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私には関係ない

「うわァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」


 未だに号泣し続けるクラムにこの場にいる者全てが困惑していた。


「あぁ、クラム君の精霊さん。」


「どうした?」


「なんとかしてください。」


 オンリーにはどうしようもない為、信頼関係を築けている精霊に託した。


「いや…………」


 今まで見たことの無い自分のご主人様の姿に精霊自身もどうしたら良いのか分かっていなかった。


「その間、あっちの相手は私がします。」


「………………っ!見よ!これが我が人生の最高傑作だ!!」


 手持ち無沙汰になっていた研究者はやっと自分の番が来て生き生きとしていた。

 考えていたんだろうセリフが飛んでいる事ももうそんな事ではツッコむ気にもなれない周りのお陰で話は次の段階へ移行した。


「相手も残念な人ですね。」


 研究者に聞こえないくらいの小声でオンリーは呟いた。

 研究者はその間にも後ろの水槽付属の機械をカチャカチャしているが、オンリーは黙って見ていた。


「おい、攻撃しないのか?」


 明らかに無防備な研究者に攻撃しないオンリーを疑問に思った精霊はさっさと終わらして帰りたい気持ちでいっぱいだった為攻撃するように催促した。


「しません。私の目的はこのアジトの破壊ですが、クラム君の目的はあの人の奪還です。あの研究者を何もさせず瞬殺するのは赤子の手を捻るより簡単な事ですが、あの人を目覚めさせる方法を知りません。知ったとしてもあの研究者しか不可能場合、あの人は囚われの姫から眠り姫にジョブチェンジです。なので、なにもしません。この後の展開も大体予想がつきます。」


 オンリーは精霊に分かるように簡潔に説明した。

 研究者にもこちらの行動が分かるように大声で説明したのは、100%攻撃されない保証がない研究者が焦っていらん事をしないようにゆっくりとするようにという意図があってのことである。


「見よ!これが我の最高傑作だ!!」


 どっかで聞いたことのあるセリフを言った研究者が作業を終えたのか、こちらを振り向いて言った。


「あいつ、同じ事を言ったぞ。」


「此処は分かっていてもツッコまないのがセオリーですよ。」


 研究者に聞こえないように精霊とオンリーは話した。

 そして、水槽のガラスが割れて中に入っていた液体と共にガリーが落ちて来た。


「……………ふあああああああ」


 大きなあくびをしながらガリーは目覚めた。


「さてと、仕事をしますか。」


「傷つけるなよ。」


「そちらこそ、さっさとクラム君を起こしてください。」


「思いの外ダメージがデカいようだな。私の声を届かん。そのせいでこの通り、形態も人型に戻ってしまった。」


 クラムの衣装になっていた精霊はクラムの精神が乱れたために元の人型に戻っていた。


「まぁ、いいです。既に研究者は捕まえていますから。すぐに終わるのでクラム君の出番はありません。」


「っ!っ!」


 研究者は作業が終わった直後に聖縛で捕まえていたので、既に喋ることのできない芋虫状態で転がっている。


「ほう、凄い早業だな。」


 クラムの精霊がオンリーの技に感心していると………


「でも、我には届かぬ。」


 ガリーは見えない聖縛を避け続けていた。


「…………クラム君の精霊さん。」


「……なんだ?」


「ガリーはあんな感じの話し方なんですか?」


「いや、一人称から違う。」


「それなら、私の勘は間違ってないようですね。」


 オンリーはガリーを見た時からの違和感がクラム君の精霊の証言から正しかったことが証明されたと考えた。


「完全に精霊に乗っ取られています。」


「あぁ、だがなんでガリーが精霊持ちだと気づかなかった?」


 クラム君の精霊は前からクラムを通してガリーを見ていたが、ガリーに精霊はいなかった。

 だから、今の状況を疑問に思っている。


「此処からは私の推測ですが、ガリーは学園長の推薦で入学していませんか?」


「…………………たしか?そんな事をクラムに言っておった。」


 まだクラムから顕現できて間もない精霊はクラムの中にいた頃の朧げな記憶を辿って思い出していた。


「ならば、確定です。ガリーは元々、何処か。この組織か、もしくは別の組織によって産まれた実験体です。」


「何故?そう思うんだ?」


 クラム君の精霊にはオンリーがその結論に至った訳がわからなかった。


「学園長の推薦は学園長が何処からか拾ったか、見つけたかして連れて来た人達です。クラム君もそうでしょう。」


「確かにクラムも学園長が尋ねて来て入学する事になっていた。」


 その為、学園長の推薦児は問題児や規格外の者ばかりのため、入学してから卒業するまでずっと他の教職員達から要観察対象に認定されている。


「ガリーも学園長が気まぐれに潰した組織の作品でしょう。実験内容は後天的に精霊を抜いて新しく違う精霊を入れる、もしくは複数体入れるですか?」


「まぁ、大体が合っているから正解としようじゃないか。我ら、いや、我は元々この者の中に眠っておったが、何者かに抜かれてな。他の精霊達が封印されている宝玉に封じられた。それから他の者の中を転々としていたが、終ぞ我らを入れた身体は壊れた。」


「そうしているうちに君達は混ざり合ったってことですか?」


 オンリーはガリーの精霊が言う我らをガリーの中に感じなかった。


「そうだ!いつの間にか我らは我に変わっていった!」


「そうですか。では最後の質問です。これが終わったら、貴方を捕まえます。ガリーもクラム君も起きないようなのでさっさと仕事を終えて帰る事にします。」


「本当に人間は勝手な事を言うな。」


 ガリーの精霊がヒートアップしてきたので、早く終わらす事にした。


「何故?元の主人の中に帰れたのに暴れようとするのですか?」


「はっ!簡単な事だ。人間どもを根絶やしにするそれが我らの願いだからだ!」


「なるほど、怒るのも最もなので止めはしませんが、それは私も含みますか?」


 オンリーはガリーの精霊が言ったことを否定するつもりは一切ないが、自分もそこに含まれているのか?そこだけは気になった。


「当たり前だ!」


「そうですか、なら、その野望は此処で粉々にします。叶うことはありませんので、別の野望を今度は主人であるガリーとお人好しのクラム君にでも相談しながら決めてください。」


「おい!勝手に私のご主人様を巻き込むな!」


 黙って見物していたクラムの精霊も流石に自分のご主人様を巻き込むような物言いは見過ごせなかった。


「どうせ、クラム君ならいつものように自分から巻き込まれに行きますよ。」


 これまでの行動から十中八九クラムならガリーの精霊の事も助けようとするので、自分がなにを言おうと関係ないとオンリーは思っていた。


「さっきから聞いていたら!勝手な事を言ってんじゃない!もう勝った気になるな!我には貴様の捕縛はまだ届いていない事を忘れるな!」


「いえ、忘れていません。これは貴方達精霊とは相性が悪いようなの別で行きます。」


「っぅ!」


 オンリーはそう言うと一瞬にして死角からガリーに近づいてガリーを殴った。


「おい!傷つけるなよ!って言ったよな!」


 クラムの精霊がオンリーに文句を言ったが。


「大丈夫です。今の攻撃は聖撃(せいげき)。聖女護身術の中で最も愛に溢れた傷が残らない打撃です。傷はつけてません。」


「そうなのか?ならいいんだ。文句を言ってすま……」


 なにも分からずに文句を言った事を素直に夜謝ろうとしたクラムの精霊だったが……………


「ただ、通常の数〜数十倍の痛みが七日間全身を蝕むだけです。」


「もっと悪いわ!!!」


 クラムの精霊の怒声が外の仲間にも聞こえたと言う。

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