これが!絶望!
「クラム君、勝ったようですね。」
「オンリー、勝っちゃいない。結局流しちまった。」
最終的にはマルクを逃してしまっていた。
「あのご老人相手に逃走を選ばしただけでも、強くなりました。」
「相変わらず、上から目線だな。」
「まだ、私の方が上ですから。」
「あら、この姿のクラムより上だって言うの。」
何処からともなく女性の声が聞こえて来た。
「クラム君の精霊ですか。」
「あら、驚かないのね。」
女性の声はクラムが着ている衣装からしていた。
「クラム君が精霊持ちなのは知っています。それにその姿は霊装という形態である事も知っています。」
「なんで知っているんだよ。ニナニナ?」
クラムは情報収集奴隷のニナニナがまた集めた情報なのでは思った。
「そんな事をしなくても分かります。逆に分からないのですか?」
「どういう事だ?」
オンリーの言った事が本当に分からないクラムは困惑していた。
「クラム、アイツも精霊持ちという事よ。」
クラムが勘付いてなくても、精霊は勘付いていた様だ。
「え?」
「その通りです。精霊持ちの大体の人は相手が精霊持ちか分かる筈なのですが、クラム君はよっぽど勘が悪い様ですね。」
「な、なんだとー!」
クラムはオンリーに馬鹿にされたと思って憤慨していた。
「クラム、これに関しては貴方を擁護できないわ。」
「フラレースまで……」
自分の精霊にまでその通りだと言われたクラムはガチで凹んでいた。
「そんな事よりお前の相手はどうしたんだよ!」
露骨に話題を変えるクラムであった。
「あぁ、あの人達なら逃げるご老人に合わせて拘束解きましたので、逃げましたよ。」
「はぁ?!なんで!?」
クラムはオンリーがなんでそんな事をしたのか理解できなかった。
「あの人達はこの組織の正規メンバーではありません。雇われでしたので、雇われた人達全員帰るようにお願いしたら雇われの中でトップのご老人が了承したので逃しました。」
「いつそんな取引したんだよ。」
ご老人はずっとクラムと戦っていた為、オンリーとそんな事をする時間はなかった筈だとクラムは疑問に思った。
「あぁ、それなら、あのご老人はずっとこっちの戦いにも気を配っていたので、あの人らの首に刃物をチラつかせて読唇術が出来ると思ったので、口パクで伝えました。」
「お前、こっちが命懸けで戦っていたのにそんなことをしていたのか!」
加勢しろよと言いたげなクラムだったが、一対一を望んだのは自分なので言えない事に悶々とするクラムだった。
「それより、良いのですか?そろそろ行かなくて?」
「そうだった!助けないと!」
やっと仲間の救助を思い出したクラムは急いで駆け出した。
「さてと………私も行きますか……」
オンリーはすぐにクラムの後を追った。
「ようこそ!侵入者諸君!」
広場を進んだ先には如何にも機材がごちゃごちゃしている研究室っぽい部屋が広がっていた。
その中央に一番大きい円形の浴槽があった。
その中に人が浮かび、水槽前にこれも如何にもマッドサイエンティスト風な研究者が立っていた。
「テメェ!ガリーを返せ!」
クラムは仲間を連れ去った研究者に仲間の居場所を聞いた。
「なぁ、クラム君。」
「なんだ。オンリー、いまはコイツに聞いているんだ。少し黙ってろ!」
唐突に空気を読まず話しかけて来たオンリーをクラムは怒鳴った。
「いや、明らかに連れ去って来て実感してましたよって感じに水槽内にいる人は違うのですか?」
オンリーは入った瞬間最初に目についた水槽内に人物がどうせ攫われた人だろうと思っていたが、クラムがまるでそれを無視して研究者に尋ねるため、疑問に思ったオンリーが尋ねた。
「うん?あの人は違う。ガリーは病弱でガリガリに痩せているんだ。あんなナイスバディな健康体ではない。」
確かにクラムの証言とは真逆な健康体な人が浮いている為、オンリーは納得して下がった。
「悪い。話の邪魔をしてしまった。続けてください。」
「あぁ、おい!クソ野郎!ガリーは何処だ!」
より一層悪口になったクラムが再び研究者に尋ねた。
「……………………………いや、この水槽内にいる女が君の仲間なんだけど…………」
「…………………………………………………………………おい!人をゴミの様に扱う最低なクソ野郎!ガリーは何処だ!」
クラムは再び尋ねた。
「いや、君の仲間はこの水槽の中だって言っているだろう。」
「クラム君。あの研究者、嘘は言っていないよ。」
「クラムよ。あの水槽の中にいるのは間違えなくガリーです。魂を見た私が断言します。」
「……………………………………………………………………………………………………………おい!地上最悪最低なクソ野郎!ガリーは何処だ!」
現実を受け止めていないクラムが再び尋ねた。
「「「だから!水槽内って言っているだろう!!」」」
「嘘だ!!!」
オンリーはクラムがなんでこんな否定しているのか、分かっていなかった。
「ガリーは俺にやっと出来た男友達なんだ!断じてあんなナイスバディなお姉さんじゃない!」
だから、あんなに否定していたのかとオンリーは納得した。
「ガリーは姦しい空間にいる俺のオアシスなんだ。断じて女子じゃない!」
「現実を受け止めるんだクラム。ガリーは元から女だ。」
精霊はこの残酷な真実を知っていた様だ。
「なんで教えなかったんですか?」
「ガリーが居るとオンリーはいつもより生き生きとしていたからな。皆、この真実は黙っていたんじゃ。ガリーも気軽に接するクラムを望んでいたからのもある。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「絶望する場面はここじゃない!」
なんかとっておきのクラムを絶望させる事をさせようとしていたっぽい研究者は思いっきりツッコんだ。




