「さっきも言いました通り、これは私のイメージです。魔力や聖力は人それぞれ指紋などと同じく個性があります。」


 つまり、この方法はオンリーのみの方法であると言う事である。


「なんだよ……てかなんでそんな事を言ったんだよ。」


「まだ、私以外は出来ていませんが、これはイメージ次第ですから。これが出来ると知っているだけでいつか出来るかもしれませんから。」


「出来るのかそんな事?」


 自分にはそんな人外じみた事が出来るようになるとは思えなかった。


「出来ますよ。クラム君ならね。」


 時は戻って現在。


 これだ。クラムは記憶を手繰り寄せる事が出来た。

 聖女護身術が相手の聖力を利用する技なら自分の聖力をゼロにすれば威力も持続力も半減する。


「何かわかったようですね。」


 リリスはさっきまでとは違う顔つきのクラムを見て何か活路を見つけたと感じた。


「あぁ、リリス。お前に勝って俺はオンリーにも勝つ!」

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