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史上最初

 クラムは防戦一方だった。一二回は聖縛を避けれても、低燃費な所を生かしてリリスは間髪入れずに放ってくる為、すぐに捕えられていた。

 

「くそっ!」


 なにより悔しいのはリリスが聖縛以外の技をまだ使っていないからである。


「舐めるなよ!」


「舐める?舐めていません。言ったはずです。聖女護身術は時間稼ぎです。クラムさんが疲れ果てるまで私は攻めません。」


 リリスは自身が言った通り試合が始まってから一歩も動いていなかった。

 今攻めたら、リリスにも隙がしょうじてしまう。そこから戦闘経験の差が出てクラムが勝利への糸口を掴む可能性が高いからである。


「クラムさん。貴方は私より基本スペックは上です。真正面から戦えば負けるでしょう。分かりますか?これが本来の聖女護身術です。()()相手に使い、消耗させ何もさせずに勝つ。それが聖女護身術の姿です。」


「あぁ………理解したよ…」


 クラムはリリスが何を言いたいのか分かっていた。

 もし、クラムがオンリーより強くなったとしても、今のままだとオンリーには勝てないという事をクラムは実感した。


「格下相手に使っているオンリーの姿は本来の姿とは違うという事だな。」


「えぇ、その通りです。師匠が言うにはオンリーの戦闘法は狡猾です。罠と準備で格上をも圧倒する徹底的な戦略と攻略。それがオンリーだと言っていました。」


 だから、初めてリリスがオンリーと戦った時、聞いていた話と違っていて内心驚いていた。

 今のオンリーの戦闘は初撃で終わるか、攻めの一手で終わる為、作戦などほぼ要らなかった。


「分かりますか、クラムさん。私に苦戦しているようではオンリーには一生届きません。魔法だろうも異能も全ての戦闘技術には発動までの時間が有ります。」


「あぁ、そうだな。」


「ですが、聖女護身術は師匠が言うには最速の戦闘技術です。いえ、師匠が最速にした戦闘技術です。師匠はこの護身術は最速が一番効果を発揮すると考え実現させました。」


 聖縛を破るには今のクラムでは魔力での身体強化をしないと破れない。

 魔法を使う隙はなく、破った先から新しく聖縛が来る為魔力を使い続けないといけない。このままではジリ貧である。


「諦めますか?」


 リリスはクラムに降参を促した。


「言っておきますが、精霊は召喚させませんよ。」


「やっぱり警戒していたか。」


「当然ですよ。聖女護身術の唯一の天敵と言って良い存在。それが精霊持ちです。警戒するなと言う方が無理でしょう。ですが、それも精霊を召喚させなければ恐るるに足りません。」


 クラムが考えている勝ち筋は精霊召喚をしない限り始まらない為、この試合でオンリー戦での召喚までの時間稼ぎを見つけようとしていたが、一向にオンリーどころかリリスに勝つイメージが湧いてこない。


「……………私に!負けているようでは!オンリーには勝てませんよ!」


 防戦しかしないクラムに痺れを切らしたリリスは感情をぶつけ出した。


「もっと死ぬ気でかかってきてください!」


「リリス……」


 明らかに今までとは違う形相にリリスにもクラムの特訓に付き合っているだけではない事がクラムには分かった。


「聖女候補の私に負けるようでは!()()のオンリーには!勝ってませんよ!」


「聖女?」


 クラムはリリスの発言に疑問を思った。

 聖女とは女性が受ける教会最大の名誉であり称号であるからである。


「オンリーが?聖女?」


「そうです!あの人は史上初めての男性で聖女になる事を許された人なんです!それをあの人は今だ認めていない!帰ってこない!ふざけんな!私が!私たちが!どれほどの想いで!そこを目指しているのかも知らないで!」


 リリスがオンリーを嫌っているのは敬愛している師匠を悲しめているだけではなかった。本当は男性でありながら聖女であると認めなければいけないと思わせる才覚、そして、それを無視するオンリーの態度であった。


「私はあの人が嫌いです!あの人を否定したい!でも!わたしには無理なんです!!あの人には勝てません!クラムさん!貴方なら!オンリーが唯一!同格と認める貴方なら!勝てるはずです!勝ってください!私に!オンリーに!死んでも勝ってください!」


「リリス………っ!」


 死んでも勝つ。

 その言葉にクラムは何か記憶に引っかかった。


「クラムさん!」


「少し黙れ。」


「っ!」


 リリスは自分の思いをぶつけようとした。

 でもそれはクラムの一言で途絶えた。その言葉には今までにはない気迫が感じられた。

 オンリーが自分と同格と評した片鱗が今のクラムからリリスは感じた。

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