仕事終わり
そもそも、同じ平民上がり孤児院育ちなのに、なんであんなに人間関係が違ったのか?分からない。
あの子は入学当初から目立っていたが、それはこっちも同じ。
同じく絡んできた貴族を徹底的に倒したのに、あっちは何故か友達になり、こっちは怯えられるだけでそんな事はなかった。おかしくないか?なんであっちは友達でこっちは恐れなのだ。
たしかにちょっとあの子よりボコボコにしたとは思う。あの子が血溜まりに沈めたのに対してこっちは血の海に沈めたけど、そんなのこっちの貴族が柔らかくて思ったより血が出ただけである。
あの子が先に終わらして笑顔で握手しているから。こっちも真似したら握手したら手を握りつぶしてしまったけど、そんなのちょっとしたお茶目な事だよね。
「いや、ほんとなんでこんな事になったのか?」
私は今、ここら一体を荒らしていた山賊団を潰した所である。
「ぅぅぅぅっっっ」
「ば、化け物がっ」
ひどい事を言う奴だ。
私なんてまだ化け物レベルではない。師匠ならこんなものではない。
「あ、ありがとう……ございます…」
山賊団に捕まっていた人達がお礼を言ってくる。
「感謝なんていらない。」
こっちも仕事でやっているだけだから。別に感謝なんていらない事を伝えおいた。
善意だけで助けたなんて思われたら、これからの仕事が面倒になる。
「あ……そう…ですか…」
「いえ、本当にありがとうございます。私たちが守れなかったお嬢様を守ってくれて本当にありがとうございます!」
捕まっていたのにやたら元気な多分此処に来るまでに見つけて山賊の追手から助けた貴族の騎士か何かだろう。
アジト近くの山道に壊れた貴族の馬車と騎士の遺体が転がっていたから。多分この人は女性だから生きて連れてかれた騎士の生き残りだろう。
「それこそ、御礼はいらない。今回の依頼料の大半は貴族様から支払われるのですから。」
「え?」
どうやら、その事に驚いた騎士やメイド達が言葉を失っている。
「どういう事ですか?!今回の依頼は冒険者ギルドからの依頼ではないのですか?!」
「確かに、冒険者ギルドは定期的に山賊狩りを依頼に出しますが、それは私のようなジュエル級が受ける依頼ではありません。」
「ジュ、ジュエル!」
私の冒険者ランクを聞いて予想外だったのだろう。皆が驚いている。
「それなら、どうしてこの依頼を受けたのですか?」
「だから、公爵様、今回の貴族様の依頼が指名依頼だからです。それも急ぎの依頼だったので、この山賊団から最も近くの街に住む高ランクが私しかいなかったので受けただけです。」
「そんな事!ありえません!私たちが襲われてまだ半日も経っていないんですよ!」
助けられてそれなりに時間が経ったので、この騎士以外も元気を取り戻してきたのか?今度はメイドがそんな事言ってきた。
「はぁ………」
「な、なんですか?」
私が呆れてため息をついていると、メイドが不思議がった。
「言って分かりませんか?この襲撃は最初から仕組まれた事だったのですよ。」
「仕組まれた事!一体誰が!そんな事をしたのですか!!今回の旅行は一部の者しか知らないはずです。」
今度は騎士が大声で質問してきた。仲間の中に裏切り者がいる可能性が高い為、忠誠心が高そうなこの騎士はより怒っているのだろう。
「知りませんよ、そんな事。依頼とは一切関係ありませんから。」
当たり前であるが、そんな事聞かれても一介の冒険者の私がそんな貴族事情を知る訳ない。
「す、すみません。そうですよね。」
「えぇ、なのでそんな事は帰ってから公爵様に直接聞いてください。」
ようやく、冷静になったのか?言葉が落ち着いてきた。