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「アリシア!来たわよ!」


「また来たのにゃ。アミアいい加減諦めたらどうにゃ。」


 最近、アンナに会う為にアミアがオンリーの屋敷によく訪れていた。

 その度に変わった妹の姿やアンナの拒絶している態度に打ちひしがれているアミアなのだが、ほぼ毎日懲りずに来ている姿にはニナニナも呆れを通り越して感心していた。


「あら、今日はニナニナだけなの。」


 明らかにアリシアがいない事に露骨に落ち込むアミアだった。


「そうにゃ。だから、さっさと帰るにゃ。」


「アリシアは何処いったの?」


 屋敷にいないならいる場所に行こうとニナニナに聞くアミアのアリシアに対しての執着が伺える。


「誰が仲間のストーカーに教える訳ないにゃ。」


「失礼な猫ね。私はあの子の姉なのよ。妹の場所くらい教えなさいよ。」


 姉だから妹の場所を教えて良いという理屈もあまりよくわからないと思うニナニナであったが、アミアの目には異常な感情が宿っていた。


「……ねぇ。」


「なんにゃ?やっと帰る気になったかにゃ。」


 しばらく、膠着状態が続いた後、アリシアの場所を教えないなら待っていると、勝手に上がって客間に居座っていた。

 仲間でもないアミアを一人にしておくのはいけないので、ニナニナは監視目的で一緒に客間に居た。


「ずっと気になっていたのだけど、あの子誰?昨日は居なかったわよね。」


 アミアはそう言うと、客間の端っこで座っている女の子を指した。


「あぁ、シィのことかにゃ。新しく来たご主人の奴隷にゃ。」


「あの子、竜種よね。よく買えたわね。」


 竜種の珍しさと価値を知っている為、学生でこの奴隷を買えることに純粋に驚いていた。


「あまりご主人を舐めるなにゃ。このくらいご主人にとって八百屋でリンゴを買うような物にゃ。」


 本当は友達が出来た時の為に金を貯めまくっている為、金は余りまくっているなんて言えないニナニナであった。


「そうなのね。……………………ねぇ。」


「今度は何にゃ?」


「ニナニナも私たちのとこに来ない?」


「はぁ?」


 のんびり屋でオンリーの奴隷の中では気性が穏やかなニナニナが久しぶりにアミアの発言でキレそうになった。


「いきなり何?」


「そんなに不機嫌にならなくてもいいじゃない。ただの提案よ。」


「アミアがアンナと一緒に住みたいから。いつもクラムの元に誘っているのは知っている。でも、何でわたしにもそれを言ってくる。納得できる理由がなかったら、ここから叩き出す。」


 殺気混じりに威圧して言うニナニナはアミアに最終通告を言った。


「深い理由はないわ。わたしがニナニナを気に入ったのよ。」


「はぁ?わたし、アミアに気に入られるような事した覚えが無いんだけど?」


「そんな事ないわよ。私が来た時わたしが寂しくないようにいつも構ってくれたじゃない。最初の頃から本当に嬉しかったのよ。」


 アミアはアリシアから強い拒絶を受けても此処に通えたのはニナニナの存在が大きかったのを自覚している。


「それは今、奴隷長が居ないから。一応客人のアミアの相手をしていただけ。別にアミアを心配しての行動ではない。」


「それでも嬉しかったのよ。断言するわ。あなたは良い人よ。」


 たしかに義務的にニナニナがアミアの相手している事にはアミアも最初から知っていたが、その時の態度には僅かに慈愛のような優しさが混じっている事に他人の感情を読むのが得意なアミアだから気づく事が出来ていた。


「わたしが何の罪で刑期奴隷になったかも知らないでよく言えるね。私はアミアと違ってお姫様じゃないから。ちゃんと刑期奴隷になるような事してこうなった事理解してる?理解してそんな事言っているならアミア…アンタ、イカれているよ。」


「あら、私の事知っていたのね。」


「当たり前。ご主人様に仇なす者、気になる者、危険な者の情報を収集するのが私の仕事だ。アミアの事も、アンタの主人であるクラムの事も調べ終わっている。アンタが亡国の姫である事もその後奴隷になる事も分かっている。」


 アミアもアンナやニナニナたちと同じで刑期奴隷である。

 アミアの国は戦争に負けてその国の王族の大半は処刑され、残りは奴隷となり遠い他国に売りに出された。


「ニナニナが昔に何したかなんて私はどうでも良いのよ。肝心なのは今がどうなのかよ。」


「その今もアンタが思う人間じゃない。私はご主人様の元でないともう生きていられない。ご主人様の為なら再びこの手を染める事も厭わないそんな人間よ。」


「だとしてもよ。私はあなたともっと仲良くなりたいのよ。」


 アミアの意志はニナニナが思うより硬い事が伺えた。


「……もう良いよ。どっちにしても私はここから離れるつもりはない。」


「でもいいの?オンリーがあなたたちを見る目は人を見る目じゃないわ。」


 たしかにオンリーが見る奴隷に対する目は人どころか生き物を見る目ではなかった。


「当たり前よ。私達はそれだけのことをしたのよ。」


 ニナニナはそれが当然だと言う風に平然と言った。

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